AI時代を生き抜く!「シン読解力」――学力低下は「書かない授業」が原因?
東ロボくんの開発責任者で、読解力を調査・研究し、受検者数50万人のRSTを開発・普及させてきた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者による待望の続編!
教育
AI研究の第一人者が解き明かす、学力とキャリアを変える新しい「読み方」。複雑な情報を正確に読み解くシン・読解力の具体的なメソッドを伝授します。
あなたの市場価値を高める思考術!新井紀子先生著書の『シン読解力 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』から一部転載・編集してお届けいたします。
「2Bの鉛筆」が教えてくれたこと
小学校の授業を観察していると、3、4年生頃から先生の話についていけない子が増えてきます。
高学年になると授業中に机につっぷしたまま、一切授業に参加しない子も出てきます。
ただ、その割合は、公立小学校でも、学校ごと、学年ごとにかなり差があります。
自然豊かな地方にある同じ自治体内の、家庭環境にもあまり差がないような2つの学校間でも、顕著な差があることがあります。
授業のやり方を観察しているうちに、その差の理由が徐々にわかってきました。
それは、授業中に「書く量」です。
高学年になっても2Bの鉛筆を使っている子は、いまやふつうです。
もちろん筆圧が弱い低学年は2Bでよいのですが、高学年が2Bを使っているのは不自然です。
2Bの鉛筆1本で、1時間の授業を済ませることができる、ということは、書く文字数が相当少ないのではないでしょうか。
2Bで500字書いたら、鉛筆の芯が丸くなって書けなくなります。
筆算をしたら、繰り上がりや繰り下がりの小さい数字が書けなくなります。
「プリントの穴埋めくらいしか字を書かない」、「桁数の多い筆算の練習をしない」から、2Bの鉛筆で済んでいるのです。
実際、授業を見学すると、2Bを使う子が多いクラスでは、プリント学習が主であることがわかりました。
そもそもノートには書かせません。
先生は、「では、今日のまとめをプリントの『まとめ欄』に書いておきましょう」と定型的な声かけはします。
ただ、その声に促されて鉛筆を持つ子は、学力上位層だけです。
中位層は「工場のことがわかってよかったです」のように、まとめではなく定型的な感想を書いています。
下位層はそもそもまとめを書きません。
そして、最後に、全員スティックのりを取り出して、プリントをノートに貼りつけて、あるいはクリアフォルダにしまって授業が終わります。
字は書かないのに、スティックのりの使い方は全員が熟達しているので驚きました。
書きたい子は書く、書きたくない子は書かない、書き方を知らない子はとりあえず先生が気に入りそうな感想を書く、を繰り返していては、学習言語の習得などほど遠く、格差が開く一方になるのは当然でしょう。
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