子どもの算数力の育て方――算数嫌いの予防と解決のメカニズム
算数を「苦手」から「好き」に変え、算数の力を伸ばすことで、子どもの可能性は大きく広がります。 未来を切り拓く算数力を養う、新しい時代に必携の一冊です。
教育
算数は単なる計算ではありません。本書は、世界をリードする教育現場の知見から、論理的思考や問題解決能力としての「算数の力」を育むメソッドを公開します。変化の激しい時代を生き抜く力を、家庭でどう育むか。
星友啓著書の『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 子どもの算数力の育て方』から一部転載・編集してお届けいたします。
科学が示した!算数嫌いの予防と解決のメカニズム
ここまで、「子どもを算数嫌いにしないための基本ポイント」を解説してきましたが、次に、子どもが算数嫌いになってしまう理由を見ていきましょう。
これまでの研究の集積から次の3つの理由があるとされています。
① 基礎スキルのつまずき
まず、算数嫌いの土台にあるのは、基礎でのつまずきです。
たとえば、アメリカの中高生を対象にした大規模な研究では、前の学年までの数学の成績の低さが、その後の学年での数学への不安につながることが明らかにされました。
その一方で、不安から成績低下につながるケースは限定的だということです。
その他多くの研究でも、「先に『できない』があり、あとから不安が育つ」ことがデータで示されています。
② 遺伝
先ほど、周りの大人の算数嫌いが子どもにうつってしまうという報告を紹介しましたが、算数嫌いは遺伝するのでしょうか。
アメリカでの双子を対象にした研究では、算数嫌いの個人差の約40%が遺伝要因で説明され、残りは主に個人特有の環境によることが示されています。
つまり、算数嫌いは40%の確率で子どもに遺伝する、算数嫌いの親は残りの60%の環境要因をより強く意識する必要があるというわけです。
③ 周りからのメッセージ
算数嫌いの親が教えると、子どもに算数へのネガティブな姿勢が伝わってしまい、子どもも算数嫌いになりがちです。
また、教師自身が算数嫌いだと、そのことが授業の進め方や教室の雰囲気に反映されて、子どもの算数嫌いにつながります。
たとえば、丸暗記を過度に重視したり、「こうだからこう!」などと通り一辺倒の教え方をしてしまうと、算数に対する不安や苦手意識につながりやすくなります。
また、「算数に向いていない」「文系家系だから」などといった、固定マインドセットの声かけも要注意。
成長マインドセットの芽が摘まれてしまい、「頑張ってもできない→算数が嫌い」となってしまいかねません。
このように、算数嫌いは「①基礎スキルのつまずき」「②遺伝」「③周りからのメッセージ」という3つの層が重なって生まれます。
特に、はじめの小さなつまずきが不安の出発点になり、そこに遺伝的な算数嫌いの傾向や、親・教師からの言葉や授業の雰囲気が積み重なることで、「算数は怖い・自分には向かない・苦手」という解釈が強まっていくのです。
このように算数嫌いの原因を知ると、対処方法を整理して考えることができます。
まず、②の遺伝はどうにもならないので、対処の方法がありません。
40%の遺伝ではなく、60%の環境要因にフォーカスするしかありません。
そうであれば、①と③をどうにかしていかなくてはいけない。
算数嫌いの子には、「基礎でのつまずき」を丁寧に解消しながら、「周りからのメッセージ」によって根づいてしまった算数へのネガティブなイメージを改善していく必要があります。
もちろん、今算数が好きな子どもであっても、間違ったメッセージで算数嫌いを誘発しないように気をつけないといけません。
それでは、具体的にどのように①と③に対処していけばいいかを見ていくことにしましょう。
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