【掲示板の声×公認心理師】「叱らない育児」ができなくて、怒ってしまう私はダメですか?(第1回)

―理想と現実のあいだで揺れる親へ【公認心理師インタビュー】

しつけ/育児

公認心理師
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【掲示板の声×公認心理師】「叱らない育児」ができなくて、怒ってしまう私はダメですか?(第1回)

「叱らない育児」で、親子が苦しくなるとき

てつなぎ編集部
ただ、この「怒る」と「叱る」の違いが頭では分かっていても、実際の子育ての中でうまく切り分けられず、苦しくなってしまう親御さんも少なくないと思います。 その結果、「叱らない育児」を続けるほど、親だけでなく、子ども自身も一緒に苦しくなってしまうこともある気がするんですよね。

「わざと?」それとも「助けて」? 子どもの“気を引く行動”

たとえば「本気で叱って欲しい時もあるんじゃない?」マナまま/40代)では、親が頑張って“いい親でいよう”とするほど、「わざと悪いことをして気を引こうとしている気がする」など、子どもの“気を引く行動”についての声も寄せられています。

こうした行動の背景には、どんな心の動きがあるのでしょうか?

田村先生
これは本当に見極めが難しいと思いますね。“わざと気を引く行動”なのか、“本当にわからなくてやっているのか”で全く違うものになります。

わざと気を引く場合、その行動にかまってしまうと、またそれが強化されて繰り返してしまうことがあります。

それが“良くない行動”だと知ってもらうためには、行動療法的(望ましくない行動を強化しないように関わり方を調整する心理学の方法)アプローチとして、「今は関わる時ではない」と冷静に捉え、あえて無視することが必要な場面もありますね。

ただ、その一方で、そのほかの部分で、しっかり愛情表現だったり気持ちを伝えてあげることが大事だと思います。

「我慢すること」は悪いこと?成長としての自制と、見逃したくないサイン

てつなぎ編集部
親の気を引こうとして、わざと困らせるような行動が強く出てくるケースがある一方で、逆に「怒られないようにしよう」「本当の気持ちは言わないでおこう」と、子ども自身が自分の感情を抑えているように見える、という声もあります。

親に怒られないようにと“我慢”しているとき、それは成長の過程の“がんばり”なのか、それともどこかで“無理をしているサイン”なのか。親として、どんな視点で見ていくといいのでしょうか?
田村先生
「子どもが気を使って我慢する」 っていうのは、一概にダメとも言い切れないと思います。成長過程において、相手のことを理解して“自分の行動を自制する”ことは、ある意味では必要なことだろうし、社会の中では“自分の感情コントロール”という部分って、できていたほうがいい場合もあると思います。

“常に子どもらしくいる”っていうほうが、むしろ難しいと思いますしね。怒られる経験は、ある程度は子どもの時には必要ですからね。ダメなものはやっぱりダメって分別をつけてもらうには、時に怒らなくちゃいけないので。
てつなぎ編集部
そうですよね。実際、危険な場面ではしっかり怒る、という家庭も多いと思います。たとえば道路に飛び出したり、人に石を投げたりしたときなどは、「これは本当にダメなこと」「人に迷惑がかかること」「危ないこと」だと、はっきり伝える必要がありますよね。
田村先生
100%その通りだと思います。

危険な行動と「楽しい」行動 ── 叱る・見守る線引きはどこにある?

田村先生
ただ、子どもにとって“楽しい”が先行する場合もありますよね。たとえば“水たまりに入っちゃう”のは、“楽しい”が先にあるからやっちゃう、というのは十分に考えられるのかなと。それはそれで子どもにとっての“楽しみ”だから、ある意味しょうがない部分もあるし。

親としては、水たまりに入られて服を洗わなくちゃいけない手間など、そういう“フラストレーション”で怒ってしまうこともありますよね。

道路に飛び出したり、石を投げたりは、命や他人に関わることなので、“しつけ”の範疇で叱る必要はあるけど。“水たまり”だったら、子どもにとっての“楽しさ”として、どこまで親がそれを許容できるかっていうのは、大きいのかなと。

それを「楽しいならしょうがない、後で洗えばいいじゃん」って受け止められるのかどうか。そこの線引きが必要なのかなとは思いますけどね。
てつなぎ編集部
確かにそうですよね。まあ...子ども自身も、「これはダメなこと」「これをやったら怒られる」と分かっている場面ってありますよね。そういう、“分かっていてやったこと”に対して叱られるのは、子どもにとっても納得しやすい部分なのかな、と感じています。

子どもからしても「これやっちゃ怒られるよね」っていう理由がわかると、「いつもいい子にしなくちゃいけない」みたいな抑圧って少なくなったりしますかね?
田村先生
うんうん、そうです、そうです。親がなるべく冷静で理性的な対応でね、子ども側も、「これをやったから怒られたんだな」っていう理由をちゃんと理解できていれば、怒られたのは“親の機嫌が悪い”とか“自分のことが嫌い”とかそういうことじゃなくて、その“行動”に対してだったというふうに、受け止めやすくなると思います。

