【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもが甘えるようになったら?(第2回)|災害時の子どもの心のケアと相談の目安

地震のあと、子どもが急に甘えるようになったら?夜泣きやおねしょ、爪噛みなど、災害後に見られる子どもの心の変化とは。公認心理師が、SOSの見極め方や相談の目安、家庭でできる心のケアについて解説します。

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【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもが甘えるようになったら?(第2回)|災害時の子どもの心のケアと相談の目安

大きな地震のあと、子どもが急に甘えるようになった。できていたことが、できなくなった。でも、相談するほどではない気もする。

どこまでが自然な反応で、どこからが心配した方がいいことなのか。その線引きに、迷ってしまう方もいると思います。

2026年7月、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生しました。そして、南海トラフ地震は今後30年以内に高い確率で発生すると言われています。「次はうちの地域かもしれない」。そう感じている方も少なくないと思います。

てつなぎの掲示板には、「心配だけど、大げさにもしたくない」という声が届いています。

連載「【掲示板の声×公認心理師】」では、てつなぎの掲示板に届いた声を出発点に、公認心理師の田村俊作先生に伺っています。田村先生は、スクールカウンセラーとして日々子どもと保護者に向き合っています。

第1回では、地震で揺れた直後の声かけと、避難所で子どもの心に起きていることを扱いました。

第2回となるこのコラムで伺ったのは、子どもに現れる変化とその読み方、相談する・しないの線引き、そして日常が戻っていくまでのこと。

この記事は、2026年7月に発生した熊本地震のあと、まだ余震が続いていた時期に伺った話をもとにしています。

地震のあと、子どもが甘えるようになったら|退行は後戻りではなく、絆を確かめる作業

てつなぎ編集部
大地震のような災害のあと、子どもの心には、体の不調や態度の変化として、どんなことが現れるものなのでしょうか?
田村先生
腹痛や頭痛。あとは、眠れないなど。夜泣きや爪噛みも、ストレス反応の一つだと思います。

反応が強く出る子で言うと、すぐ怒るようになったり、泣き叫んで感情が爆発する場合もあります。逆に、何も話さなくなる、感情の平板化になる子もいます。感情がフラットになって、笑わなくなったり。

📝 編集部注|感情の平板化
喜んだり悲しんだりという感情の起伏が乏しくなり、表情が動かなくなる状態を指します。騒いだり泣いたりする反応と違って目立ちにくいため、見過ごされやすいとされています。

年齢が上がるほど、気づかれにくい|PTSD症状の校種別データ

てつなぎ編集部
第1回でも触れた文部科学省の調査では、PTSDが疑われる症状に該当した子どもの割合が、幼稚園が20.2%でいちばん高くて、小学校17.6%、中学校11.5%、高等学校8.8%と、年齢が上がるにつれて下がっていってるんですね。

年齢が上がるほど、PTSDが疑われる症状の数字が下がっていく理由は何だと思われますか?
田村先生
年齢が上がるほど自分の状況が理解できるので、「自分がしっかりしなきゃ」という“抑圧的な行動”が出やすいのだと思います。

小さい子は逆に、“わがまま”だったり“泣く”とか、行動面でSOSを出しやすい。中学生ぐらいになると、イライラや不安とかもあるでしょうけど、自分の気持ちをあえて“見て見ぬふり”することができますからね。
てつなぎ編集部
なるほど。受けた影響が小さいからではなく、年齢が上がるにつれ「表に出にくくなっているから」というふうに捉えられるんですね。

甘えが増えたとき、そのまま受け止めていいのか|「コップがいっぱいな状態」だから

てつなぎ編集部
災害のあと、子どもが急に甘え出すとき、親はそのまま受け止めたほうがいいのでしょうか?
田村先生
受け止めてもらう方がいいと思います。だって、普通の状況ではないですからね。コップがいっぱいな状態なので。 こんな時に「甘えさせたら自立できなくなる」なんて不安にならないで大丈夫。今まで通りの生活が送れるまでは、甘やかすのはしょうがないと思うし。

