食べたもので脳はつくられる!子どもの未来を変える栄養のヒミツ

やる気も集中力も、食卓で育ちます。おさかなキライ!フライドポテトしか食べたくない!にんじんはマズイ!がんばりすぎなくても大丈夫。毎日のシンプルな〈ごはん〉が子どもの力になる!

食事

医師・医学博士/三重大学名誉教授/桑名市総合医療センター理事/学校法人湘央学園・湘央生命科学技術専門学校学校長。
子どもの才能を育てるおうちごはんの専門家、調理師、ケーキ店オーナー。
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「うちの子、どうしてやる気が続かない?」その原因は性格ではなく“栄養の偏り”かもしれません。食事で子どもの心と脳を育てるコツを具体的に伝授。すぐに試せるレシピも満載の一冊。
藤川里奈先生著書の『子どものやる気を育てる〈ごはん〉の法則』から一部転載・編集してお届けいたします。

食べたもので脳はつくられる!子どもの未来を変える栄養のヒミツ

脳をつくるって具体的に何が必要?カンタン栄養ガイド

「脳を育てるには、幼児教育や知育玩具が大切」

そんなふうに思っていませんか?

もちろん、教育や経験も大切です。

けれど、それ以前に――そもそも“脳そのもの”をつくっているのは、毎日の「食べ物」なのです。

脳の約60%は脂質でできており、残りの大部分をタンパク質や水分が占めています。

そして、神経の伝達に必要なミネラルやビタミンがなければ、情報をうまく処理したり、記憶したりすることもできません。

いい脳をつくるためには、きちんと栄養を摂ることが何よりの土台になります。

同じ時間、同じ勉強方法を行ったとしても、脳の質によって、学習効果には大きな差が出るのです。

子どもが集中できなかったり、イライラしやすかったりするのは、「やる気の問題」ではなく、脳の材料が足りていないサインかもしれないのです。

ここからは、脳の働きを支える4つの栄養素について、少し詳しく見ていきましょう。

脳の柔軟性と神経伝達を支える

DHA・EPA(脂質)

DHAやEPAは、魚に多く含まれる良質な脂質。

脳の細胞膜をやわらかく保ち、情報をスムーズにやりとりするために欠かせません。

特にDHAは「考える力」「記憶力」に関わる働きをし、乳幼児期の脳の成長には非常に重要な成分です。

体内ではほとんどつくることができないため、食事からの摂取が必要不可欠です。

神経伝達物質の材料となる

タンパク質

セロトニンやドーパミンといった「感情」や「やる気」に関わる神経伝達物質の原料となるのが、タンパク質。

脳だけでなく、体づくりにも不可欠な栄養素ですが、朝食やおやつでは不足しがちです。肉、魚、卵、大豆製品など、1日3回こまめに取り入れることが大切です。

集中力を支える

鉄分

鉄は、脳へ酸素を届ける「赤血球」の材料です。鉄不足になると、頭がぼんやりしたり、

イライラしやすくなったりします。

特に、女の子は2歳以降、男の子は運動量が増える頃から不足しがちです。

レバー、赤身肉、あさり、卵などを積極的に取り入れましょう。

吸収率を上げるには、ビタミンCと一緒に摂るのがポイントです。

脳のエネルギー代謝をサポートする

ビタミンB群

ビタミンB群は、糖や脂質をエネルギーに変える「代謝」を助け、神経の働きを安定させる栄養素です。

特にB1(玄米・豚肉)、B6(バナナ・まぐろ)、B22(魚介類・卵)は神経系と関係が深く、イライラや疲れやすさの改善にも役立ちます。

加工食品や白米中心の食生活では不足しやすいため、意識して取り入れることが必要です。

「脳にいい食べ物」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実は、スーパーで買えるいつもの食材の中に、脳に必要な栄養素がたくさん詰まっています。

難しい知識や特別な料理は必要ありません。

まずは「脳の材料になるものを意識する」ことから始めてみましょう。

鉄分で集中力がアップするってホント?

「ごはんはしっかり食べているはずなのに、なんだか集中できない」

そんな子どもの様子が続いていたら、鉄分不足が隠れているかもしれません。

鉄は、脳に酸素を運び、思考や記憶に必要なエネルギーを生み出すための必須ミネラル。

不足すると、知らないうちに「集中できない」「疲れやすい」状態になってしまうのです。「鉄分って、貧血に関係あるんでしょ?」

と思う方も多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。

鉄は“集中力”“やる気”“感情の安定”に深く関係している、大切な栄養素なのです。鉄が不足すると、脳に十分な酸素が届かず、神経伝達もうまくいかなくなります。

その結果、集中が続きにくく、感情が不安定になったりするのです。

最近は、子どもの「隠れ貧血」が増えているといわれています。

朝ごはんに菓子パンや白いごはんだけ、という食生活では鉄分が不足しやすくなります

牛乳の摂りすぎやお菓子を大量に食べる食習慣も、鉄分の吸収を妨げる要因になります。鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、吸収率の高いヘム鉄は主に動物性食品(レバー・赤身肉・魚など)に含まれます。

