公認心理師さんに聞いてみた! 「叱らない育児」ができなくて、怒ってしまう私はダメですか?(第2回)

―理想と現実のあいだで揺れる親へ【公認心理師インタビュー】

しつけ/育児

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公認心理師さんに聞いてみた! 「叱らない育児」ができなくて、怒ってしまう私はダメですか?(第2回)

「叱らない育児がいい」「怒らない親でいるべき」 そんな言葉を目にするたびに、どこか苦しくなってしまうことはありませんか。

本当は子どものことを大切に思っているのに、思い通りにいかない場面では感情が先に出てしまい、あとから「また怒ってしまった」と自分を責めてしまう。

てつなぎ掲示板にも、そうした声が数多く寄せられています。

理想とされる子育てのかたちと、現実の育児とのあいだで揺れ動きながら、「できない自分」を責め続けてしまうこと。その積み重ねが、親を静かに追い詰めているようにも感じます。

教育・福祉・メンタルヘルスの現場で約20年にわたり支援を続けてきた、公認心理師・田村俊作先生に、てつなぎ掲示板に寄せられた「叱らない育児」をめぐる声をもとに、お話を伺いました。

ワンオペ育児で怒ってしまう理由|母親の力不足ではない

てつなぎ編集部
親が一人で背負いすぎてしまう背景には、気持ちや考え方だけでなく、置かれている「環境」も大きく関わっている気がします。そして、その代表的なものが、“ワンオペ育児”だと思うんですね。

掲示板にも、兄弟喧嘩で怒鳴ってしまって、 「ワンオペは限界」「私の力不足なのかな」と、強く落ち込んでいるお母さんの投稿がありました。

「兄弟喧嘩がすごくて怒鳴ってしまった。ワンオペは限界。私がいけないのかな、力不足なのかなと思うと悲しくなる。」(子どもを怒った/あんず/40代

掲示板の声を読んでいると、「怒ってしまったこと」そのものよりも、「ワンオペで抱え込んでいる状況」そのものが、親を追い詰めているようにも感じました。

きょうだい喧嘩は「うまくいかなくて当然」 ─ ワンオペではなおさら

田村先生
きょうだいだったら、ぶつかるのは自然なことですしね。「ワンオペ」と表現するくらいだから、多分、旦那さんの協力がなくてお母さんが孤立してる状況なんですよね。そうなると、どうしても生活のペースや判断が「お母さん軸」になっちゃうからね。

うまくやってもらいたくて子ども同士の言い分を聞こうとしたり、お母さんとしては一生懸命やってると思うんですよね。 でも、泣いてる間にちょっと冷静になったりするし、こういう経験も大事だと思いますけどね。

上の子は自分なりの正義や理屈が強く出てくる時期ですし、下の子もまた、自分の思いを主張したくなる年頃だったりする。お互いに言い分があるから、ある程度、親がほっとくっていうのもありだと思います。落ち着いて理由を聞くとかね。
てつなぎ編集部
たしかに、きょうだい喧嘩の場面を見ていると、「どちらが悪いか」ではなく、それぞれが“自分なりの正しさ”を持ってぶつかっていることが多い気がします。

親としては場を収めようと必死になりますし、ワンオペの状況では、なおさら余裕を失いやすいですよね。
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「自分も厳しく育てられた」と感じるとき|親の育ちと子育て

てつなぎ編集部
ワンオペといった“環境のしんどさ”に加えて、もうひとつ、怒りが強く出てしまう背景として見逃せないのが、親自身がこれまでどんなふうに叱られてきたか、というのも関係している気がします。

掲示板でもよく見かけるのが、「自分も厳しく叱られて育ってきた」という親御さんの声なんですよね。

頭では「同じことはしたくない」「叱っちゃダメだ」と分かっているのに、ふとした瞬間に強く叱ってしまって、あとから「私、あの頃の親と同じことをしてるんじゃないか」と、強い自己嫌悪に陥ってしまう親御さんも、少なくないように思います。

こういう気持ちを抱えている親に対して、田村先生は、どんなふうに声をかけられますか?考え方の持ち方でもいいですし、関わり方のヒントでもいいです。
田村先生
実際、以前そんな面談をしたことがありますね。「自分も、同じようにされてきた」って話してくれたお母さんがいて。「お母さん、同じことやってるよ」「同じになっちゃうから、そこはやめな」って伝えたことはあります。ある程度、関係ができているからこそ、そう言えた部分もありますけどね。