逆に、親との絆を確かめようとする作業だと思うので、そこは突き放したりしない方がいいです。

抱きしめてあげたり、「今はいいよ」と言ってあげることも大事です。

おとなしい子の、どこを見ればいいのか|食事と睡眠から見るサイン

てつなぎ編集部
一見おとなしくしている、元気がないだけに見える子どもの場合は、どこを見てあげるといいですか?
田村先生
食事と睡眠だと思います。あとは、ちょっとしたことで涙を流したり、ずっと親にくっついている状況とか、返事はするけれど反応が薄かったり、今まで楽しめたものを楽しめなくなったり、というところだと思います。
てつなぎ編集部
発達に特性のある子どもの場合、注意しておきたいことはありますか?
田村先生
さきほどの文部科学省の調査のデータにあったように、PTSDが疑われる症状の割合が、特別支援学校の子は、幼稚園の子と並んで高い数字なんですよね。

自閉スペクトラム症の子は、環境の変化で強いストレスを感じやすいですし、いつも以上の強いこだわりが現れる可能性もありますから。できることととしては、ちょっと可視化してあげることだったり。今こういう状況だよ、と書いてあげるとかね。

音が気になる子だったら、イヤマフやヘッドフォンで音を遮断するとか。あとは、小さい安全な個室スペースを作ることでしょうね。小さいテントのようなものを、段ボールで作ってあげるとか。

あとはやっぱり、専門家に頼ることかな。お薬もない可能性があるから、不安も強まるだろうしね。

落ち着いたように見えても|一年後、二年後に出てくる遅発反応

てつなぎ編集部
落ち着いたように見えても、後から何か影響が出てくることはあるのでしょうか?
田村先生
後から出てくることはありますね。“遅発反応”といって、遅れて出てくる症状は、数ヶ月から、長い場合は一年から二年かかって出てくるケースがあります。自宅に戻ってきて、緊張の糸が取れて、体調不良とか、不登校になったり、ということもあります。

あとは一年後になると、ニュースでやったりして、フラッシュバックすることもあります。落ち着いた環境になったからこそ、自分の本音とか恐怖を出せるということなのでしょうね、子どもの中では。

大人が「あっという間の1年」と感じる時間も、子どもにとっては濃密で長い時間です。だからこそ大人基準のスピード感で焦らず、長いスパンで子どもの感情や成長の変化を丁寧に見守っていく必要があります。

📝 編集部注|遅発反応
つらい出来事のあと、しばらく経ってから症状が現れることを指します。
出典: 文部科学省「子どもの心のケアのために 災害や事件・事故発生時を中心に」第5章

地震のあと、子どもの様子が心配なとき、どこに相談する?|9割が相談しなかったという数字

てつなぎ編集部
親が子供の変化に気づいたとき、どこに相談すればいいのか。次はそこを伺っていきたいと思います。 東日本大震災の1年後、被災地域の保護者に、子どもの心身への影響を誰かに相談したかを尋ねた調査があります。「特に相談していない」と答えた方が93.1%。その理由でいちばん多かったのは「特に子どもの様子に変わりがなかった」で、80.8%でした。 この9割という数字を、田村先生はどう見られますか?
田村先生
相談していない理由が「特に変わりがなかったから」ということですよね。つまり、一年ぐらいだと「そんなに症状として出なかった」ということなののではないでしょうか。さっきの、落ち着いたように見えるけれど「後から出てくることはあるのか?」というところに近い話です。
てつなぎ編集部
つまり、1年後の調査では「変わりなかった」と答えていても、その後に出てきた可能性もある、ということでしょうか?
田村先生
そうですね。二年後だったら、また変わるのかもしれないですし。

もっと大変な人がいるから、と思ってしまう|相談の目安はどこにあるか

てつなぎ編集部
周りも大変な状況だから、いまは相談している場合じゃない。そう思っているうちに1年が過ぎてしまった...という方も少なくないのではないかと思います。掲示板にはこんな投稿もありました。

元々不安症ではあったのですが、子どもが生まれてから酷くなっています。もし子ども達に何かあったらどうしよう…と考えて眠れなくなります。心療内科に行くほどではないかもしれないけど、なんだか毎日不安で落ち着かないです。
(「不安症がひどい」/支援級の子 さん・40代/ 投稿を見る

