【掲示板の声×公認心理師】離婚は子どもにどう影響する?(第1回)「子どものために離婚しない」を考える

離婚は子どもにどう影響する?公認心理師が語る「子どものために離婚しない」の落とし穴と、共同親権・面会交流の考え方。掲示板に寄せられた90件以上のリアルな声をもとに、離婚前のもやもやや子どもへの伝え方について解説します。

夫婦関係

公認心理師
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【掲示板の声×公認心理師】離婚は子どもにどう影響する?(第1回)「子どものために離婚しない」を考える

「もう無理かも」「子どものために我慢している」「親が離婚していたから、自分は……」

てつなぎ掲示板の「離婚」カテゴリには、こうした声が90件以上寄せられています。

「離婚したい」「でも子どものために...」のあいだで揺れながら、日々をやり過ごしている親たちの声が、毎日のように届いています。

2024年の離婚件数は185,904件(厚生労働省・人口動態統計確定数)。2002年をピークに減少傾向が続いてきましたが、2023年から2年連続で増加しています。離婚という選択は、現代の夫婦にとってけっして遠い話ではないのかもしれません。

この連載「【掲示板の声×公認心理師】」では、てつなぎ掲示板に寄せられたリアルな声を出発点に、公認心理師の田村俊作先生にお話を伺っています。

田村先生は、子ども家庭支援センターで離婚や家族問題の相談を数多く受けてきた経験を持ち、現在はスクールカウンセラーとして学校現場でも子どもや保護者と向き合っています。

今回は、「離婚の決意の手前のもやもや」「離婚と子どもへの影響」「共同親権と面会交流」、主にこの3つのテーマをもとにお話を聞きました。

離婚したい、でも踏み出せない|カウンセリング現場から見えること

てつなぎ編集部
掲示板には、「離婚したい」と明言しているわけではないけれど、その手前の疲れやもやもやが滲む投稿が多くあります。

「言ってくれればやるのに」旦那のその言葉を聞くたび、少しずつ気持ちが離れていく。
言うまで気づかないこと、言われてから動くこと——それ自体が私の負担だということは、たぶん伝わっていない、、、熟年離婚も流行るわけだ、、、
(今にみてろよ、、、旦那 / 匿名 さん / 30代)

てつなぎ編集部
察してほしいのに、気づいてもらえない。その積み重ねで、少しずつ気持ちが離れていく。
こうした「離婚の決意の手前のモヤモヤ」は、相談の場でもよく聞かれるものでしょうか。
田村先生
そうですね。以前、自治体の児童福祉部門に勤めていたときの話しですが、相談者は吐き出すことがメインのこともあるし、具体的な離婚の話の相談もあって、両方ありましたね。離婚するメリットデメリットも含めて話される人は多かったですね。
てつなぎ編集部
そういう話を聞くとき、現場ではどういうふうにカウンセリングされるんですか?
田村先生
モヤモヤしている人に対しては、相手の何が嫌なのか。その「行動」が嫌なのか、「存在」が嫌なのか、それとも「感情」なのか。それらを分けて話を聞くことはあります。あえてその場ですぐ結論を出さないようにして、「ちょっと考えてもらう」っていう話し方はしますね。
てつなぎ編集部
「離婚すべきか、続けるべきか」を決めるのは、最終的には本人にしかできない選択ですもんね。でも、まず「何が嫌なのか」を整理することから始めるって、ちゃんと向き合う意味でも大切な過程になりそうですね。

「子どものために離婚しない」が逆効果なとき|夫婦不和が子どもに与える影響

てつなぎ編集部
いつかは離婚したいとモヤモヤを抱えながら、でも「子どもがいるから今はまだ離婚できない」と思っている親は、少なくないと思います。掲示板には、「子どものために我慢する」という選択と、それでも揺れる気持ちが滲む投稿があります。

昨日、旦那の返答がイラつく投稿をしましたが、朝から旦那がいちいちつっかかってくるから、本当にイライラが止まらなくて、私だけ行くのやめました。子ども達と一緒に行きたかったけど、旦那と行きたくない気持ちの方が大きくて。子どももかわいそうだし、でももう我慢して一緒に行くのも疲れる。喧嘩になるだけだし。はー…もう、離婚したいなー…
(結局、行かなかった / ケンママ さん / 40代 )

