【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもに何と声をかける?(第1回)災害時の子どもの心のケアと避難所での過ごし方
地震のあと、子どもに何と声をかければいい?「もう大丈夫」と言っていい?公認心理師が、地震直後の子どもへの声かけや、避難所で見られる心の変化、親ができる心のケアについて解説します。
防災
【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもに何と声をかける?(第1回)災害時の子どもの心のケアと避難所での過ごし方
大きな地震の揺れがあったあと、子どもに何と声をかければいいのか。
抱きしめればいいのか、落ち着かせればいいのか。もう大丈夫だよ、と言ってあげたいけれど、余震はまだ続いている。
2026年7月、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生しました。そして、南海トラフ地震は今後30年以内に高い確率で発生すると言われています。「次はうちの地域かもしれない」。そう感じている方も少なくないと思います。
てつなぎの掲示板にも、地震にまつわる投稿がいくつも届いています。子どもと離れている時間に地震が来たらどうしよう。小さい子を抱えて、防災セットまで持ち出せるだろうか。アラートの音で飛び起きた、という声もあります。
子どもを怖がらせたくない。でも、備えのことは伝えておきたい。その板挟みのなかにいる方は、少なくないのではないかと思います。
東日本大震災の被災地域を対象にした文部科学省の調査では、発災から約1年後の時点で、PTSDが疑われる症状が1つでもみられた子どもが14.1% 。校種別に見ると特別支援学校が20.5%、幼稚園が20.2%と高く、年齢が低いほど割合が高いという結果が出ています。一方で、子どもの心身への影響を「特に相談していない」と答えた保護者は、93.1%にのぼりました。
連載「【掲示板の声×公認心理師】」では、てつなぎの掲示板に届いた声を出発点に、公認心理師の田村俊作先生に伺っています。今回のテーマは、「災害と子供の心」です。
第1回となるこの記事で扱うのは、地震直後に子どもへ何と声をかけるか、そして避難所で子どもの心に何が起きているか。甘えが増えたときの受け止め方や、相談先の話は第2回に続きます。
田村先生は、スクールカウンセラーとして日々子どもと保護者に向き合っている公認心理師です。災害心理社会的支援に関する研修も受けています。
この記事は、2026年7月に発生した熊本地震のあと、まだ余震が続いていた時期に伺った話をもとにしています。
地震の直後、子どもに何と声をかける?|「もう大丈夫だよ」と言いたくなるとき
今ちょうど旅行先にいたのですが、めちゃくちゃ強い揺れで、つかまらないと遠心力でバランス崩すくらいでした。防災リュックはあるけど、こういう旅先とかだったら悲劇だな…
(「地震が怖い」/匿名 さん・40代/
投稿を見る)
「最終的に親が守るよ」という姿勢や、そういう気持ちを伝えたりしてあげることの方が大事だと思います。「お母さん、お父さんついてるから大丈夫だよ」「不安にならないで大丈夫だよ」というふうに声をかけてあげることが一つですね。
「もう大丈夫だよ」は、いま言えない言葉|余震が続くなかでの声かけ
それよりも、「何があっても一緒にいるよ」ということを伝える方が優先だと思います。「また揺れたらこうしようね」とかね。
子どもの前で怖がってもいい|親の不安は隠さず共有していい
いつも言うことですが、親の素直な気持ちも全然出していいと思うんです。子どもと怖い気持ちを共有した方がいいと思います。地震は止められないですからね。
「つらかったら泣いてもいいんだよ」「何があってもお母さんが守るからね」とか、そういうことを伝えることが大事だと思います。
あとは子どもと遊ぶこと。深呼吸するとかね。ずっと交感神経が高い状態だから、少し副交感神経が高まるように、リラックスする時間を持つこと。ハグしてあげるのも大事だと思います。
避難所で子どもの心に起きていること|静かにしなきゃという気持ちと、張り詰めた空気
我が家は東北なので、久しぶりに地震速報がなったのですが…飛び起きました。旦那と2人でもし避難所に行くとしたら、の話に。まだ小さい子供たちを抱っこして連れ出すのに、そもそも防災セット持ち出せなくない!?って思って。
(「地震速報」/inakanoyome さん・30代/
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今まで関わったことのない、全然知らない大人が隣近所にいるわけですから。過緊張になると思います。常に落ち着かない状態ですよね。
避難所で子どもが泣き止まないとき|周りに申し訳なくなってしまう
あとは隣近所に、「すいません、少しぐずっちゃって」「子どもが小さくて」というふうに最初に声をかけておくだけでもいいですよね。その何気ない一言が、結構役に立ったりすることがあります。
人は、状況が何だかわからないと不安になったりしますが、「ああ、そういう事情で子どもが泣いているんだ」とわかれば、それだけでも安心したりしますから。
避難所で子どもが遊ぶことの意味|地震ごっこはやめさせなくていい
災害時には、子供たちが“災害ごっこ”(=ポストトラウマティックプレイ)をすることがあります。地震ごっこや、避難所ごっことか。大人側は不謹慎に感じるかもしれませんが、それは子ども自身がトラウマを消そうとしているプロセスなんですよね。
そこは、あえて咎めずに、見守ってあげることが大事だと思います。 子どもが自分の心を守る方法を学んでいるところなので。そういったところも含めて、楽しく遊べているな、と思ってもらえるといいなと思います。