一方、植物性食品(小松菜・ひじき・大豆など)に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率がアップします。

たとえば、レバー炒めに赤ピーマンやブロッコリーを添えたり、ひじき煮を小松菜のお浸しと一緒に出すのもおすすめです。

昔は、鉄分=ひじきでしたが、調理の際に鉄鍋を使用しなくなったことにより、ひじきの鉄分含有量は、1950年から2020年の70年間で、100gあたり55mgから6.2mgまで、減ってしまっています。

ですから、鉄分をしっかり摂るには、「鉄鍋」や「鉄玉子」など、調理器具を工夫するのもひとつの方法です。

集中力・落ち着きのなさが、神経伝達に必要な鉄分不足だったとしたら、ちょっとした食生活の見直しが、子どもの毎日をぐんとラクにしてくれるかもしれません。

「鉄分=貧血予防」ではなく、「鉄分=集中力の土台」として、ぜひ意識してみてください。

おなかの調子と気分はつながっている!「腸内環境」の話

「子どもがイライラするのは、性格のせい?」

と考えがちですが、その原因は、意外にもおなかにあるかもしれません。

腸内環境の乱れが、気分や感情の安定に影響することがわかってきているので、

「最近なんだか機嫌が悪い」

「よく泣いたり怒ったりする」

といった様子が続くときは、ぜひおなか(腸)の調子にも注目してみてください。

腸は“第2の脳”と呼ばれるほど、脳と密接な関係があります。

この関係は『腸脳相関』と呼ばれ、医学的にも注目されている分野です。

腸と脳は、迷走神経という神経を通じて双方向につながっていて、腸の状態がそのまま脳に伝わる仕組みになっています。

腸内環境が良いと脳もリラックスしやすく、感情の安定にもつながるというわけです。そしてもうひとつ大切なのが、セロトニンというホルモン。

セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、感情の安定や睡眠の質にも関係しています。驚くべきことに、このセロトニンの約90%以上は、腸でつくられており、腸の健康は心の安定とも関わっていると考えられています。

つまり、腸の状態が悪いと、セロトニンの分泌も低下し、気分の不安定さや不眠、イライラにつながることがあります。

便秘がちな子、軟便が多い子、食べムラやおなかの張りが気になる子は、腸内環境の見直しが必要かもしれません。

腸内環境を整えるには、善玉菌を増やすことはもちろん、腸内細菌のバランスを保つことが大切です。

納豆などの発酵食品、食物繊維、オリゴ糖などを意識して食事に取り入れてみましょう。また、加工食品や食品添加物、白砂糖の摂りすぎは腸内環境を悪化させる原因になるため、できるだけ控えることが大切です。

子どもの情緒の安定を支えるために、腸という視点からもサポートできることがあると考えると、日々のごはんの選び方が、もっと意味のあるものに感じられるかもしれません。

著者

子どもの才能を育てるおうちごはんの専門家、調理師、ケーキ店オーナー。

藤川 里奈

1980年生、神奈川出身。服部栄養専門学校卒業。「3歳までの幼児食も学べる幼児教室NaturalSmile湘南」を開講。娘の誕生を機に、モンテッソーリ教育に基づく幼児教育を学ぶ。娘を入れたい保育園がなかったため2017年、株式会社キッズアプローチを設立し、食べることから発達を促す育脳を取り入れた保育園を創立。さらに、保育園での経験から、食を通じた発達障がいの改善に着目し、日本で唯一の分子栄養学を取り入れた「発達障がいを食で改善するプログラム」を用いた施設を立ち上げ、トータルで3つの保育園、7つの発達障がい児支援施設をプロデュースしている。また発達障がい児施設の開設、運営のコンサル業も行う。

監修

医師・医学博士/三重大学名誉教授/桑名市総合医療センター理事/学校法人湘央学園・湘央生命科学技術専門学校学校長。

今井 寛

1960年、埼玉県蕨市生まれ。1984年、北里大学医学部卒業後、胸部外科分野で研鑽。1991年、米国留学、植え込み型人工肺を2年間研究。1993年、帰国。北里大学病院救命救急センターに所属以来救急医療に30年間最前線で働き、10000人以上の死に関わる。1995年1月、阪神淡路大震災への医療支援に従事。多くのドラマ、映画の医療監修を手掛け、一部出演。救急現場ばかりでなく様々な角度からの社会貢献を目指す。また三重大学でのgifted児童研究などで、年間50以上の講義、講演をこなす。
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医師・医学博士/三重大学名誉教授/桑名市総合医療センター理事/学校法人湘央学園・湘央生命科学技術専門学校学校長。
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