こういったケースについてはどう思われますか?
田村先生
「もっと大変な人がいる」と思ったりすると、相談につながりづらくなりますよね。この投稿の方もそうだと思います。「心療内科に行くほどでもないかもしれない」というところで止まってしまう。
てつなぎ編集部
そうですよね。でも、親が子供の異変に気づいた時点で、もっと気軽に相談できると本当はいいですよね...。
田村先生
そうですね。災害の中で、大人だって不安で眠れなくなったりするんだから、子どもも影響を受けることがある。それを大人がわかっていることが大事だと思います。何か様子が変だなと思ったら、その時点で相談していいと思います。

さっき“過剰適応”の話もしましたが、爪噛みやおねしょなど、今までないような行動があったら、相談した方がいいと思います。
てつなぎ編集部
逆に、様子が変わらないのであれば、心配しすぎなくていいということでしょうか?
田村先生
そうですね。食べられてる、眠れてる、遊べてる。そこが変わらないなら大丈夫だと思います。

避難生活のなかで相談できる場所|保健師、自治体、学校の先生

てつなぎ編集部
避難生活のなかで、相談できるのはどんなところになりますか?
田村先生
巡回で回っている保健師さんやDMAT(災害派遣医療チーム)だと思います。あとは子育て支援課もありますし、通信が使える状況であれば、SNSでの心の相談などもありますから。

近くにいる避難所を管理している方に相談してみてもいいですし。避難所に関与している人は大体自治体の人ですから。そういった人に相談して、専門の窓口につないでもらうのも大事だと思います。学校の先生でもいいと思います。

📝 編集部注|DMATとDPAT
DMAT(災害派遣医療チーム)は主に急性期の医療を担うチーム、DPAT(災害派遣精神医療チーム)は精神科医療と心のケアを担うチームです。名称が似ているため、混同されることがあります。
出典: DPAT事務局「DPATとは」

てつなぎ編集部
まず、そばにいる人に話して、そこから専門の窓口へつないでもらうってことですね。いきなり医療機関を探さなくてもいいのだと知っておくだけでも、少し気が楽になる方がいるかもしれません。

避難生活で大切にしたいこと|生活リズムは心を守る最優先事項

てつなぎ編集部
避難生活のなかで、相談できるのはどんなところになりますか?
田村先生
生活のリズムだと思います。 心を守るために最優先事項だと思うので。朝起きる時間や食事の時間、寝る時間を、今まで通りできるかどうかはわかりませんが、なんとかうまくコントロールして、自律神経の崩れを防いでもらうことが大事だと思います。

ただ、避難所で集団生活だとね、消灯時間や起床時間もライトがついたりして、なんとも言えず難しいところはありますけどね...。ちゃんと食べることも大事だと思います。
てつなぎ編集部
たしかに、避難所では、全部を今まで通りにするのは難しいですよね...。それでも、起きる時間やごはんの時間などは、なるべく今までの日常と近づけておく、という意識を持つだけでも違ってくるのかなと思いました。

子どもに、災害のことをどこまで伝えるか

てつなぎ編集部
必要以上に怖がらせたくないから、「子供に災害のことはあまり話さないでおこう」と考える方もいると思います。子どもに話すときは、どこまで伝えるのがいいのでしょうか?
田村先生
災害の事実や「それはこうなんだよ」と隠さずお話をすることは大事だと思います。その上でちゃんと「必ずお父さんとお母さんが絶対にあなたを守るからね」と伝えることが大事。年齢によりますけれどね。その子が理解できる言葉で話せばいいと思います。
てつなぎ編集部
事実は隠さず、そのうえで、必ず守るからねと伝えるってことですね。「もう大丈夫だよ」ではなく、「何があっても一緒にいるよ」。起きたことは変えられなくても、伝えられることはありますもんね。

防災の備えが進まないのはなぜか|正常性バイアスという心の働き

てつなぎ編集部
備えなきゃと思っているのに動けない。掲示板にはそういう声も届いています。たとえば、こんな投稿がありました。

最近、災害多いし、備えをしとかなきゃ!!と色々情報収集をしている私ですが、情報収集するだけでなかなか行動にうつせず、、、子供がいる家はこーいうのあると助かる!みたいな情報あればぜひ教えてください。
(「「災害備蓄」/三兄妹ママ さん・30代/ 投稿を見る

この投稿のように、災害が起こるたびに備えなきゃ!と思うのに、意外とまだ準備できてないって方も多いのではないかと思います。この背景には何かあるのでしょうか?
田村先生
人間は、そういったニュースを見ても「自分にはおきないよね」と思うところがあるんですよね。

