【掲示板の声×公認心理師】「うちの子は大丈夫?」子どもの性被害と性教育、親が知っておきたいこと(第2回)

セクストーション、SNSトラブル、家庭でできる性教育――子どもを守るために親が知っておきたいことを公認心理師に聞きました。

教育

公認心理師
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【掲示板の声×公認心理師】「うちの子は大丈夫?」子どもの性被害と性教育、親が知っておきたいこと(第2回)

「性教育って、何をどこまで話せばいいの?」

「スマホやSNSのトラブルが怖いけれど、どう伝えればいいか分からない」

そんな悩みを抱える親は少なくありません。子どもの性被害は、家庭や学校だけでなく、オンライン上でも起きています。近年は、性的な画像を使って脅迫する「セクストーション」など、親世代にはなかったリスクも身近になりました。

てつなぎでは、掲示板に寄せられる声に寄り添いながら、専門家と一緒に考える連載「【掲示板の声×公認心理師】」を展開しています。今回は、教育・福祉・メンタルヘルスの現場で約20年間支援を続けてきた公認心理師・カウンセラーの田村俊作先生に、オンライン上で起きている性被害の実態や、子どもが被害を相談できない理由、そして家庭でできる性教育について、てつなぎ掲示板の投稿をもとにお話を伺いました。 

「嫌だと言っていい」

「困ったら親に相談していい」

今回は、ネット時代の子どもを取り巻くリスクと向き合いながら、親子の信頼関係を土台にした性教育の考え方について、一緒に考えていきます。

オンラインの世界で起きていること|セクストーションと、相談できない子どもたち

てつなぎ編集部
ここまでは、家庭の中、そして家庭の外で出会う「人」との関わりについて伺ってきました。

でも今、子どもが過ごす場所には、もうひとつ大きな空間があります。スマホやタブレットの先にある“オンライン”の世界です。顔の見えない相手との関わりの中で、親が見えにくい場所で、何が起きているのか...。

掲示板にはこんな投稿がありました。

私は知らなかった。そして知ったことによって急に怖くなった。セクストーション――性的画像を送らせて、拡散をネタに金銭を要求する手口。10代なんかは恥ずかしくて周囲に相談できずに、どんどん追い込まれていくんだって。ITリテラシーの高さが悪事に使われていく――こういうの本当に怖い。
(匿名 さん/30代/ 投稿を見る

※セクストーション:性的な画像や動画を使った脅迫のこと

スマホ時代のセクストーション|友達関係の延長で起きている?

てつなぎ編集部
カウンセリングの現場でも、オンライン関係の相談は増えていますか。
田村先生
増えていますね。やっぱり“ネットリテラシー”のところがポイントかな。例えば友達関係、同級生にこういうことをされたとかというところの延長線で、「裸の写真を送って」と要求されたとか、そういう相談もありますね。スマホを使うのが低年齢化しているというのもあるだろうし。
てつなぎ編集部
関係が壊れてから、それが脅しに使われるというケースもありそうですよね。
田村先生
そうそう、関係が悪くなったときに脅しに使う、ということもありますね。

子どもが相談できない3つの理由|羞恥・自責・親に叱られる不安

てつなぎ編集部
投稿にもありましたが、こうした被害に遭ったとき、子どもがなかなか親に相談できないと言われますよね。その背景には何があるのでしょうか。
田村先生
子ども自身も、よくないことだと分かっているんでしょうね。脅された場合だと、やっぱり二次被害が怖いというところも多いですよね。性的な部分で周りにさらされるんじゃないか、とか。

スマホやSNSの正しい使い方をしていなかったから、親に叱られるんじゃないかというのもあるかな。あと“自責”かな。送ってしまった自分が悪いんだというところもあったりするのかなと思いますけどね。
てつなぎ編集部
「自分が悪い」と思い込んで、誰にも言えなくなる。それで結果的に苦しさを一人で抱え込んでしまう子も多そうですね。
田村先生
そうですね。それで「学校に行けない」とかいう状況も出てきたりして。その背景を探ると、実はセクストーションがあった、というケースもありましたね。
てつなぎ編集部
子どもの様子や行動の変化の奥に、本人だけが抱え込んでいる被害が隠れていることもある、ということなんですね。子どもが守られるために大切なことは何でしょうか。
田村先生
違和感はやっぱり大事にした方がいいんじゃないかな。モヤっとしたら、「これっていいのかな」って親に相談できる関係性があるといいですよね。何でも相談できる、失敗しても味方でいてくれるという親子の安心感。そういうのが大事なんだと思います。
▼ あわせて読む

