内向的な子どもへの理解と接し方
2000人以上の親子の悩みを解決した元スクールカウンセラーが伝える内向的な子どもたちが自信を育む方法
しつけ/育児
内向的な子どもへの理解と接し方
内気で恥ずかしがり屋な子どもがいます。他の子どもたちが物おじせずに楽しいこと、新しいことに飛び込んでいくのとは対照的な様子に、親は「うちの子は大丈夫かしら?」と不安に感じることもあるのではないでしょうか。
特に、子どもの頃に内気で恥ずかしがり屋な様子が見られることは、よくあることです。
子どもには、大きく分けて、衝動的で好奇心が強い外向タイプと、慎重で用心深い内向タイプがいます。
内向的な子どもは、新しいことに対して不安や緊張を感じやすいので、母親の陰に隠れて相手を観察しています。でも、馴染んでいくと、好奇心や積極性を発動することができます。子どものうちは、何もかも初めてのことばかりなので、どうしても引っ込み思案が目につきますが、慣れるとちゃんと力を発揮できるので心配しなくても大丈夫です。
また、内向的な子どもは、外向的な子どもにはない自分のペースや考え方があり、それもいずれ発揮されていくので(子どもによりますが、小学校中高学年〜、中学以降〜など)それまで親が「うちの子どもは、大丈夫」と信じて、サポートしながら、待ってくださるとよいです。でも、親が不安な気持ちで子どもをサポートするのはとても難しいです。
ですので、内向的な子どもの特徴や成長イメージをあらかじめ持っていただけたら、おおらかな気持ちで待つことができるのではないかと思い『内向的な子のすごい力』を書きました。
内向的な子どもの特徴
内向的な子どもは、生まれつき、自分で考え、自分で決める力を持っています。人の意見を鵜呑みにせず、主体的・自律的に生きられることは、生涯を通じての長所ですが、誰に何を言われても自分を曲げない頑固さがあるので、幼少期は特に「素直でない」「育てにくい」と思われるかもしれません。
また、自分の考えややり方に固執するので、柔軟性に欠けて不器用に見えることもあります。確かに、そう言われても仕方がない時もあるのですが、自分で試行錯誤をする分、先々に役立つ気づきや学びを得ているものです。
普段は頑固ですが、納得すると自ら方針転換をすることや、目標を決めたらコツコツ努力を続けられる性質もあります。10歳を超えてからは、本人の自覚に任せられて、育てやすいと感じられるかもしれません。
内向的な子どもの性格
内向的な子どもは人見知りで初めての環境に馴染むのに時間がかかる傾向があります。
でも、不安なときには無理をせず、じっくり観察して、自分のペースで馴染んでいくと言うのは、自然なこと、大切なことです。
新学期にストレスを感じやすく、友だち作りに時間がかかりますが、周囲の様子をよく観察してニーズを理解し、相手のペースも尊重して接する態度は周りから好まれ、信頼されます。決してにぎやかなタイプではないのに、気づくとクラスの中心にいたりすることもあります。ですから、ご家庭でも焦らずに、子どもの性格やペースを理解して見守れるといいですね。
1. 自分の世界がある
内向的な子どもには、自分だけの豊かな世界があります。何か気になることがあると、よく観察して、オリジナルな遊びや表現にすることができます。
2. 人に流されない
内向的な子どもは、自分の世界・自分の意見を持ち、それを大事にするので、安易に人の意見に流されません。
3. 言語化・感情表出に時間がかかることがある
じっくり考えるために、言葉にするのに時間がかかったり、嬉しい、悲しいなどの感情が現れるまでに、他の子どもより時間がかかることがあります。
内向的な子どもの行動
内向的な子どもは、自分の時間、遊び、ペースが守られること(テリトリーが守られること)を必要とするタイプです。「子どもらしくない」「寂しいのでは?」などと心配して先回りせずに、子どもが落ち着く環境を整えてください。気の合う友だちを作り、一緒に遊ぶことも好きですし、学校では必要に応じて静かなリーダーシップを発揮する力を持っています。
1. ひとり遊びが好き・自分だけの時間が大切
ひとりで遊ぶことや自分だけの時間を持つことを必要とします。仲良しのお友だちと遊ぶことも大好きですが、毎日だと疲れる、ひとりの帰り道にぼんやりする時間が欲しい、など。
