「子どもの心の不調かも?」と思ったとき | 親が知っておきたいSOSサインと関わり方

「子どもの心の不調かも?」と思ったとき、親はどう向き合えばいいのでしょうか。てつなぎ掲示板に寄せられた声をもとに、公認心理師がSOSサインの見極め方や受診のタイミング、見守り方のヒントを解説します

健康/病気

公認心理師
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「子どもの心の不調かも?」と思ったとき | 親が知っておきたいSOSサインと関わり方

「朝、起こすべきか、起こさないべきか」
「病院に連れていくタイミングがわからない」
「心の病気なのか、ただしんどいだけなのか」

てつなぎ掲示板には、そんな声が寄せられています。

「うちの子は大丈夫?」という不安と、「過剰に心配しすぎかな」という自制のあいだで、揺れている親御さんが、たくさんいると思います。

小中学校の不登校の子どもは、2025年10月に文部科学省が発表した最新の調査で35万3,970人と、12年連続過去最多となっています【※1】。その背景には、抑うつや不安などの精神症状、発達障害、身体症状など、子どもの心身の状態が複雑に絡み合っているとも指摘されています。子どもたちの心の状態への不安は、家庭の中だけには収まらなくなっています。

子どもの精神的な不調や、チック・起立性調節障害・子どものうつ病・不安症といった症状をめぐる投稿も、ここ数年でずいぶん増えています。「精神疾患なのではないか」と感じながら、それでも正解がわからないまま過ごしている。そういう声が、掲示板の中にも増えてきています。

この連載【掲示板の声×公認心理師】では、てつなぎ掲示板の投稿をもとに、公認心理師の田村俊作さんにお話を聞いていきます。「正解」を出すためじゃなくて、気持ちを整理するためのヒントを、対話のなかで一緒に探していく連載コラムです。

今回は、「精神疾患なのかもしれない」と感じたときの症状の捉え方、専門家に繋ぐタイミングそして子どもの精神状態が心配なとき親がどう関わればいいのかについて、田村先生に聞いてみました。

病気なのか、成長なのか|「診断名が見えると、その子が見えなくなる」

てつなぎ編集部
てつなぎ掲示板に、こんな投稿がありました。

高校生の時、起立性調節障害でずっと眠くて。両親の離婚とか、いろいろあった家庭環境も含めて、今の美容師さんと似てるなと思って。なんか、共感してしまいました。
(美容師さんと共通点が多すぎて/匿名/40代)

そして、もうひとつ。

長男のおねしょがなかなか治らないので小児科へ行きました。小学校に上がるタイミングで。水分量の調整や夕食の時間など指導してもらったので、うまくいけばいいなと思っています。
(おねしょ/inakanoyome/30代)

「これは病気なのか、それとも一時的なものなのか」。答えが出ないから、不安になる。不安になるから、また問いに戻る。そういうループ、思い当たる方もいるんじゃないでしょうか。
チック起立性調節障害は、「成長過程でよくある」と言われる一方で、親にとっては「精神疾患なのでは」と心配になりやすい症状でもあります。
こうした状態を、一時的なものとして捉えるべきか、何かのサインとして受け取るべきか。この問いを田村先生に投げてみました。
田村先生
こういう相談は割とありますよね。「病気なんですかね?」ていう風に言われるけど、私たちがよく意識するのは、「診断名を見るとその人が見えなくなって、その人を見ると診断名がわからなくなる」っていうこと。そこはよく気をつけてる部分なんですよね。

「この子ってこうだよね」って決めつけて“ラベリング”しちゃうと、「じゃあ病気だよね」っていうことになっちゃうんだけど。私たち心理師は医者ではないので、すぐに「心の病気だ」って診断名を付けたり、決めつけることはできないっていうところはあります。

じゃあ「病気って何だろう?」っていう前提を考えてみると、精神障害の前提は、障害者基本法の第二条に「社会的障壁にぶつかるかどうか」っていうような書き方をしてるんですよね。【※1】

例えば“おねしょ”に関して言うと、これによって「子どもが生活できないかどうか」っていう評価がまず一つあるのかな思います。“起立性調節障害”の場合は、ずっと眠たいという状態が続くことで、「学校に行きづらくなる」などの弊害が出ることがありますよね。

基準はまず「社会的障壁にどうぶつかったか?」っていうところによって、診断だったり、精神疾患っていうものになる、というのが一つありますね。

それを前提に、この二つの話のポイントは、若さゆえの、精神や脳の「発達の段階、プロセスの途中」と捉える方が大事かなとは思います。

“困り感”っていうところで、診断をつけることは簡単だとは思うんですけど。まず「体が未熟だからこそうまくいかない部分も出てくるよね」っていう、成長・発達のプロセスの一部って考えることが、まず第一かなとは思いますね。