セクストーションの実態や、子どもがどのように巻き込まれるのかを、より具体的に知りたい方はこちら。
▶ 親子で学ぶ!子どもをSNSセクストーション被害から守るための知識と対策(第1回)
スマホを持たせる前に親子で話しておきたいこと。LINE時代のトラブルと、親としての関わり方の話。
▶ うちの子にスマホを持たせる前に – 小学生のLINEあるあるトラブルと親の関わり方(第1回)

家庭でできる性教育|「自分を大切にしていい」を日常で伝える

てつなぎ編集部
掲示板にはこんな声がありました。

小学生(低学年)の性教育について。早すぎるかも…いや、遅すぎると困るし…。周りの家庭ではどんな性教育をしているの? てか、そもそも何すればいいの?
(匿名 さん/30代/ 投稿を見る

「何すればいいの?」というこの問いそのものが、子どものことを真剣に考えている証だと思います。

実は編集部内でも、「自分の子に性教育、ちゃんと話せた自信がない」という声がありました。恥ずかしさが先に立ったり、タイミングを逃したり。誰もが手探りなのかもしれません。

性教育のポイント|性の知識ではなく、人権と距離感

てつなぎ編集部
家庭での性教育を考えるとき、大切にしてほしい視点は何ですか。
田村先生
やっぱり性教育のポイントは、お互いを大事にするということ、そして「自分は自分を大切にしていい」ということ、ここが土台になると思います。

性行為の知識だけではなく、“人権”や、その子自身の“尊厳”“距離感”の話なんですよね。

プライベートゾーン(水着で隠れる場所)の話も、やっぱり“境界”の話だし、これは守られていいという人権の話でもあります。例えばお尻を触られることは境界線を逸脱している行為だから、そこは守られるべきなんだよ、という伝え方を、性の知識だけじゃないところで考えていけばいいのかなと思いますね。

あとは純粋に、「嫌だと感じたら、嫌だと言っていい」というところ。どんな関係性であっても、親であっても、そこは触らないで、嫌だということを言う練習の場が「家庭」でもあるのかなと思います。

「なぜあなたが生まれてきたか」|性教育のスタート地点

てつなぎ編集部
具体的に、家庭ではどんな話から始めるといいんでしょうか。
田村先生
「なぜあなたが生まれてきたか」というところから始まるんじゃないですかね。そこが多分、性教育のスタートだと思います。

性行為の詳細まで話さなくてもいいかもしれないけれど、「お父さんとお母さんが大切にし合った気持ちから、あなたたちが生まれてきたんだよ」というところは、性教育の入り口なのかなとは思いますけどね。

もちろん全部を親が担わなくてもいい、いろんな形があると思います。ただ、「何かあったら親に相談してね」というところは、子どもとの関係性として大事にしたいですね。困った時は「親に頼ってもいいんだよ」ということを、子どもにきちんと伝えてあげることが、何より大事だと思います。

ネット時代だからこそ|情報を先に知ってしまう前に

てつなぎ編集部
今の時代、性教育は学校でも扱いますし、家庭で改まって話すのは難しいなと感じる親も多いと思います。それでも家庭で取り組む意味についてはどう捉えてますか?
田村先生
これが正解かどうかは分かりませんが、ネットにいろんな情報があるからこそ、誤った知識を先に得る前に、正しい性教育を学ぶってことが大事なのかなと思います。 知らない人と知り合って何か起きる前に、正しい知識を得ておきましょう、ということだと思います。 昔は「アイツとアイツが付き合ってる」みたいなね、彼氏彼女はみんな友達も先生も知ってるって感じで、周りが把握できていたんですよね。でも、今は“ネット上の彼氏”とか、顔も名前も知らない相手とか。大人の見えないところでやりとりしているからこそ、やっぱり、“自分で自分を守る”というところが、今の性教育には必要なのかなと思っています。
てつなぎ編集部
「自分を守る力」を子ども自身が持つ。大人がそばで見守りきれない時代だからこそ、必要なことなのかもしれませんね。

そのために家庭の中で実際に伝えるとなると、どんな場面から始めるのがいいのでしょうか。
田村先生
たとえば、夏休みのプールからっていうのもいいと思いますよ。「男の子と女の子で隠されている場所が違うよね」、みたいなところから始めれば自然に入っていけると思います。
てつなぎ編集部
そうですね、たしかに「性教育」と聞くと身構えてしまうけれど、夏休みのプールの機会での一言や、たとえばお風呂に入る前とか日常の中でのちょっとした会話でも、十分に始められそうですよね。

知識をしっかり伝えるというより、「自分の体は大切」「嫌だと言っていい」「困ったら親に相談していい」など、そんな感覚を、日常の中で少しずつ伝えていくこと。それが、家庭でできる性教育なんだと先生のお話を聞いて改めて感じました。
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性教育と並んで、ネット時代の子どもをどう守るか。SNSとの付き合い方を考えるヒントです。
▶ 小学生・中学生のSNS規制と安全な使い方(第1回)

