【掲示板の声×公認心理師】「学校に行きたくない」子どものSOS|体調不良・いじめ・「死にたい」に親はどう向き合う?
体調不良やいじめ、「消えたい」「死にたい」という言葉。さらに注意して見ておきたい3つのSOSサインと、休ませる・相談する目安を公認心理師に伺います。
学校
【掲示板の声×公認心理師】「学校に行きたくない」子どものSOS|体調不良・いじめ・「死にたい」に親はどう向き合う?
「学校に行きたくない」という子どもの言葉。その背景にはどんな気持ちやSOSが隠れているのでしょうか。
2025年に発表された文部科学省の調査によると、小・中学校で「不登校」とされる子どもは35万3,970人となり、12年連続で過去最多を更新しています。
児童生徒の自殺者数も、2025年に538人ととなり、過去最多を更新しました。
夏休み明けの9月1日前後は、日別で見ると1年のうちでも特に件数が多くなる傾向があり、「9月1日問題」として知られています。
もちろん、子どもの「学校に行きたくない」という一言だけで、深刻な状態だと判断することはできません。だからこそ、その言葉だけではなく、子どもの心や体、行動にどんな変化が起きているのかを見ていくことが大切です。
てつなぎでは、掲示板に寄せられた子育て中の親のリアルな声をもとに、 公認心理師・田村俊作先生と一緒に、親子の心や子育ての悩みを考える連載【掲示板の声×公認心理師】をお届けしています。
今回のテーマは、「学校を休ませたほうがいい?」と迷ったときに見ておきたい子どものサインです。
第1回では、前日のそわそわや「行きたくない」という言葉、特定の授業や行事への不安、先生への恐怖など、日常の中に現れる4つのサインについて伺いました。
第2回では、さらに注意して見ておきたい3つのサインに踏み込みます。
腹痛や頭痛、朝起きられないといった体調不良。友人関係やいじめを匂わせる変化。そして、「疲れた」「消えたい」「死にたい」という言葉。
こうしたSOSが見えたとき、どこまで様子を見るのか、いつ休ませるのか、学校や病院、専門家に相談する目安はどこにあるのか。田村先生と一緒に、一つずつ見ていきます。
サイン⑤ 体調不良を訴える日が増えた|起立性調節障害の可能性も
心の負担が体に現れている場合と、それ以外の体調不良を、どのように見ていけばいいのでしょうか?
症状が出る「タイミング」にも目を向ける
学校に行く前だったり、日曜日の夜だったり。つまり「明日、学校だ」というタイミングで症状が強くなるようであれば、心の負担が体に出ている、“身体化症状”の可能性も考えられるので、受診も含めて考えてもいいのかなと思います。食事の様子なんかも見てあげてほしいですね。
📘 編集部注:「身体化症状」について
身体化症状とは、不安やストレスなど心の負担が、腹痛や頭痛、吐き気といった体の症状として現れることです。
休むと元気になるのは、気持ちの表れ
それだけ気持ちが追い詰められている可能性がある、ということは考えてあげてほしいですね。「だらしない」と決めつけたり、「早く起きなさい」と言いたくなる気持ちも分かるんですけど、そこはいったん置いておいてほしいです。 体調不良が増えてくるということは、体が「やばい、やばい」とSOSを出しているような状態でもあるので、そこは寄り添ってあげたほうがいいと思います。
では、朝起きられず、ずっと寝ているような状態が続く場合はどうでしょうか?
朝、起きられないが続く場合
📘 編集部注:「起立性調節障害」について
起立性調節障害は、自律神経の働きがうまくいかず、立ち上がったときなどに循環の調節が難しくなる病気です。朝起きられない、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感などがみられることがあります。診断は医師が行うため、症状が続く場合は小児科や思春期外来などへの相談が一つの選択肢になります。
受診したほうがいい目安
そこまで日常生活に変化が出ているのであれば、受診したほうがいいと思います。
サイン⑥ 友人関係やいじめを匂わせる言動がある|いじめのサイン
イジメの疑いがあるから学校にどうにかして欲しいと言ったら、「証拠がないからどうにもできない」って言われた。親にだってほんのわずかなことしか話してくれないのに。私だって何とかして事実を確認しようとしたけど無理。口開かない。「学校には行きたくない」の一点張り。私はどうすればいいのよ?
(「学校は動かない、怒りと自分の無力さに泣ける」/匿名さん・30代
投稿を見る)
「行きたくない」とはっきり言えている場合
無理に話させるのではなく、「つらそうだよね」と共感する姿勢が大事です。「困ったら言ってね 」「話を聞いてくれる人はいるからね 」ということも伝えてあげてほしいですね。
たとえば、お母さんには言えなくても、お父さんには話せる。担任の先生には言えなくても、養護教諭には話せるかもしれない。そんなふうに、「話せる人や安心できる場所があるよ」と伝えてあげることも、大事かなと思います。
何も言わないけれど、気配だけ感じる場合
こうした場合、どんなところを見ておけばいいのでしょうか?
注意して見るとしたら、たとえば、持ち物が壊れている、急にお金を欲しがる、親のお金がなくなっているとかね。あと、LINEやSNSを急に見なくなったり、変な時間に電話が鳴ったり。そうした持ち物や周囲の変化ですね。
いじめを疑うような変化がある場合も、「何かあったらいつでも言ってね」という姿勢を見せることは大事かなと思います。
では実際に、「もしかして、いじめかもしれない」と感じたときは、どう動けばいいのでしょうか?