📘 編集部注:
「社会的障壁」とは、障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
参考: 障害者基本法 第2条「社会的障壁」の定義(内閣府)

てつなぎ編集部
「診断名を見るとその人が見えなくなる」。この言葉、聞いた瞬間に、ちょっと胸のあたりに引っかかりました。
名前をつけることで安心できる気持ちも、すごくわかるんですよね。「これだったんだ」ってわかると、次に何をすればいいか見えてくる気がして。
でも田村先生の言葉を聞いて、その「安心」が、かえってその子自身を見えにくくすることもあるんだな、と気づかされました。まず、この子が今どこにいるかを見る。そこから始めていいんですね。

次は、子どもがいつ「助けが必要な状態」にあるのかを、どう見極めるか。田村先生が現場で使っているひとつの見方を、聞かせてもらいました。

コップが溢れるとき|SOSサインとBPSモデルの視点

てつなぎ編集部
掲示板には、こんな投稿がありました。

子どもの心の状態が悪くなって、うつとかの精神疾患、精神症状が出たり、チックとか起立性調節障害とか、めまいとか、胃痛吐き気とか、自律神経の乱れの影響でいろんな症状が体に出ちゃってる子、自分の周りでも多くなった気がする。
(子どもの自殺やうつが増えてることについて/マナまま/40代)

掲示板を見ていると、こういう変化を「異変のサインかな」と感じながら、でも「どう受け止めたらいいかわからない」という投稿によく出会います。
田村先生は、こうした状態をどう見ているんでしょうか。
田村先生
子供たちのSOSのサインについては、「水がコップの上に山のようになっちゃって、溢れちゃった状態だよ」っていういう話は結構よくしますね。
“おねしょ”もSOSのサインとして一つあるかもしれないですね。思春期に出やすい“チック”なんかもそうですよね。
じゃあ、例えばそのサポートとして「コップを変えて大きくするか?」「休息するか?」とかね。あとは「ストレス量を減らすか?」っていうような考え方をして、どうアプローチするかっていうふうに考えたりはしますね。
てつなぎ編集部
「体の変化」もSOSとして読めることがある、ということですね。

急におねしょが始まったり、チックが出てきたとき、「どこか悪いのか」という医療的な問いにまず向かうのって、親として自然な反応だと思うんですけど。「コップが溢れているのかもしれない」という見方をひとつ持っておくだけで、子どもへの声のかけ方も変わってくる気がしますね。

では、そういうとき、田村先生は実際どんなふうに状態を見ていくんですか?
田村先生
「生物・心理・社会」の三つの側面から評価する「BPSモデル」っていうのがあって。それで評価をするっていうのを、結構自分は意識しているんですね。
例えば、社会的な側面だったら、家族構成の中で何かあった、とか。医学的(生物的)には、例えば女性だったら“生理が来た”とかの体調の変化。そして、心(心理的)の変化っていうところもあるし。例えば「学校のストレスなのか、家庭のストレスなのか」っていうね。
この三つの角度から評価していく「BPSモデル」というのが自分が教わってきた見方で、今も意識しているところですね。

📘 編集部注:
BPSモデルとは、生物・心理・社会という三つの側面から状態を評価する考え方です。「体のこと」「気持ちのこと」「周りの環境のこと」を合わせて見ることで、症状の全体像をとらえやすくなります。(※3・※4)

てつなぎ編集部
なるほど。一つの症状を、「体のこと(生物)」「気持ちのこと(心理)」「周りの環境のこと(社会)」、三つの角度から見てみる。「何か“きっかけ”があったのかな」と一歩引いて見るだけで、症状の意味が変わって見えてくることがあるんですね。

これは親が子どもの状態を見る時にも、すごく参考になりそうですね。

朝起きられない、めまいや頭痛が続く、学校に行きたくても行けない。そんな「起立性調節障害」は、自律神経の乱れが関係していることもあります。子どもの不調を「怠け」と決めつけず、体のサインとして理解するための一冊です。

▶ 『不調・不安・ストレスはこれでスッキリ!「すべては自律神経から始まる」』

「子どものうつ病かも?」様子見でいいか受診すべきか|専門家に繋ぐタイミング

てつなぎ編集部
親が子どもの異変に対して、「うつ病なのか、それとも一時的なものなのか」「このまま様子見でいいのか」「病院に連れていくべきなのか」という、様子見か受診かの判断が難しいという声も掲示板にあがっています。
心配しすぎも、放っておきすぎも、どちらも怖い。その板挟みを、田村先生はどう見られますか?
田村先生
例えば仮に“うつ傾向”だった時に病院に受診する場合ですが、「朝起きてからもう調子が悪い、気持ちが落ちてる」って場合は受診を勧めますね。

何か“現象”があって「落ち込む」とかだったら割とあるんだけど、そうじゃなくって。「なんとなく夜眠れない」「夜になると不安になる」っていう、“身体的”なポイントが強い場合は、一旦お医者さんに繋げることは、おすすめすることは多いかなとは思います。