親に伝えたいメッセージ|強固な城より“風通しの良さ”

てつなぎ編集部
ここまで、家庭内、統計、加害の構造、オンライン、性教育と、さまざまな話を伺ってきました。家庭内性虐待のデータを知って、不安になった方もいるかもしれません。信頼していた人の事件を知って、人を信じることが少し怖くなった方も...。

掲示板にも、こんな声がありました。

守りたい気持ちはすごくあるのに、守り方が分からない。なんだかそれが、ちょっと情けない気持ちにもなります。みなさんは、子どもにこういう話ってしてますか? もししていたら、どんな言葉で伝えていますか?
(匿名 さん/30代/ 投稿を見る

でも本当は、守り方が分からないと感じるのは、守りたい気持ちが強いからこそ。子どものことを真剣に考えているからこそ、なのかもしれません。

完璧でなくていい|やりすぎたと思ったら、ごめんねと言える親であること

てつなぎ編集部
迷いながら子どもに向き合っている親に、伝えたいことはありますか。
田村先生
いつも言っていることですが、完璧でなくていいと思います。迷うということは、その子のことをよくしてあげたいという気持ちがあるからこそ、なんだと思います。

ただ、境界線を踏み込みすぎると、尊重というのが崩れてきてしまうので、なんとなく違和感を感じた時に、ちゃんと立ち止まって修正できることが大事だと思います。「あ、ちょっと今のはやりすぎたな、ごめんね」って。

子どもに謝ることも大事です。「ごめん、さっきは言い過ぎた」「あれ、嫌だったね」と。親もミスをするんだということが子どもに伝わることも、大事だと思います。

強固な城より“風通しの良さ”|親も子も、対等な存在として

てつなぎ編集部
親子の関係で、特に大事にしてほしいことは何でしょうか。
田村先生
強固な城より、“風通しの良さ”。親も子も、その風通しの良さがあって、何でも話せる関係性、間違えてもやり直せるよ、という関係性が大事だと思います。

とはいえ、お互い心と体はここまで入ってこないでね、という境界線をちゃんと共有する。親も子どもも認識する。まずは親が認識するということになるのでしょうね。これ以上入ったら嫌だな、というのを。やはり“対等な立場”で関わる、ということが大事なのだと思います。
てつなぎ編集部
その“風通しの良い”関係のために、大切なことは何でしょうか。
田村先生
「個の尊重」だと思います。お互いを一人の個として尊重する。お互いを理解する。

一つは、「自分を大切にする」という自分自身の個の尊重。もう一つは、「相手のことも尊重」する。相手が嫌だと言ってきたことに対して、「あ、そうなんだね」と受け止める。

これは親も子も難しいけれど、お互いに理解していく。子どもが「これは嫌だ」と言ったら、強制的にやらせない。それを「拒絶」ではなく、その子自身の「意思」なんだなというところで捉えられるようにすることが大事だと思いますね。“適度な距離感”、ですよね。
てつなぎ編集部
「風通しの良さ」は、支援の現場でもよく使われる言葉なんですか?
田村先生
現場でもよく言いますね。引きこもりの支援などでも、「風通しをよくしましょう」と。第三者が入りやすいようなとか、話しやすいようなとか言っていますけど。
てつなぎ編集部
どんな関係性でも、「閉じ込めずに、外から風が入る」状態を作ることが大事、ということですよね。
田村先生
そうですね。あと、何があっても最後は親が守ってくれる、と子どもが思える関係性。それがやっぱり、一番大切なんだと思います。
てつなぎ編集部
「強固な城より、風通しの良さ」。

完璧でなくていい。やりすぎたと思ったら、ごめんねと言えばいい。

親が「気持ち悪い」と感じる直感を信じていいこと。「知っている人だから安心」ではないこと。「ちゃんとした人」に見えても起きること。オンラインで起きていること。性教育は人権と距離感の話だということ。

田村先生から伺ったたくさんの言葉が、子どもとの関わりに揺れている方や、子どもの安全について悩んでいる方にとって、少しだけ肩の力を抜くきっかけとして届いていたら嬉しいです。

本日は、ありがとうございました。
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PROFILE
公認心理師。教育現場でのカウンセリングを中心に、中学校や行政機関、地域の相談窓口などで子ども・保護者・大人の支援を行い、スクールソーシャルワーカー、精神保健相談員としても活動。教育・福祉・保健医療・メンタルヘルスの現場を横断的に経験し、現在は都内の学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)でスクールカウンセラーとして活動中。
【相談先】 ⚫︎ 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター 全国共通番号 #8891(はやくワンストップ)
⚫︎ 児童相談所虐待対応ダイヤル#189(いちはやく)
⚫︎ 警察相談専用電話#9110

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