AI時代を生き抜く!「シン読解力」――子どもの集中力を奪う「認知負荷」の正体

東ロボくんの開発責任者で、読解力を調査・研究し、受検者数50万人のRSTを開発・普及させてきた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者による待望の続編!

教育

国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授。一般社団法人 教育のための科学研究所 代表理事・所長。
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AI研究の第一人者が解き明かす、学力とキャリアを変える新しい「読み方」。複雑な情報を正確に読み解くシン・読解力の具体的なメソッドを伝授します。
あなたの市場価値を高める思考術!新井紀子先生著書の『シン読解力 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』から一部転載・編集してお届けいたします。

脳のワーキングメモリには限界がある

認知科学という学問分野があります。

情報を処理するという観点から、脳、特に人の脳の知的な働きについて解明しようと試みる分野です。情報処理をするという点で、コンピューターと人間の脳には共通点があるので、しばしばコンピューターとの類似性と相違の両方の観点から分析されます。

コンピューターは日進月歩で進化していますが、その構造は発明当初からさほど変わらず、5つの装置(機能)から成り立っています。

「入力」、「出力」、「記憶」、「演算」、「制御」の各装置です。

キーボードやマウス、タッチパネルやマイクなどは入力装置です。一方、ディスプレイやプリンターやスピーカーなどは出力装置です。

演算装置は、まさに計算を担う機能で、プログラムに従って入力されたデータを処理します。

記憶装置は、データやファイルを長期的に保存しておく補助(外部)記憶装置と、入力された命令やデータなどを一時的に記憶したり、処理した結果を出力するために一時的に記憶したりする主(内部)記憶装置(メモリ)に分けられます。

各装置を制御するのが制御装置です。

これらをコンピューターの「脳」だと考えると、人間の脳と明らかに違うことがわかっている部分があります。それはメモリです。

最近のパソコンには、1GB(ギガバイト)程度のメモリが搭載されています。

16GBのメモリを搭載しているパソコンは、短期的に1千億桁を超える「0」と「1」から成る記号列を覚えておくことができます。

一方、人間が短期的に覚えておける無意味な記号列は7(+2)程度だと言われています。

ものすごい差です。そして、これが人間の脳の最大の弱点です。

人間は目や耳などの器官を通じて、外部からの情報を取り込みます。

それをいったん脳の「ワーキングメモリ」と呼ばれるところに保管して処理し、構造化された知識として長期記憶に保存する、と認知科学では考えます。

長期記憶に保存するには、その情報が単なる記号列から「意味」に置き換えられるかどうかが鍵になります。

円周率を何万桁も覚えられる人がいますが、無意味な文字列としてではなく、語呂合わせや物語に変換したりして覚えているのです。

つまり、人間の認知のボトルネックはワーキングメモリにあるのです。

しかも、その容量や保持時間はトレーニングで劇的に増やせない、と考えられています。

貴重なワーキングメモリを無駄な活動に消費しすぎないことが、人間が「本当に必要な情報を処理し、構造化し、長期記憶に保存し、必要なときにすぐに取り出して問題解決にあたる」上で、たいへん重要なのです。

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国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授。一般社団法人 教育のための科学研究所 代表理事・所長。

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