てつなぎ編集部
「子どもがいなければ離婚してる」、というような声は掲示板に何度も出てきます。「子どものために踏みとどまる」という選択は、相談の場でもよく聞かれるものでしょうか。
田村先生
多いと思いますね。ただ、我慢して不仲な両親と暮らし続けると、子どもが自分の気持ちより親の感情を優先する癖がついてしまうこともあります。もちろん、経済的な不安や、子どもの寂しさへの心配はあるけど、子どもへの影響を注視しながら、離婚というものを“一つの選択肢”として考えてもらえればいいのかなと思います。

離婚を迷う家庭で、子どもが受け取っているもの

てつなぎ編集部
不仲な両親と暮らし続ける影響についてもう少し、聞かせてもらえますか?
田村先生
子どもからすると、やっぱり家庭の中が不安定っていうのがよくなくて。よく私も話するけど、マズローの「欲求段階説」でいうと、人の欲求には段階があって、土台が不安定だと上の段が積み上がらない、という考え方があるんですね。家庭の安全が不安だと、学校への意欲や食欲、友達関係など、生活全体が揺らいでしまうと思います。

📘 編集部注:マズローの欲求段階説
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論。人間の欲求を「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階で示し、下の段が満たされないと上の段の欲求が生まれにくいとされる。家庭の安全が揺らいでいると、学習意欲や社会的なつながりへの欲求が育ちにくくなる可能性がある。
参考: Wikipedia「マズローの欲求段階説」

てつなぎ編集部
離婚はしなくても、夫婦の不仲が続く家庭では、子どもがその不安定さを家の中でずっと受け取り続けてしまうという心理的負担の影響も確かにありそうですよね...。そう聞くと、「子どものために離婚しない」という選択が、必ずしも子どものためになっていない場合もある、ということが見えてくるのかもしれませんね。

離婚がプラスになる時、マイナスになる時

てつなぎ編集部
夫婦不和や夫婦喧嘩がずっと繰り返される状況であれば、「離婚」が子どもにとってもポジティブになりうるってことなんでしょうか?
田村先生
離婚することによって、夫婦喧嘩が減る、あるいは「減りそう」と思えるなら、多くの場合子どもの心理的負担が減ることが考えられるので、それはポジティブになると思います。
てつなぎ編集部
そうなんですね。逆に、離婚が子どもにとってマイナスに働くケースってどんな場合ですか?
田村先生
離婚後も両親の対立がずっと続いているとか、ですかね。あとは子どもが両親の間で“スパイ”や“伝書鳩”みたいな役割をやらされてしまうとかもありますね。「ああ言って」「こう言って」とか、「お父さんが浮気してないか探っといて」みたいなケースがあったりするから。対立してるからこそ起きやすいですよね、そういうのってね。
夫婦関係がなくなれば対立も減るし、子どもがそういう役割をやらなくても済むだろうから。
てつなぎ編集部
なるほど。離婚が子どもにとってマイナスになるかどうかは、離婚そのものより、その後の“両親の関わり方”にかかっているのかもしれませんね。

「自分のせいかも」と思う子どもに、親ができること|罪悪感・悪口・伝え方

てつなぎ編集部
子ども自身が親の離婚をどう受け取っているか、どんな影響があるのかは、親としてすごく気になるところですよね。てつなぎでは、こんな投稿もありました。

ご両親が離婚していたり、高校生のとき起立性障害でずっと眠かった。などなど…他にもご主人との関係がうちの父と同じだったり、本当に共通点が多すぎて、びっくり。家庭環境って本当に人格に影響するよねって話で盛り上がった。
(美容師さんと共通点が多すぎて / 匿名 さん / 40代)