そうすれば、常に気を張って我慢するとか、自分を出せないっていうことは、少ないんじゃないかなと思いますけどね。

「分かっているのに怒ってしまう」親の心で起きていること

てつなぎ編集部
ここまで田村先生のお話を聞いて、「叱る」と「怒る」の違いや、線引きの考え方が、少しずつ整理できてきました。

ただ...、頭で「落ち着いて話そう」「感情的にならないようにしよう」と思っていても、思いがけない一言や行動をきっかけに、怒りが一気に噴き出してしまうことって、やっぱりありますよね。

てつなぎ掲示板にも、次のような投稿がありました。

「ヤンキーばりに汚い言葉を怒鳴り散らして...最近ウソばかりつくし、信用もならないから、私も疲れて、もういいや…と。」(子どもが証拠隠滅しようとするのってさ/支援級の子(小3)さん/40代

また、こんな声もあります。

「イライラしたり、はあ!?って思うことがあると、どうしても諭すように静かな落ち着いた口調で叱る事ができない、、、散々怒ったあとで、ああ、もう少し諭すように落ち着いて話せばよかった。と後悔して病む😇」(諭すように怒らない/三兄妹ママ/30代

こうした“怒りの爆発”が起きるとき、親の心の中では何が起きているのでしょうか。

「裏切られた」と感じたとき、怒りは強くなる

田村先生
やっぱり「裏切られた」と感じるときが多いんじゃないですかね。あと、子どもをコントロールしようとするから、“怒る”。

「私はこんなに頑張って〇〇してるのに、なんでこんなことするの?」「なんで私を、こんなに怒らせるんだ」っていうような、“主観がベース”いわゆる“自分軸”だったりすると、怒りは一気に強くなりやすいと思います。
てつなぎ編集部
なるほど。「怒りを抑えなきゃ」と頑張る前に、「そもそもコントロールしようとしていないか」立ち止まって考える視点が、大切なのかもしれませんね。
田村先生
そうですね。「子どもをコントロールできる」っていう前提に立ってしまうこと自体が、結構、危ういなと思うことはあります。

「言うことを聞かないから」とか、「泣きやまないから」とかって理由で追い詰められてしまうケースって、実際には“子ども側の問題じゃない”ことがほとんどなんですよね。

そもそも、子どもってコントロールできない存在なので。そこを忘れたまま関わろうとすると、どうしても親のペースを乱されて、結果的に“怒り”になってしまう。

だから、自分の考え方だったり、行動だったり、自分の許容範囲を広げるしかないと思います。

ひとりで抱え込まなくていい|親が背負いすぎないために

てつなぎ編集部
たしかに「自分の許容範囲を広げる」という視点って、大事ですよね。ただ、現実にはそれも難しくて、「怒ってしまう」ことが、そのまま「ダメな親」に連鎖してしまう方は本当に多い気がします。

こうした“自己否定のループ”に入ってしまう背景には、どんな心の動きがあるのでしょうか?また、少しでも気持ちがラクになる考え方はありますか?
田村先生
これまで話してきたことを、ちょっと度外視するような話になっちゃうかもしれないですけど…。実は、親ができることって、そんなに多くないんじゃないかなって思うこともあるんですよね。 親が「全部自分で育てなくちゃいけない」って思いがちだけど、実際、子どもって、親以外のところでも、すごくよく育つので。

だから、親自身が自分の子育てに対して、必要以上に“負担に思わなくていい”、っていうのは、正直思うところですね。

最低限の、あったかい布団と美味しいご飯、安定した家族関係と、安定した親子関係があれば、それだけで十分。子どもって、案外勝手に育つし。子どもは、家の外の世界で学ぶことのほうが、実際多いですからね。

お母さんもお父さんも、「自分が一生懸命育てなきゃ」って、思うこと自体が、もしかしたらちょっと力が入りすぎているのかもしれないですね。
てつなぎ編集部
そうですよね。「これもしなきゃ」「あれもしなきゃ」「私がやらなきゃダメになる」と、そうやって、子育ての責任を全部ひとりで抱え込んでしまう親御さん、掲示板を見ていても、実際とても多いように感じるんですよね。 そんな中で「親が必要以上に背負わなくていい」と聞くだけで、少し心が軽くなる方もいる気がします。
PROFILE

公認心理師

田村 俊作

公認心理師。教育現場でのカウンセリングを中心に、中学校や行政機関、地域の相談窓口などで子ども・保護者・大人の支援を行い、 スクールソーシャルワーカー、精神保健相談員としても活動。教育・福祉・保健医療・メンタルヘルスの現場を横断的に経験し、 現在は都内の学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)でスクールカウンセラーとして活動中。
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