いじめの疑い、学校にどう相談するか
📘 編集部注:「いじめ」の定義について
いじめ防止対策推進法では、児童生徒に対して、一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的・物理的な影響を与える行為で、その行為を受けた本人が心身の苦痛を感じているものを「いじめ」と定義しています。
そのうえで、学校にも確認していくということですね。
担任の先生だけでなく、養護教諭の先生や学年主任、教頭先生、校長先生など、いろんな人の話を聞いたり相談したりすることも大事だと思います。
サイン⑦ 「疲れた」「消えたい」「死にたい」心が限界に近い言葉が出る
子どもから「疲れた」「消えたい」「死にたい」などという言葉が出たとき、親自身も動揺して、「どうしたらいいの?」と頭が真っ白になってしまうと思います。
こうした言葉が出たとき、まず親はどうすればいいのでしょうか?
「死にたい」を否定せず、まず気持ちを受け止める
ただ、「そんなこと言わないで」と否定せずに、「つらいことがあったんだね」って言ってあげることは大事です。「今は何もしなくていいよ」「無理しなくていいよ」「ゆっくり休みな」ということを伝えてあげることが大事かなと思います。
「消えたい」「死にたい」という言葉が出るのは、心理的な危機状態にある場合もあります。まず学校を休ませることも必要だと思いますし、否定せずに、ちゃんと聞いてあげること。 あとは、スクールカウンセラーなどの専門家に相談することも大事だと思います。
では、「死にたい」という気持ちの背景に学校があると分かった場合は、どうすればいいのでしょうか?
理由が学校なら、行かせないという選択も
「何かあった?」「どうした?」って、子どもに聞いてあげることが大事です。それがヒントになると思います。
では、夏休み明けにこうした深刻なサインが出やすくなる背景には、どんな心理があるのでしょうか?
夏休み明け、「選択肢が二つしかない」と感じてしまうことも
でも夏休み明けが近くなると、「またあのシチュエーションに戻るのか...」という不安が起きることがあると思います。そうすると「このまま耐えるのか」「消えちゃおうか」という二極化になりやすいんだろうなと思います。選択肢が二つしかなくなってしまうんですよね。
「本気かどうか」を見極めようとしない
年がら年中「死にたい」って言ってるのかもしれないし、ゲームでうまくいかなくて「死にたい」と言うのかもしれない。それは程度にもよると思います。
それでも、まずは「何かあったの?」って聞いてあげることが大事です。
学校が理由で「死にたい」と思っているんだったら、学校に行かせないことも方法の一つだと思います。
📘 編集部注:「消えたい」「死にたい」といった言葉が出たとき
「消えたい」「死にたい」といった言葉が出ている場合は、この記事だけで判断せず、スクールカウンセラーや医療機関、地域の相談窓口など、専門機関への相談を検討してください。
自傷行為など命に関わる危険が差し迫っている場合は、子どもを一人にせず、速やかに緊急の支援につなげてください。
まとめ|「学校を休ませる」は後退ではない
親として大きく迷うのは、「学校を休ませていいのか」「休ませたことで、このまま行けなくなってしまわないか」ということだと思います。
最後に、いままさに「休ませるべきか」と迷っている保護者に、田村先生から伝えたいことはありますか?
大人にも仕事を休む機会が法的に認められているわけですから。親御さんが、「学校を休ませてしまった」と罪悪感を持つ必要はないかなと思っています。
親が休ませるっていうことは、愛情でもあるし、防衛でもある。
「学校には毎日行くものだ」という社会的な同調圧力に屈せず、子どもを守ったという強い勇気を持って、誇りを持ってもらってもいいのかなと思います。
やっぱり、学校に行くのが当たり前っていう、ある種の既定路線みたいなものを意識するからだと思います。
今は生き方もさまざまなので、その子に合った生活があるだけで、たまたま学校に合わなかっただけということもある。やりたいことや好きなことが見つかれば、子どもたちは頑張れるようになるので、そういう、充電の時期だと思ってもらえばいいんじゃないかなと思います。
もちろん、学校に行かないことによるデメリットもあるとは思います。それでも、違う生き方もあります。不登校ということも、社会的に少しずつ認められるようになってきていると思うので、そんなに焦る必要はないかなと思います。
何より、命があることが大事ですよ。
今回紹介した7つのサインも、「これがあったら必ず休ませる」というチェックリストではありません。
「行きたくない」という言葉だけで判断するのではなく、食欲や睡眠、表情、行動、体調など、いつもの子どもとの違いに目を向けること。
そして、必要なときには学校や医療機関、専門家にも相談しながら、子どもの心と体、そして何より命を守ることを優先する。
「学校を休ませたほうがいいのかな」と迷ったとき、この記事が、子どもの様子を見つめる一つの手がかりになればと思います。
田村先生、本日はありがとうございました。
📘 編集部注:「教育機会確保法」について
第十三条に、不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえた支援を国・地方公共団体が行う旨が明記されています。学校に通わせる義務(就学義務)は法律上保護者が負うものですが、支援にあたっては子ども本人と保護者、双方の意思を尊重することが求められています。
📘 編集部注:「こども基本法」について
2023年施行。子どもの権利条約第12条を踏まえ、子ども自身の意見が年齢や発達に応じて尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることを基本理念としています。
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