内側から来ている症状(環境要因では説明がつかないもの)は、やっぱり医者に診てもらうよう勧めるかな。

うつでいうと「頭、脳が風邪引いてる」っていう風に言われるから、「じゃあその風邪をどう治していくか?」っていうところだし。何か嫌なことがあって落ち込むのとはまた違う状態なので。そこの線引きが大事。

“極端に眠れない”とか、“悪夢を見る”とかっていうと、もう、それは病院かなっていうのはあります。「睡眠を調整するための薬を飲むために病院行こうね」ってことは提案すると思います。
てつなぎ編集部
「嫌なことがあって落ち込む」のは、誰にでもある自然な反応ですもんね。でも「理由もなく眠れない」「夜になると不安になる」「悪夢が続く」といった状態は、体の中から来ているサインかもしれない、ってことですね。そういうときは、一人で抱えず、まずお医者さんに相談してみる、というのが一つの目安になりそうです。

次は少し視点を広げて。今の子どもたちの「不安」の背景には何があるのか、社会全体のことを田村先生と考えてみたいと思います。

SNSとヒエラルキー|「自分の見えている世界は一部だよ」という問いかけ

てつなぎ編集部
掲示板には、こんな投稿がありました。

子どもの自殺やうつが増えていることについて。自分の子供の頃はこんなことあまり知らなかったけれど、今こういう状況があって、どうしたものかと。大丈夫なのかと心配しています。
(子どもの自殺が増えてることについて/匿名/40代)

若い子の不安はどうやったら解消するんだろ?「推しがいれば結婚なんてしなくても良し」「自分の自由がなくなるくらいなら子どもはいらない」と断言できる人がたくさんいるし、これらは独身状態や少子化の一つの要因だと思うけど、他にも大きな要因があると最近は思ってる。それは、「若者たちの不安」。
(若い子の不安はどうやったら解消するんだろ?/高校19年生/東京都・30代)

「自分たちの時代と何かが変わっている」という感覚、多くの親御さんが持っているんじゃないかと思います。学校から帰っても、夜中も、スマホの中でつながり続けている。今の子どもたちの環境は、私たちの子ども時代とだいぶ違いますよね。
特に、SNSが日常の一部になった時代の子どもたちが抱えやすい、精神的な揺れや比較の苦しさについて、どう思われますか?
田村先生
情報過多の影響で、周りと自分を比較しやすいのかなとは思います。「周りと比べて自分はできてない...」とか、ネットやインスタを開けばキラキラした高校生とかね。そのギャップに苦しむ子もいるだろうし。

ネットを開けばコンテンツは山ほどあって。その中で自分に合うコンテンツを見つけるのは、なかなか難しいですよね。でも、やっぱり小さいうちってコミュニケーション上手じゃないので、切り分けるのは難しい。

なんとなく自分の中でランクづけして、自分で勝手にヒエラルキーつけてる子は多いかなと思います。
てつなぎ編集部
そうですよね。「気にしないで」って言いたくなるんですけど、気にしちゃう子に「気にしないで」は、気持ちを否定することになってしまいますし...。

掲示板の声の中にも、そういう難しさを感じているお母さんの声がありました。そういう子どもたちに、田村先生はどんなふうに関わっているんでしょうか。
田村先生
やっぱりネットの世界でも見てるところは、局所的なんですよね。広がってはいても局所だから、「実際本当にそうなの?」ってところ突き詰めますね。「自分の周りでも実はそうなの?」みたいな。

“自分の見ている世界”と“実際の世界”って随分違うところがあるから。「それネットの世界でしょ?周りはどうなの?」って言うと、“意外にそうじゃない”っていうことに気づくようなアプローチはしてます。

「見ているものも一部だよ」っていうところ。まさに“無知の知”じゃないですけど。知らないことを自覚しなくちゃいけない。そこで「じゃあどうするか?」っていうアプローチを自分はするかな。

“表現性のバイアス”って言いますけど、それと同じで、ネットで目に入る情報が「現実」に見えてしまうということはありますからね。

📘 編集部注:
表現性のバイアスとは、目立つ出来事が頻繁に起きているように感じてしまう認知の偏りのこと。飛行機事故のニュースが多いと飛行機が怖くなるが、実際は車の方が事故件数が多い、といった例など。

てつなぎ編集部
大人だって、ネットの情報が現実に見えてしまうことってありますもんね...。「見えているものは一部」という問いかけ。でも、それを「そうだよ」と押しつけるんじゃなくて、「周りは実際どうなの?」と一緒に確かめるように話す。その違い、大事だなと思いました。

次は、もう少し重い話になります。「死にたい」という言葉が出てきたとき、親はどう受け止めればいいのか。

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