令和の子育ての新常識!家庭で伸ばす!偏差値を超える力
東大、京大、早稲田、慶應、旧帝大、GMARCH、関関同立…名門大学1万件の志望理由書からわかった、子どもを伸ばす10の力。「好き」を活かして名門大学に進んだ子どもは、12歳からどんな経験を積んできたのでしょうか。大学入試で使われた志望理由書を元に徹底解説!
教育
12歳は、小学生から中学生へと環境も価値観も大きく変わる時期。この時期に差がつくのは、勉強の得意・不得意ではなく、自分で考え、選び、続けられる力です。
「うちの子はこのままで大丈夫?」そんな不安に寄り添いながら、子どもの将来の選択肢を広げるための一冊です。孫辰洋著書『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』から一部転載・編集してお届けいたします。
新常識⑤ 勉強したくない子どものチャンスが広がる
ここまで、「うまくいかないケース」を紹介してきました。今度は逆に、うまくいったケースとしてこんな家庭をご紹介します。
「勉強したくない」と主張する子ども
中学受験を検討していたDさん。小学4年生のとき、突然「勉強したくない」と言い出した。
中学受験のために塾にも通わせていたが、お母さんはそこで無理に続けさせるのではなく、「勉強が嫌なら、やりたいことを見つけるほうがいい」と考え直した。そして、塾をやめて中学受験から撤退し、地元の公立中学に進学する道を選んだ。
ただし、学びへの投資をやめたわけではなかった。中学受験のために用意していた費用を使って、Dさんの興味を広げるための支援を始めた。鉄道に関心があると聞けば、鉄道図鑑や模型、体験イベントなどを積極的に取り入れた。また、短期の海外留学にも挑戦したいと言うので、視野を広げる経験として費用を捻出した。
すると、Dさんは次第に「ものづくり」への関心を深めていき、工学系の分野に興味を持つように。高校ではロボット制作の部活に所属し、全国規模のコンテストで入賞するまでに成長。最終的には、その実績が高く評価され、総合型選抜で第一志望の工学系大学に合格した。
親御さんは「あのとき、無理に中学受験を続けさせなくてよかった」と振り返っている。
中学受験にかかる費用は、塾代・模試代・講習費・入試対策費などを含めて、およそ300万〜400万円とも言われています。これは決して小さな金額ではありませんが、それだけの投資をする価値があることもたしかです。近年の中学受験塾は非常に質が高く、子どもの学力を大きく伸ばすサポートをしてくれる場所でもあります。
しかし、それが「どうしても合わない」という子どももいます。興味のない勉強を無理に続けた結果、燃え尽きてしまったり、先ほどお話ししたように進学先で「深海魚」になってしまったりするケースもあるのです。
Dさんのように、中学受験をしないという選択をしたからこそ、他の道が見えてくることもあります。教育における正解は一つではありません。中学受験という道を進まなかったとしても、教育的な投資を別の形で行い、「好きなこと」「夢中になれること」に出合えるようにサポートすることで、結果的に推薦入試の世界で高く評価される力を育てられることがあるのです。
偏差値では測れない、その子なりの魅力と可能性。それに気づき、信じ、伸ばしていけるかどうかが、これからの時代の子育てで問われているのではないでしょうか。
新常識⑥ 不登校の経験が強みになる
近年、文部科学省の調査によると、小中学校での不登校の児童・生徒数は約35万人と過去最多を更新しています。
不登校を経験すると、「このまま進学できないのではないか」と不安に思う親御さんも多いでしょう。
しかし実際には、不登校の経験そのものが、将来の志を見つけるきっかけになり、大学入試でも高く評価されることがあるのです。
不登校を乗り越えた子ども
Yさんは小学生と中学生のとき、不登校を経験した。当時のYさんにとって、学校は安心できる場所ではなく、ただいるだけで苦しい空間だった。学校に行けない自分に価値を見出せず、ずっと自分を責め続けていた。「なぜ自分は学校に行けないのか」「学校に行けない自分はダメな人間なのか」。そんな問いに苦しみ続けた。
しかし、この苦しい経験がYさんの人生を大きく変えることになる。通信制の高校に進学し、Yさんは心機一転、自分と同じように不登校で苦しむ子どもたちを支援する活動に参加することを決めた。不登校経験者の高校生が不登校・苦登校の小中学生に居場所を提供する団体に所属し、月に3〜4回の会議を通じて、ピザづくりや交流の場を企画してきた。
そこで出会った子どもたちも、かつての自分と同じように「学校に行けない自分は悪い」と思い込んでいた。その姿に触れて、Yさんは「どうして社会は、学校に行けないだけで子どもにそんな気持ちを持たせてしまうのか」と考えるようになり、教育を社会事象として捉え、不登校に対する公教育や社会全体のありかたを問う教育社会学に強く惹かれるようになった。
学校生活でも積極的に行動し、学級委員長や修学旅行委員長を務めてリーダーシップを発揮。不登校支援をテーマに2万字の論文も書き、探究学習の成果物として提出した。こうした挑戦が実を結び、総合型選抜入試で関西学院大学社会学部に合格することができた。
Yさんの事例が示すのは、不登校という経験が、将来の志を見つける大きなきっかけになり得るということです。
重要なのは、Yさんの家族が不登校を「失敗」として責めるのではなく、通信制高校という新たな選択肢を提示し、本人が自分のペースで学べる環境を整えたことです。全日制高校に無理に通わせるのではなく、「この子に合った学びかたは何か」を一緒に考え、通信制高校という道を選択した。この家族の姿勢が、Yさんに「自分のペースで挑戦していい」という安心感を与え、新たな一歩を踏み出す勇気につながったのです。
大学入試、特に総合型選抜では、単なる学力テストの点数だけではなく「自分の経験から社会的な問いを立て、その課題にどう向き合ってきたか」というプロセスが重視されます。Yさんは、不登校を後ろめたい過去として隠すのではなく、その体験を自らの研究テーマへと昇華させました。「学校に行けなかった」という個人的な出来事を、「なぜ学校に行けなくなるのか」「どのような教育のありかたが必要なのか」といった普遍的な問いに変換し、真剣に探究する姿勢を示すことで、大学側に「この学生は本気で教育を変えようとしている」という強いメッセージを伝えることができたのです。
不登校を経験した子どもにとって何よりも大切なのは、「安心できる居場所」です。Yさんの場合は通信制高校で、学力や出席日数といった評価のものさしをいったん脇に置き、生徒の存在そのものを受け止めてくれる先生と出会いました。その「受け入れられる感覚」が、再び意欲を取り戻す土壌となり、次第に挑戦を積み重ねることができるようになったのです。
このように、不登校という経験は単なる挫折ではなく、むしろ自分らしい学びかたを模索し、社会とつながる大切な転機となり得るのです。Yさんの歩みは、そのことを鮮やかに示しています。
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