それこそ世間で言われる“虐待の連鎖”って、必ずしも分かりやすい虐待だけじゃなくて、 「叱られ続けた経験」「感情を抑え込む関わり」っていうのも、すごく近いところにあると思うんですよね。

だから、「そうなりたくない」と思うなら、変えられるのは、やっぱり自分の関わり方しかない。
てつなぎ編集部
子育てのやり方って、やっぱり一番長く、直接影響を受けているのは「自分が親からどう関わられてきたか」が大きい気はしますよね。どういう愛情を受け取り、どうやって叱られてきたのか。それが、知らないうちにそのまま子育てに出てしまうのは、ある意味、自然なことなのかも...とも思います。

実際、掲示板を見ていると、 「親からガミガミ言われるのがストレスだった」という投稿のすぐあとに「子どもにガミガミ言ってしまって自己嫌悪です」という声が続くこともあったり...。
田村先生
負のループですよね。結構あったりしますね。
てつなぎ編集部
自分がつらかったはずの関わりを、同じように繰り返してしまって、あとから苦しくなる。「やりたくないのに、やってしまう」って、本当にしんどいですよね。

ただ田村先生が話してくれたように、気づいた今だからこそ、少しずつでも自分の関わり方を見直していく余地は、きっとあるのかもしれませんね。

怒ってしまったあと、どう関係を戻すか|親子の立て直し方

てつなぎ編集部
ここまで、怒ってしまう背景や理由について見てきましたが、てつなぎの掲示板では「怒ってしまったあと、どうしたらいい?」の相談も多く寄せられているんですよね。

たとえば、こんな声が投げかけられていました。

「子供に腹立って、怒ってそのあとの気持ちの切り替えってすぐできますか?私はできないときも半分。すぐパッと切り替えて笑う!が理想。でも現実あんまりできてない。」(怒ったあと/soylatte/30代

怒った“その瞬間”よりも、「怒ってしまった自分をどう受け止めればいいのか」で苦しんでいる親御さんがとても多いと感じます。

怒ってしまったあと、あとからできることって、あるのでしょうか?

「なかったこと」にしないために ─ その場で叱ること/落ち着いてから伝えること

田村先生
そうですね。まあ、あとで子どもと少し話をするんでしょうね、冷静にね。「こういう理由で怒ったんだよね」っていうことの理解を、小さい時から促すのは大事かなと思います。4〜5歳ぐらいになれば、ある程度なんとなくわかるだろうし。

ただ、“即時応答”はとても大事だと思うんです。例えば、子どもが道路を飛び出した時すぐその場で怒らずに、家に帰って「あの時、飛び出ちゃ駄目だからね!」とか言えないじゃないですか(笑)。子供も忘れちゃってるし。

だからその場でまず、危ないことや安全を確認したり、注意はして。それで、後で、落ち着いた時に、「あれは危ないから、注意したんだよ」という話をすればいいのかなと思いますけどね。「次、気をつけようね」っていう話を繰り返すことの方が大事なのかな。

子どもが感情的に泣いてるんだったら、子どもが“落ち着いて泣く”っていう状態を担保できるような場所、例えばその子の部屋とかで「落ち着くまでちょっとそっちに行ってなね」っていうことも大事だろうし。

それで、泣き止んで落ちついたって状態になったら、「さっきはこういうわけだから怒ったんだよ」「叱ったんだよ」とか。「だから、こうするといいなと思うんだよね」ってことを伝えてあげることが大事かなと思います。

親も間違える存在でいい|謝ることは関係を壊さない

田村先生
あと、親も、「行き過ぎたな」と思ったら謝罪することも大事ですね。「言い過ぎたね」って。

ノーバディズ パーフェクト(Nobody’s perfect.=“完璧な人はいない”)」っていう言葉があるんですよね。子育てのベースの話でよく出てきますけど、ちゃんと子育てしたから、叱らない子育てをしたからって、“いい子”が育つかどうかの保証もない。

中高生になって、朱に​​交われば赤くなるように、関わる人で今まで培ったものが崩れることもあるでしょうし。
てつなぎ編集部
そうですよね。周りを見ていても、実際そう感じることは多いです。子育ては「努力すれば必ずこうなる」と言い切れるものではない、その前提に立てたときに、少し肩の力が抜ける親御さんも多いんじゃないかなと、田村先生のお話を聞いて感じました。
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