これを“正常性バイアス”といいます。危険な状況に直面しても、自分は大丈夫だと思ってしまう。だから災害時は、正常性バイアスの影響を結構受けやすいんですよね。

何があるかわからないから、ちゃんと備えておいた方がいい、ということだと思います。常に自分が正常性バイアスにかかっているかも、と意識するのは大事です。

「こうなったらどうする?」というのを、冷静な時にやっておくことが大事。

📝 編集部注|正常性バイアス
危険な状況にあっても、自分は大丈夫だろうと考えてしまう心の働きを指します。

おわりに|そばにいる大人が落ち着いていられることが、一番のケア

てつなぎ編集部
最後になりますが、いま子どもと一緒に大変な時間を過ごしている方に向けて、伝えたいことはありますか?
田村先生
そばにいる大人が落ち着いていられることが、一番のケアだと思うんですよ。そのためにも、親御さんが弱音を吐いたり、甘えられる場所が必要です。

さっき言った爪噛みやおねしょ、わがままがあっても、親御さんのせいではなく災害のせいでもあるので。あまり自分を責めずに、専門家や地域の相談先に頼ってもらうことが大事だと思います。

見る、聞く、つなぐですね、これは。被災した子どもたちへの適切な接し方です。

見るというのは、その子の様子を見ること。眠れているか、食べられているか、いつもと違うところはないか。無理に聞き出さなくても、見ていればわかることはあります。

聞くというのは、話してくれたら、まず聞くこと。そこで大丈夫だよと言い切らなくてもいいし、その場で解決しなくてもいい。

つなぐというのは、一人で抱えないことです。避難所の人でも、学校の先生でも、保健師さんでもいい。気になったら、その先の人につないでもらう。これは専門家でなくてもできることですからね。

📝 編集部注|見る・聴く・つなぐ
サイコロジカル・ファーストエイド(PFA/心理的応急処置)と呼ばれる行動原則です。世界保健機関(WHO)などが作成し、子どもと保護者向けに内容を充実させた「子どものためのPFA」を、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが公開しています。
出典: セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どものための心理的応急処置」

てつなぎ編集部
前後編を通して田村先生から伺ったことを、最後に少し振り返ります。

甘えが増えたのは後戻りではなく、絆を確かめようとしている作業。

「相談しなかった」は、そのまま傷の深さを表しているわけではない。

何か様子が変だなと思ったら、その時点で相談していい。

生活のリズムを保つことは、心を守るための最優先事項。

そして、そばにいる大人が落ち着いていられることが、一番のケアだということ。

いま子どもと一緒に大変な時間を過ごしている方がいると思います。何か特別なことができているわけではない、と感じている方もいるかもしれません。

でも、子供のそばにいて、一緒に怖がって、明日また同じ時間に起きる。それだけで、もう十分なのかもしれません。 田村先生、本日はありがとうございました。

◀︎ 最初から読む|災害の直後、子どもに何と声をかける?
第1回では、地震直後の子どもへの声かけと、避難所での心のケアについて伺っています。
【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもに何と声をかける?(第1回)

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熊本地震を経験した防災収納インストラクター・松永りえさんが、命を守る「防災収納」と片づけについて解説します。
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相談できる場所 ・避難所の運営スタッフ、巡回中の保健師、自治体の子育て支援担当窓口
・学校のスクールカウンセラー、先生
熊本県「令和8年熊本地震に関する情報」
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どものための心理的応急処置」

てつなぎの掲示板も、気持ちを置いていく場所として使ってもらえたら嬉しいです。
免責事項 この記事は、公認心理師である田村先生への取材をもとに構成したものです。特定の個人や家庭の状況に対する診断や治療方針を示すものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関や専門の相談機関にご相談ください。

取材は2026年8月に行いました。災害に関する情報や相談窓口は、記事公開後に変わっている場合があります。
PROFILE
公認心理師。教育現場でのカウンセリングを中心に、中学校や行政機関、地域の相談窓口などで子ども・保護者・大人の支援を行い、スクールソーシャルワーカー、精神保健相談員としても活動。教育・福祉・保健医療・メンタルヘルスの現場を横断的に経験し、現在は都内の学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)でスクールカウンセラーとして活動中。
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