児童精神科医が本当に伝えたい――子どもの「不安症」の種類
20年以上の臨床経験を持つ現役の児童精神科医が、そうした「困った」「どうしたらいいかわからない」「不安だ」という気持ちに寄り添い、少しでも日常生活が楽になるよう、安心できるよう、ご家庭での支援の方法や園、学校で支援を受ける際のポイントなどを解説していきます。
発達/発育
子どもの「不安症」ってどんなものがあるの?
親が気を付けたいポイント
① 適度な不安はあってしかるべきもの
②過剰な不安は治療の対象になる
③不安症が続くとうつ病を引き起こすことがある
知っておきたいポイント
①代表的な不安症の種類を知っておく
②発達障害と不安症は合併する率が一般の人より高い
③少量の薬物療法や認知行動療法などが有効
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子どもは当然のことながら未熟であり、ひとりで生きていくことは大人以上にできません。
そのため、不安があるのは通常のことであり、逆に不安があるからこそ自分を守れるという優れた機能でもあるわけです。
しかし、過剰な不安はさまざまな困難を生んでしまうので、やはり治療対象になります。
子どもの不安症には以下のようなものがあります。
・分離不安症
愛着を持っている相手(よくあるのは母親)から離れられず、離そうとすると激しい抵抗を示す。
その相手が「死んでしまうのではないか」「事故にあうのではないか」と過剰に心配する。
3歳までであれば一般的な兆候なので問題はない。
・パニック症、広場恐怖
特定の場面で呼吸苦や動悸、発汗、冷感などの発作が突然生じる。
そして「また起こったらどうしよう」と、起こった場所やパターンなどを避けてしまう。
・強迫症(OCD)
「手がまだ汚いのではないか」「ドアに鍵をかけたか」などの考えが何度も浮かんできて、しつこく手を洗ったり、施錠を確認したりしてしまう。
また、特定の数字にこだわってしまい、生活が不便になったりする。
主に強い不安や恐怖などが頭から離れない強迫観念と、その不安や恐怖に対処しようと行動する強迫行為の症状が現れる。
自分でも「やりすぎだ」とわかっているがやめられず、心や体が疲れきって日常生活に支障が出てしまう。
小児の場合は親への巻き込み(親にも確認行為を強要したりする)が特徴的。
文字を何度も書いては消すことを繰り返すリライトという症状が生じることもある。
・社交不安症、選択性緘黙
社交不安症は、人から注目される場面で汗をかいたり赤面したりしてしまう、学校でみんなと食事ができない、人に見られている状況では文字が書けない、などの症状が起こる。
選択性緘黙は子どもに特徴的で、特定の場所でうまく話せない、その場で話せないだけで家では流ちょうに話せたり、友だちと一緒に遊ぶことはできたりするところがASDとの違い。
しかし、その区別は少し難しいところもある。
・これらの不安症の状態が続くようなら受診が必要
このような不安症の状態が続いてしまうと、ときにうつ病に移行したり、不安を解消しようとして本人の不利益になることが起こるため、受診が必要です。
発達障害との関連でいえば、やはり一般の人よりは合併する率が高いのが事実です。
対策としては、少量の薬物療法や認知行動療法などがあります。
子どもにも「うつ」などの「気分障害」ってあるんですか?
親が気を付けたいポイント
①子どもにも「うつ」などの気分障害はある
②ADHDやASDの子どもは気分障害になりやすい
③うつ状態、うつ病などの気分障害は自然に軽快しないこともある
知っておきたいポイント
①子どもの気分障害の症状は大人とは少し違った出方をする
②「うつ病」「重篤気分調節症」「持続性抑うつ障害」が代表的
③薬物療法は成人よりもかなり慎重に行う
もっとくわしく知りたい!
大人とは少し違った出方ですが、子どもにも気分障害は存在します。
・うつ病
小児のうつ病では、抑うつ的になる子もいますが、ときにイライラした気分や攻撃性が前面に出ていたり、かえって行動的になったりすることもあります。
何の困難がなくてもうつ病になる子もいます。その場合、親御さんも気分障害だったりします。
・重篤気分調節症
6~10歳によく起こる症状で、常にイライラし、ときに強いかんしゃくを起こします。
・持続性抑うつ障害
うつ病よりも重篤度の低い状態が、1年以上の長期にわたって起こるものです。
不登校の子どもの中には、昔から「うつ病の三大妄想」といわれていた妄想のひとつである罪業妄想のようなものを持っている、思春期のうつ状態の子どもも多いように感じます。
例えば「学校にも行けず、家族のためにもなっていない自分は、とても悪い人間なので、いる価値がない」などと話してくれることもあります。
ちなみに他の2つの妄想は貧困妄想(自分は貧乏なのでこの先やっていけない)、心気妄想(自分は何か大きな病気に違いない)です。
ADHDの子どもやASDの子どもは気分障害との関連が指摘されています。
体質的なところもありますし、実際に日常の中で疲れてしまう環境的なところもあるようです。
ADHDの子どもは行動の制御ができず、やりすぎて燃え尽きてしまうことがありますし、ASDの子どもは失敗を恐れて頑張りすぎたりすることがあります。
うつ状態、うつ病やその他の気分障害は、自然に軽快しないこともあるので、児童精神科医もしくは精神科医の診察を受けて、休養や環境調整、薬物療法の選択などの指示を受けてください。
ちなみに薬物療法は成人よりもかなり慎重に行います。
イライラがつのってしまうなどの副反応が心配だからです。
児童精神科医。某医療機関の院長。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医。一般社団法人日本児童青年精神医学会認定医。
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