2. 自分のペースが大事
他人のペースや集団行動より、自分のペースで考えたり動いたりすることを好みます。集団行動ばかり続くとストレスになりやすい。
3. 物事を準備してから行動する
事前に見通しを持ち、準備をすることで不安を減らしたいタイプです。
内向的な子どもの素質
内向的な子どもは、外向的な子どもが中高生の頃に身につけていく素養を生まれながらに持っているというすごい特徴があります。小さいうちは親が不安になることも多いと思いますが、「うちの子は大丈夫!」「大器晩成」と思って育ててくださるとよいです。
1. 思考力
物事をじっくり考えて、自分の言葉で理解しようとします。
2. 観察力
物事の細かい点、他の人が気づかない点をよく観察して知っています。
3. 一貫性と誠実さ
自分の価値観や信念に基づいた行動を取ることが多く、無理に人に合わせたり、思っていないことを口にすることを嫌う誠実さがあります。
内向的な生活であることのポジティブな点
内向的な生活には、目立たないながらも豊かで力強い魅力があります。一人の時間を大切にすることで、自分を深く理解し、物事に集中できる力を育むことができます。また、人間関係においても質を重視し、信頼に基づく絆を築く傾向があります。
1. 集中力
自分が興味を持つ物事について、集中力をもって取り組みます。集中力の高さは、学習や研究活動、創作などでも発揮されます。
2. 人間関係の質が高い
人数は多くはありませんが、誠実・大切につきあうので、家族とのよい関係が築ける、信頼できる友だちと長く付き合っていけます。
3. 創造的・独創的なアイデアを生み出せる
日常生活の中でも、オリジナルな考え・物を生み出したり、クリエイティブな表現をしたりすることができます。
内向的な子どもの性格を無理に変えようとしない重要性
内向的な子どもには次のような特徴があります。
・内気で引っ込み思案
・不安や緊張が高い
・新しい場所や環境が苦手
・マイペース
・自分の世界がある
明るく元気で叱られてもへこれないといった、いわゆる一般的な子どもイメージと異なるため、親は心配になってしまうこともあるかもしれません。でも、内向的な子どもには、外向的な子どもにはない長所があります。
例えば、自分で考える力、自分のペースでこつこつ頑張る力など、生涯にわたり子どもを支える持ち味です。
長所と短所は表裏一体で、短所を直そうとすると長所を失うリスクがあるので、親は注意が必要です。
自信を育むためのサポート方法
内気や人見知りなど、親が心配している点は、子ども自身が、小学校高学年以降、自分でも「変えたほうがいいのかな」と考えるようになったり、「勇気を出して苦手にチャレンジしてみよう」などと考えるようになることも多いです。ですから、その時まで待ってあげるといいですね。
そして、チャレンジが成功しても失敗しても、変わらず、温かい眼差しで子どもを肯定的に見守ってくださるとありがたいです。
子どもの自信を育むために、もうひとつお話ししたい大切なこと。それは、子どもの自律神経を育むことです。子どもの自律神経は未完成で、18〜25歳頃までに出来上がります。不安や緊張が強いお子さんほど、子ども時代に親にしっかりサポートしてもらえると、しなやかで強いメンタリティを作ることがでます。
自律神経とは、体内の様々な機能を調節する神経系です。主に交感神経と副交感神経の二つから構成されており、交感神経は活動するための神経(車でいうとアクセル)、副交感神経はリラックスするための神経(車でいうとブレーキ)の働きをしています。これらの働きで、心拍数、呼吸、体温、消化などが調整され、身体のバランスが保たれます。
下の図は、自律神経のバランスが取れている時の様子を表したものです(イラスト2)
自律神経のリズムが、薄いピンク色(副交感神経=リラックス・ブレーキ)と濃いピンク色(交感神経=活動・アクセル)の中で推移している様子です。薄いピンク色では休息したり、友だちとおしゃべりをしてくつろぐことができ、濃いピンクのところでは「さぁ、やるぞ」とやる気を出して学習や活動に取り組むことができています。
子どもの自律神経は、まだ未完成で「アクセルを強く踏み込む」と「急ブレーキ」を行き来していて、副交感神経(薄いピンク色の部分、リラックスしたり、人とつながって安心できる部分)にとどまることができません(イラスト3)。