📝 編集部注|ポストトラウマティックプレイ
地震ごっこや津波ごっこのように、体験したことを遊びのなかで再現することを指します。日本児童青年精神医学会の手引きでも、無理にやめさせる必要はないとされています。
出典:
日本児童青年精神医学会 災害対策委員会「被災した子どもを支援する方々へ」
避難所でずっと大人しくしている子ども|過剰適応と、感情に蓋をするということ
感情に蓋をしている子に、「大人しくしていて偉いね」と言うと、もっと蓋をしてしまうので。「怖いよね」「大丈夫だよ」「泣いても大丈夫だよ」というメッセージを伝えてあげることが大事です。
怖かったら「怖いよね」ということを伝えてあげたり、「なんか我慢していることはない?」「心配なことはない?」とか、声をかけてあげることも大事だと思います。
手のかからない子には、特にね。
避難所で周りの大人にできること|声をかけ合うことから
みんな地元から届いた果物やら鮭やら、いろんなものを時期によって、渡したりいただいたり、それがすごくいいなと感じます。自然災害、地震などがあった時も、普段からの繋がりが助け合いに繋がるのかなと思ったりします。
(「近所の繋がりは大事」/匿名 さん・40代/
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あとは子どもの騒ぎ声を少し寛容な目で見守ってもらうことは大事ですよね。親に対して「大変だよね」「大丈夫だよ」と声をかけあうこともね、大事。
徐々にDPAT(災害派遣精神医療チーム)が入ってきますし、カウンセラーも入ってきます。子どもたちの居場所とか、子どものスペースのようなものも、少しずつ出てくると思います。
📝 編集部注|DPAT
DPAT(災害派遣精神医療チーム)は、被災地に派遣され、心のケアにあたる専門チームです。
出典:
DPAT事務局「DPATとは」
災害後、心はどう変わっていくのか|茫然自失期からハネムーン期、幻滅期、再建期まで
たとえば、こんな投稿がありました。
携帯の地震アラームがなって心臓ドキドキ。地震おおくていつ揺れるか分からないからお留守番させないことにしよう。絶対みんな一緒にいよう。YouTubeでも、かなり地震のことで脅してくるから、毎日ビクビクしてる。
。
(「かなしい、てか、怖い」/三兄妹ママ さん・30代/
投稿を見る)
そして、そのあとに来るのが「英雄期」。みんな命を守るのに夢中で、助け合うんですよね。強い連帯感というか、一致団結して乗り切ろうとする時期です。
そこから外部の支援も入ってきて、そのエネルギーが「ハネムーン期」につながっていく感じです。一気に、気持ちが高ぶっていくんですよね。みんなで困難を乗り越えていこうという連帯感が強くなって、お互いの活動や多幸感、気持ちが高まる言葉を発するようなことが強くなる。「エイエイオー!」みたいなね。
その後に来るのが「幻滅期」。一ヶ月ぐらい経つと、また最初の地震が起きた直後のように、抑うつ感や自責感が出てきやすい時期です。原因は復興の難しさとか、なかなか家に戻れなかったり、見通しが立たなかったり。あとは「自分だけ生き残ってしまった」という罪悪感が生じる時期でもあります。
最後に、「再建期」というのがあります。心理状態は安定するところです。ただ、東日本大震災の時には、ちょうどこの時期に「仮設住宅を自分から出ていいのか...」みたいな葛藤も起きたりしていたようです。
孤立感が強まったりもします。復帰するとなると、今まで通りの生活をするといっても、ずっと仮設住宅だったりする中で、経済的な不安だったり「コミュニティに戻れるのか」「仕事や学校に戻れるのか」という不安。気持ちは正常化するけれど、一部はそういった不安になる人もいる。それが「再建期」と言われています。
図:災害後にみられるこころの変化のイメージ
出典: 長野県精神保健福祉センター「災害時のこころのケア2015 支援者マニュアル」(Zunin & Myersのモデルをもとに作成)
📝 編集部注|災害後の心の動き
長野県精神保健福祉センターの資料では、Zunin & Myers(2000)にもとづき、茫然自失期、英雄期、ハネムーン期、幻滅期、再建期という5つの段階で図示されています。回復のしかたには個人差が広がっていきます。時期の目安は、災害の規模によって変わります。
おわりに|怖い気持ちは、子どもと共有していい
ここまでで田村先生から伺ったことを、少し振り返ります。
「もう大丈夫だよ」は言えなくても、「何があっても一緒にいるよ」は言える。
親が気張らなくていい。怖い気持ちは、子どもと共有していい。
避難所では、子どもも張り詰めた空気を察している。だからこそ、遊ぶ時間が必要になる。
大人しくしている子ほど「無理してない?」と声をかける。
避難所や車のなかで、子どもと一緒に不安な夜を過ごした方もいると思います。何か特別なことができているわけではない、と感じている方もいるかもしれません。そのあたりも含めて、第2回で田村先生に伺っていきます。
第2回で扱うのは、地震のあとに子どもへ現れる変化と、その読み方です。甘えが増えたとき、できていたことができなくなったとき。そして、相談するほどでもないと思ってしまう気持ちも、あわせて伺っています。
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第2回では、災害後に見られる子どもの変化と、相談の目安について伺います。
【掲示板の声×公認心理師】災害のあと、子どもが甘えるようになったら?(第2回)
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