AI時代を生き抜く!「シン読解力」――子どもの集中力を奪う「認知負荷」の正体

東ロボくんの開発責任者で、読解力を調査・研究し、受検者数50万人のRSTを開発・普及させてきた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者による待望の続編!

教育

国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授。一般社団法人 教育のための科学研究所 代表理事・所長。
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認知科学では、ワーキングメモリにかかる負荷を「認知負荷」と呼びます。認知負荷がかかりすぎると、それがネックになって情報処理が追いつかなくなります。

認知負荷には「今、取り組もうとしている本丸の課題」そのものを解決する上でかかる「課題内在性認知負荷」と、それ以外でかかる「課題外在性認知負荷」があります。この課題外在性認知負荷に注目します。

たとえば、「先生の指示のとおりに課題に取り組む」というシーンを考えてみましょう。

先生が口頭でこんな指示をしたとします。

「××ページの『○○の値』を求めて、表に書き入れましょう」

よくできる子にとっては朝飯前の単純な課題です。

「『○○の値』を求めて、表に書き入れる」ことに直接関係する負荷が課題内在性認知負荷です。

では、この場合の課題外在性認知負荷にはどんなものがあるのでしょう。

先生の話に意識を集中する、先生の声(音)を文字変換する、教科書の××ページを開く、××ページに書かれていることに集中する、などです。

まず、「××ページ」という数字を聞き取るところで5%くらい脱落します。

実際に教科書の××ページを開くというところでさらに10%くらい脱落します。

「○○の値」というのは、そこまでの授業の文脈から理解できるはずですが、「何の値を求めればいいか」がわからず、さらに10%くらい脱落する大げさのように聞こえるかもしれませんが、実際の中学1年生の授業を観察しているとそのような印象を受けます。

ほかにも、「お腹減っちゃった」、「トイレに行きたいかも」、「教科書忘れちゃった」、「あ、消しゴム落としちゃった」、「鉛筆で指が痛い」、「鉛筆の芯が折れちゃった」、「先生にあてられたらどうしよう」……。

キリがありません。

すべてはワーキングメモリで処理されています。

忙しすぎます。

「やること多すぎ!」という脳の悲鳴が聞こえてきそうです。

ただ、脳が何をどう処理しているかは外側からは見えませんから、処理が追いつかない子は、単に「ぐずぐずしていてやる気がない」ように見えます。

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国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授。一般社団法人 教育のための科学研究所 代表理事・所長。

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