コラム

てつなぎ広場

発達検査の結果は子どもの一部にすぎない

特性のあるわが子への接し方へのヒント

更新日:

西川裕子・西川幹之佑
西川裕子(発達障がいの子育て経験者) 西川幹之佑(発達障がい当事者・現役大学生)

共感数8

発達検査の結果は子どもの一部にすぎない 自律する発達障がいの育て方

発達検査の結果は子どもの一部にすぎない

「数値」よりも「バランス」が大事

発達検査をどこで、どの先生にしていただくかで、結果もずいぶん異なったこと、その結果をもとに行政や学校との話し合いがなされ、就学や支援の方向が決まること、その後も通院や様々な面で長い長いお付き合いになるため、検査を受ける施設やクリニック選びはとても重要だとつくづく思いました。

息子の場合、当時主流だったWISC-皿や、逓信病院の臨床発達心理士である柿沼美紀先生が開発に携わられた「TOM心の理論課題検査」などの発達検査を成長に応じて数回受けました。

小学校の高学年の頃に受けた皿が最後で、その後は受けていません。現在のWISC-WにくらべるとIIIの検査は長時間になるため、本人の精神的な負担が大きいこと、数回受けた検査で息子の得意と苦手の傾向が把握できていることが大きな理由です。

検査の結果やWISCの数値に一喜一憂する保護者の方もいらっしゃるようですが、私は前述した通り、検査結果はあくまで参考程度に見ることをおすすめします。

各々の数値を上げるよりも、バランスのほうが大切であり、苦手なところ、得意なところを把握し、日常や学校生活でのサポートにつなげ、生かせるように結果を利用したほうが、保護者としても精神衛生上よかったです。

気になる凹の部分は、得意な凸の部分と絡めて伸ばす

もう一つ、結果や数値にとらわれ過ぎるのはよくないと考えるようになった理由があります。

特性のある子どもには、得意不得意の差が大きいものの、ある分野において凸の部分が突出していることもあります。

人によっては、「ギフテッド」とも呼ばれる要素です。

発達検査を受けたところ、息子にもそうした一面が見受けられました。

ところが、親として悪い意味で期待し、プレッシャーをかけてしまったことで、息子を不安定な状態にしてしまったことがあり、自戒しなくてはいけないと思うようになりました。

心掛けたのは、息子の好きなもの、興味があることにからめることです。

例えば、見聞を広げて、かつ我慢や待つことができないという幼さをカバーするための方法として編み出したのが、息子が好きな分野の映画を観にいくというものです。

渋谷や新宿などの混んでいる映画館はご迷惑になるので、あちこち下調べをしてすいているところや、普段から子連れの観客が多い映画館を選ぶなど、事前の調査もしました。

映画館は急に暗くなったり、音が大きかったり、またストーリーによっては不安になったりと、感覚過敏のある息子には刺激が大きく、苦手になりやすいため、「怖くなったら耳をふさいでよいよ」「目を閉じていようね、それでも我慢できなかったら出よう」などとあらかじめ約束をしておくことで、安心できたようです。

このようにして、少しずつですが、長時間じっと座る、長時間おしゃべりを我慢して静かにするという経験を積み上げ、親として子どもの苦手な部分をカバーするように心掛けました。

本やニュース、ネットなどで知識を溜め込むことは決して悪くないことです。

しかし、そうした情報はあくまで他人を介したものであり、二次情報に過ぎません。

特性のある子どもほど、自分の体験や経験に基づいて得た一次情報があって初めて、そうした二次情報を自分なりに解釈し、自分や他者のためにも活用できるようになるような気がします。

親の私が言うのも何ですが、今も息子は時々やたらと難しい専門知識を並べ立てることがありますが、明るくフラットなもの言いで、何だかにくめない愛されキャラに育ったと思います。

子どもの健全な自己肯定感を育てるために、親もバランス感覚が求められるのかもしれません。

≪ 幹之佑VOICE ≫『名探偵コナン』で安全保障に見覚めた

2013年に公開された『劇場版名探偵コナン絶海の探偵』は、僕が初めて劇場で観た「名探偵コナン」の映画でした。

この作品では海上自衛隊が制作に協力しており、安全保障分野はあらゆる分野に融合するという考えをもつきっかけになりました。

本人の好きなものに関連することから映画などで世界や視野を広げることは効果的だと思います。

PROFILE

西川裕子(発達障がいの子育て経験者) 西川幹之佑(発達障がい当事者・現役大学生)

西川 裕子・幹之佑

西川裕子 (にしかわ・ひろこ)新潟県三条市生まれ。
高校3年時に母の看病のため大学受験を断念。
母の回復に伴い、東京都内予備校の寮に入りながら受験をする。
駒澤大学法学部法律学科卒。夫は渉外弁護士の西川高幹。
2002年に長男・幹之佑が誕生。
ADHDとASD、LDの特性のある息子の子育てを通じて、元麹町中学校校長・工藤勇一先生やあいクリニック・西松能子先生、帝京大学教授・魚山秀一先生など、数々の貴重な出会を得て、特性のある子どもへの理解を深める。
現在は、発達障がいの子育てに関する講演、メディア出演などもおこなっている。2児の母。

西川幹之佑 (にしかわ・みきのすけ) 新潟県三条市生まれ・東京育ち。
幼稚園中退。千代田区立麹町中学校、英国・帝京ロンドン学園卒。
現在、帝京大学法学部政治学科在学中。ADHDとASD傾向、学習障がいがある。
麹町中学校在学中、当時校長であった工藤勇一氏に出会い、「自律」という考え方を学び人生が一変する。
自分のように苦しむ発達障がい児の役に立てることがあると考え、2021年2月に『死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由―麹町中学校・工藤勇一先生から学んだこと』(第4刷出来)を上梓。

「発達障がいのわが子が笑顔で自律する育て方 : 特性とともにしあわせになる55のヒント」

著者名
西川 裕子・幹之佑
出版社
 時事通信社

Amazonで詳細を見る

楽天市場で詳細を見る

  1. 1

コラムの内容に共感したら
共感ボタンを押してね!

コラムの内容に共感したら共感ボタンを押してね!

コラムに関連しているてつなぎ広場

コラム TOP 下部

ポイント

ログインありがとうございます。

0ポイント獲得