てつなぎ編集部
親の不仲や離婚に対して、「自分のせいかも」と自分を責めてしまう子どもも少なくない気がします。

「自分のせいかも」と思ってしまう子ども

田村先生
その傾向はありますね。だから「親を怒らせないようにしなくっちゃ」って子どもが思いがちですよね。
大人もそうだけど、特に子どもはいろんなことにおいて未経験の部分が多いから、親の態度とか、たとえばちょっとしたため息なんかでも、「怒ってるんじゃないか」みたいな感じで、変に敏感になっちゃったりね。
そうやって、親の顔色をずっとうかがい続けることで、子どもが精神的にすり減っていく感じがあるのかなと思うんですよね。だからこそ“罪悪感”が生まれてきたりね。
本来は、喧嘩するのも“夫婦の問題”なんだけど、「自分のことで怒ってるんじゃないか」って子どもが思ってしまうというのは、よくあるのかなと思います。

子どもに罪悪感を持たせないために|親がガス抜きできる場所を持つこと

てつなぎ編集部
親の喧嘩を「自分のせいかも」と感じ続けた子は、親が離婚した時も「自分のせいだ」と思ってしまいそうですよね...。子どもにそんな罪悪感を背負わせないために、親が日頃から気をつけておいた方がいいことってありますか?
田村先生
やっぱり、親がちゃんと“ガス抜き”していくことだと思う。親の喧嘩は、子どもにとっては「自分が怒らしちゃったんじゃないか」って、思うきっかけになってしまうんですよね。本当はそうでなくても。
まあ...でも、子どもの前で「夫婦喧嘩を出さない」っていうのも、なかなか難しいことも多いから。だからこそね、家庭の外で話できる人がいたり、そうやってガス抜きしていくことが大事なのかなとは思います。やっぱり、子どもの前では、たとえばお母さんがお父さんの悪口を言ったりってのは控えるべきポイントだと思うし。
てつなぎ編集部
そうですよね。私自身も親の離婚を経験していて、子どもの頃に母親から父親の悪口を聞かされ続けた記憶があります。大人になってから「あの言葉は違ったんだな」と気づいたけれど、子どもの頃の印象はなかなか消えなくて...。 つい言ってしまいたくなる気持ちも、親になった今はわかるのですが、お母さんがお父さんの悪口を子どもに言ってしまうケースは、やっぱり多いんですか?
田村先生
そうですね。特にお母さんは抱え込みがちだから、つい言っちゃいますよね。やっぱり言いやすいのは子どもだしね。
てつなぎ編集部
そうですよね...。これはお母さんに限った話ではないとは思うのですが、やっぱり、子どもに相手の悪口を言わないことも、子どもを“夫婦関係の板挟み”から守ることにもつながるんじゃないかな、と自分の経験からも感じます。

離婚を子どもに伝えるとき|「あなたのせいじゃない」という言葉

てつなぎ編集部
親が離婚を子どもに伝えるとき、「これは伝えたほうがいい」ことはありますか?
田村先生
「夫婦の問題」と「親子の問題」っていうのは、ちゃんと切り離してあげることが大事かなと思います。「離婚した原因はあなたのせいじゃなくて、お父さんとお母さんの間の問題」ということを伝えてあげることが、子どもへの負担を減らしやすいのかなとは思いますけどね。
てつなぎ編集部
「あなたのせいじゃない」という言葉がちゃんと届いていれば、子どもが長年その記憶を抱えずに済むこともあるのかもしれませんね。

この記事を読んで、どう感じましたか?
「子どものために我慢する」という葛藤や、途絶えがちな養育費への焦り、そして離婚後にふと訪れる孤独感。てつなぎ掲示板には、こうした答えのない問いに向き合い、揺れ動く親たちのリアルな声が日々届いています。
あなたが今抱えているその言葉も、どこかで同じように悩む誰かの心を支える一助になるかもしれません。
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相談できる場所 ・子ども家庭支援センター(各自治体)
・自治体の母子父子相談窓口
・自治体の専門相談(家庭裁判所経験者による手続き・離婚後生活相談 など)
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・医療・専門的なアドバイスを提供するものではありません。具体的なご事情については、専門家にご相談ください。
PROFILE
公認心理師。教育現場でのカウンセリングを中心に、中学校や行政機関、地域の相談窓口などで子ども・保護者・大人の支援を行い、スクールソーシャルワーカー、精神保健相談員としても活動。教育・福祉・保健医療・メンタルヘルスの現場を横断的に経験し、現在は都内の学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)でスクールカウンセラーとして活動中。

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