子どもの副交感神経は、怒ったり泣いたりした時に、親に「どうしたの?大丈夫だよ」のように、感情をやさしく受けとめてもらって、慰めてもらい、親に落ち着かせてもらう体験を日々繰り返すうちに、少しずつ作られていくのです。
でも、子どもが情緒不安定になった時に親が受け止めてあげられなかったり、受け止めてもらっていても、学校のストレスが強い場合などには、自律神経を十分に育んであげられないことがあります。するとイラスト4のように、全力で頑張ってはスイッチがオフになってしまう、というようなことが繰り返されてしまいます。
イラスト4には、学業や学校生活で無理して頑張っては力尽きて動けなくなる、「それじゃだめだ!」と頑張るとまたアクセル全開で頑張り続けてしまう繰り返しが描かれています。こうなると、学校生活を楽しむことができません。自信も持てない、心身ともに疲弊して学校へ行けなくなってしまったり、こころの病気になってしまうこともあります。イラスト1のような自律神経リズムを取り戻すには長い時間がかかります。
内向的な子どもは、初めての環境が苦手でストレスがかかりやすい性質があります。ですので、自律神経が未発達な子どもの時期に、大人の温かいサポートが得られると、子どもの長所を伸ばしていくことができます。でも、サポートがないと自信を失ったり、自律神経が乱れて力を発揮できなくなったりする恐れもありますから、理解して支えてくださるとよいと思います。
具体的にどのようなサポートをしてあげられるとよいかお話します。
・子どもの安心を優先する
内向的な子どもの人見知りや不安の強いところなどは、親から見ると頼りなく、つい、良かれと思って背中を押してしまいがちです。でも、子どもが不安なときは、無理に頑張らせても子どもにとってプラスの体験とはなりません。
子どもが不安なときは、「なんか緊張しちゃうね」のように寄り添ってください。急かされずに待ってもらえると、子どものタイミングで活動に参加することができます。子どもの安心感を優先することは、子どもの自律神経を育むことにもなりますから、“自律神経貯金”と思ってお付き合いください。
・好きなことに協力する
他の子どもたちが、お友だち同士で遊んでいるのに、ひとりで絵を描いたり、虫を観察して満足している様子を見ると、「ねぇ、お友だちと遊んできたら?」と言いたくなるかもしれません。でも、内向的な子どもにとって、自分の好きな遊びができることは何より大切なことです。子どもの好きなことを応援してくださるといいなと思います。
・ペースを尊重する
「マイペースが過ぎると大人になって困るのでは?」と不安に感じるかもしれません。でも大丈夫です。学校生活などを通じて、子どもが自分で少しずつ、自分のペースと周りのペースをどう織り合わせるかの工夫をするようになっていきます。それまでは、否定したり「大人になったら困るよ」などと脅したりせず、見守ってください。
子どもは、いずれ自分のタイミングで困難に挑戦する勇気を持つようになります。それを信じて、今は子どもの個性を大事に育む時間を大切にしてください。この時期に受けた親の愛情や肯定が、子どもの未来を輝かせる力になります。
『声かけで伸ばす内向的な子のすごい力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、学校や家庭でのお悩みへの回答と解説、内向的な子どもが将来どのように活躍できるのかについてご紹介しています。よかったらぜひ、手に取ってみてくださいね。
臨床心理士/公認心理師/元東京都スクールカウンセラー。
外資企業勤務後、心理臨床の道を志す。臨床心理士の資格取得後は、東京都・神奈川県・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年はこにわサロン東京を開室。
主な技法は、ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析。読 売新聞、日経新聞、日経ウーマン、 PHP子育てなどメディアでも活躍中。
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