療育は早ければ早いほどよい?
特性のあるわが子への接し方へのヒント
発達/発育
療育は早ければ早いほど良い?自律する発達障がいの育て方
療育は早ければ早いほどよい?
息子よりも年下の世代のお子さんと保護者の方は、発達障がいについての認知度も高いせいか、育児中に少しでも特性の傾向があると感じられた場合、できるだけ早く診断を受け、早期から療育をはじめたいと希望されることが増えているそうです。
中には1歳になる前から診断を求める保護者もいるという記事を新聞で読み、私たちの世代とは意識がずいぶん変わったことに驚きます。
息子が小さい頃は、医師が診断を確定することに対して非常に慎重であったため、重度でない場合は、医師が診断を下すというよりは、まずは経過観察をすすめ、その後、必要と感じた保護者が申し出てから診断名をつけるという流れが主流であり、わが子もこうした流れで診断を受けました。
現在息子が20歳になって振り返ると、早くから診断が受けられずに、大人になってから特性があると診断を受けた場合は、もう間に合わないのかといえば、そんなことは決してなく、気付いた時点からできることもたくさんあるように感じます。
実際、息子は「なぜやるのか、いつまで続くのかが分からない」という理由で療育が大嫌いで、決して身を入れてトレーニングしていたようには思えませんでした(詳しくは、息子の著書を読んでいただければと思います)。
息子が大きく変わったのは、それよりも後、麹町中学校で恩人の工藤勇一先生に出会い「自律」という考え方を学んでからのことです。
人は変わろうと思ったときに成長できるのだと思います。
早ければ早いほうがよいというのは、早く気付けた保護者や当事者の後押しになる言葉にはなりえても、決して後から気付いた当事者や保護者を責める言葉になってはいけないと思います。
息子は自分のペースで成長できましたし、あのときもっと早くはじめたらより成長できたかもという後悔はありません。
「最速」を目指すのではなく、自分にとっての「最適」を見つけること。
それが、より遠くまでいくコツではないでしょうか。
早ければ早いにこしたことはないけれど、自分を責める言葉にはしないでいただきたいと、経験者として切に願います。
僕の経験から言えることは、療育は可能な限り早い時期からはじめ、回数を重ねることが重要であると感じています。
とはいえ、嫌いなことを続けるのは誰だって苦痛なはずです。
ADHDの飽きっぽい特性やASDのように見通しがたたないと不安になる特性を考慮しながら、いつまで続けるものなのか、ゴールを分かりやすくして、そのことを親ではなく受ける側の僕たちにきちんと伝えてほしいです。
療育の効果は重ねた回数と比例するので、本人が納得できる形で続けることができるような療育機関を選ぶこと。
包括的な関係の構築があわせて必要であると思います。
西川裕子(発達障がいの子育て経験者) 西川幹之佑(発達障がい当事者・現役大学生)
高校3年時に母の看病のため大学受験を断念。
母の回復に伴い、東京都内予備校の寮に入りながら受験をする。
駒澤大学法学部法律学科卒。夫は渉外弁護士の西川高幹。
2002年に長男・幹之佑が誕生。
ADHDとASD、LDの特性のある息子の子育てを通じて、元麹町中学校校長・工藤勇一先生やあいクリニック・西松能子先生、帝京大学教授・魚山秀一先生など、数々の貴重な出会を得て、特性のある子どもへの理解を深める。
現在は、発達障がいの子育てに関する講演、メディア出演などもおこなっている。2児の母。
西川幹之佑 (にしかわ・みきのすけ) 新潟県三条市生まれ・東京育ち。
幼稚園中退。千代田区立麹町中学校、英国・帝京ロンドン学園卒。
現在、帝京大学法学部政治学科在学中。ADHDとASD傾向、学習障がいがある。
麹町中学校在学中、当時校長であった工藤勇一氏に出会い、「自律」という考え方を学び人生が一変する。
自分のように苦しむ発達障がい児の役に立てることがあると考え、2021年2月に『死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由―麹町中学校・工藤勇一先生から学んだこと』(第4刷出来)を上梓。
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