児童精神科医が本当に伝えたい――不登校と高校進学
20年以上の臨床経験を持つ現役の児童精神科医が、そうした「困った」「どうしたらいいかわからない」「不安だ」という気持ちに寄り添い、少しでも日常生活が楽になるよう、安心できるよう、ご家庭での支援の方法や園、学校で支援を受ける際のポイントなどを解説していきます。
発達/発育
子どもが学校に行かなくなったときの対処法は?
親が気を付けたいポイント
①対処法は状況や理由で異なる
②精神疾患に陥っている可能性があれば受診する
③家族以外で一緒に子どもを支援する人や社会資源が必要
知っておきたいポイント
①身体疾患が隠れていないか調べてもらう
②毒になるくらいなら、学校へ行く必要はない
③「訪問看護」を受けられることもある
もっとくわしく知りたい!
不登校や登校しぶりの場合、対処法は状況や理由で異なります。
・頭痛や腹痛など体調不良を訴える場合
まずは、身体疾患の可能性を除外することが必要です。
お腹が痛いと訴えて不登校になった中学生を検査したら、慢性の大腸の病気だった、ふらつきを訴えている子を調べてみたら重度の鉄欠乏性貧血だった、などということがあります。
・朝、起きられない場合
まずは、睡眠の問題をチェックする必要があります。
さまざまな理由で寝つきの時間が遅ければ、朝、起きられないのは当然で不登校につながります。うつ状態などで睡眠の質が悪いこともあります。
十分に寝ていても朝、起きられないときは、別の要因を考える必要があります。
・本人の力では明らかに乗り越えられない問題が学校にある場合
「クラスメートからいじめられている」「担任から理解されず、強く長期間叱咤されている」などのケースです。
学校に相談して円満に解決すればよいのですが、そうもいかないことが多いようです。
私は「毒になるくらいなら、学校へ行く必要はない」と思っています。少なくとも「その学年は休ませる」気でいたほうがいいです。
最終的に子どもを守ってあげられるのは家族、保護者しかいないのですから。
・自分を傷つけている、暴れている、意味不明な発言をしたり行動をとったりしている場合
何らかの精神疾患に陥っている可能性があります。
すみやかに受診したほうがよいでしょう。
・体調不良やいじめなどの問題はなく「行こうと思っているけど、朝になると足が学校に向かない」という典型的な不登校の場合
まず、本人が動揺している時期がきます。
この時期は本人がかなり困惑しているため、いろいろと介入をしても反発されることが多い時期です。
次に、落ち着いて家にいられる時期がきます。
この時期は家でゲームをしたり動画を観たりと、好きなことならできるため、家族はやきもきしてしまいます。
そして多くは、数年後に数年後に回復期がきます。
例えば、中学生なら3年生になるころに新しいスタイルの高校を見つけ、そこに向かって少しずつ進めるようになります。
しかし、この回復期がくるまでには何年もかかることが多く、ご家族や保護者の方にとっては、長くてつらい時期になることも多いです。
そのため、家族以外で一緒に子どもを支援する人や社会支援が必要でしょう。
発達障害の子が訪問看護を受けられる場合も増えてきました。
子どもが発達障害と診断されており、なおかつ、かかりつけ医に訪問看護が必要と診断されれば、医療保険内で訪問看護を受けられます。
自治体の事業として、大学生が家にきてくれるメンタルフレンドなどの制度もあります。
また家庭教師や福祉分野でも、放課後等デイサービスの対応が可能なこともあります。
ただし、本人が強く拒否している場合は「まだ難しい」と思ったほうがよいでしょう。
小中学校で不登校だったけど高校に進学できる?
親が気を付けたいポイント
①本人が不登校を受け入れていれば○
②できるだけ規則正しい生活を送らせる
③本人が自分の意思で行きたい高校を決める
知っておきたいポイント
①高校進学がうまくいく子には特徴がある
②親子の孤立を防ぐ頼れる支援者とつながる
③家庭と連携してくれる高校を探す
もっとくわしく知りたい!
不登校児の高校復帰率は、いったいどれぐらいかご存じでしょうか?
少し古いですが、2014(平成26)年7月に公表された文部科学省の調査によると、小中学校で不登校だった子どものうち85.1%は復帰して高校へ進学できていたとのことです。
高校の中退率も低く14%です。
私は長年、不登校の子どもと関わってきましたが、その中で、うまくいった子どもの特徴を書いておきます(科学的根拠はありません)。
・不登校を本人が受け入れている
ときおり「自分は不登校ではない」と主張する不登校の子どもがいます。
適応指導教室の話をすると「そんなところに行ったら不登校じゃん」などと言います。
高校も公立の進学校を目指していたりします。
高すぎるプライドが邪魔をして不登校を受け入れられないのです。
現実検討能力といって、あるがままの自分を客観的に見る力も必要ですね。
・できるだけ規則正しい生活に整えておく
これは基本です。朝起きるのが遅い場合、まずは10時起床を目標にゆっくり修正していきます。
できれば、午前中にゴミ出しを手伝わせるなど日光を浴びさせます。
夜はブルーライト含め、光をゆるめる生活をするとよいでしょう。
・親子で孤立しないよう、頼れる人とつながる
児童精神科医でも、学校の担当の先生でも、塾の校長でも、スクールカウンセラーでもいいので、支援者とつながっていることが大切です。
XなどのSNSでも構いませんが、悪意のある人、悪徳業者には要注意です。
・本人が自分の意思で決める
義務教育の場合、子どもたちにとっては「行くのが当たり前」「行くのが普通」「行っても特段褒めてくれるものでもない」場所です。
しかし、高校は各自が自分で選んで通う場所ですよね。
その「自分で選んで通う」ことが大切なようなのです。
どれだけ環境がよい学校でも、親などから指示された学校に通うのではモチベーションが続かないケースが多いです。
・家庭と連携してくれる学校がベター
同じ高校でも、本人や保護者からの要望に対して、聞く姿勢がある学校とそうでない学校があるように感じます。
例えば、お子さんにパニック発作が出る場合、席を後ろ、かつ廊下側にしてほしいという要望に対して、配慮可能な学校とそうでない学校がありました。
学校の体制や柔軟性などを事前に調べておくといいですね。
児童精神科医。某医療機関の院長。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医。一般社団法人日本児童青年精神医学会認定医。
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