すべての親子に“圧倒的な主体性”を!――しなやかな心で挑戦し続ける姿勢
子どもの内発的動機を社会につなげ、自己決定力とやり抜く力を循環させる5つの成長循環メソッドを体系化したことです。そして、この独自メソッドを家庭で再現できる形に落とし込み、子どもが自ら考え行動し、失敗さえ次のチャンスへ変える「圧倒的な主体性」を育む道筋を示します。
しつけ/育児
これからの時代を生きる子どもたちにとって、最も必要なのは「自ら問いを立て、解決策を形にする力」です。本書では、子どもの知的好奇心を刺激し、社会と繋がる喜びを教える「10歳からの起業家教育」のメソッドを公開。親子で楽しみながら、未来を切り拓く強さを育むための具体的なアドバイスが詰まっています。
森博樹先生の著書『子どもの「好き」を「生きる力」に育てる 親子ではじめる 10歳からの起業家教育』から一部転載・編集してお届けいたします。
第3節 「やり抜く力」が壁を『学びの扉』に変える
しなやかな心で挑戦し続ける姿勢
「昨日まであんなに楽しそうに練習していたのに、一度うまくいかなかっただけで『もうやらない!』と言い出して・・・」「うちの子、難しい問題にぶつかると、すぐに『どうせ僕には無理だよ』と諦めてしまうんです」。
子育てをしていると、誰もが一度はこんな悩みに直面するのではないでしょうか。
「やってみたい!」という気持ちで始めたはずなのに、いざ壁にぶつかると、途端に心が折れてしまう。その姿に、もどかしさや不安を感じることもあるかもしれません。
この、挑戦を続けるか、諦めてしまうかを分ける最後のピースこそが、「3つの力」の3つ目、「やり抜く力」です。
近年、教育の世界で「才能やIQよりも子どもの将来を左右する」として注目されている力があります。
それが、心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱したGRIT(グリット)、すなわち「やり抜く力」です。
「やり抜く力」と聞くと、「歯を食いしばって我慢する」といった昔ながらの「根性」をイメージされるかもしれません。
これは、単なる根性や我慢ではありません。
自分の「好き」という気持ちを原動力に、失敗を恐れず挑戦し、たとえうまくいかなくても「どうしたらできるかな?」と考え続けられる力。
何度も転びながら、少しずつ前に進んでいく「しなやかな心」のことなのです。
予測困難なこれからの時代、子どもたちに必要なのは、正解のある問題を速く解く能力だけではありません。
むしろ、まだ誰も答えを知らない問題に対して、試行錯誤を繰り返しながら、自分なりの答えを見つけ出していく力こそが求められます。
その原動力となるのが、この「やり抜く力」なのです。
すべては「心の状態」となるマインドセットで決まる
「失敗を恐れず、何事にも挑戦できる子になってほしい」これは、すべてのお子さんを持つ保護者の方々の共通の願いではないでしょうか。
しかし現実には、たった一度の失敗で「もうやりたくない」とそっぽを向いてしまったり、難しい課題を前にして「どうせ僕には才能がないから」と挑戦する前から諦めてしまったり・・・。
そんなお子さんの姿に、心を痛めたり、もどかしい思いをされたりした経験は、きっと少なくないはずです。では、すぐに諦めてしまう子と、粘り強く挑戦し続ける子の違いは、いったいどこにあるのでしょうか。
その鍵を握るのが、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授が提唱する「マインドセット」、すなわち物事の捉え方や考え方の「癖」です。
この『心の状態としてのマインドセット』には、大きく分けて2つの種類があります。お子さんがどちらのマインドセットを備えているかで、困難に直面したときの反応、そしてその後の成長の可能性が大きく変わってくるのです。
【硬直マインドセット(Fixed Mindset):石版に刻まれた能力】
一つは、「自分の能力や才能は、まるで石版に刻まれた文字のように、生まれつき決まっていて変わらない」と信じているマインドセットです。このマインドセットを備えている子どもは、無意識のうちに「できる自分=価値がある」「できない自分=価値がない」という思考に陥りがちです。
そのため、自分の能力が試される場面、特に失敗する可能性のある挑戦を極端に避けるようになります。
例えば、算数で初めて見る難しい問題が出てきたとき。彼らの心の声はこうです。
「もしこの問題が解けなかったら、自分は算数ができないダメな子だと思われてしまう。
恥ずかしい思いをするくらいなら、最初から『こんなの分からない』と言ってやらない方がマシだ」
体育で逆上がりに挑戦するときも同じです。
「あの子はすぐできたのに、自分はできない。やっぱり運動神経が悪いんだ。何度も失敗する姿をみんなに見られるのは、もう嫌だ」
彼らにとって、失敗は単なる「間違い」ではなく、自分自身の価値を揺るがす「証明」になってしまうのです。
だからこそ、自分のプライドや価値を守るために、挑戦そのものから遠ざかってしまいます。
【成長マインドセット(Growth Mindset):トレーニングで鍛えられる能力】
もう一つは、「能力や才能は、トレーニングで鍛えられる筋肉のように、努力や経験次第でいくらでも伸ばすことができる」と信じているマインドセットです。
こちらのマインドセットを備えている子どもは、失敗に対する捉え方が全く異なります。
同じように、算数で難しい問題にぶつかったとき。彼らの心の声は、興奮に満ちています。「うわ、この問題すごく難しい!でも、もし解けたら最高じゃないか?どこから手をつければいいかな。」
逆上がりに失敗したときも、下を向きません。
「悔しい!でも、さっきより少しだけ足が上がった気がする。上手な子は、どこに力を入れているんだろう?やり方をちょっと変えて、もう一回やってみよう!」
失敗は自分の価値を証明するものではなく、目標を達成するための「貴重なヒント」や「攻略法」に変わります。
難しい課題は、自分を試すものではなく、自分を成長させてくれる絶好のチャンスなのです。
やり抜く力は、「成長マインドセット」という心の土壌から芽生える
ここまでお読みになり、「硬直マインドセット」と「成長マインドセット」という二つの心のあり方が、お子さんの挑戦する気持ちにどれほど大きな影響を与えるか、感じていただけたのではないでしょうか。
本書で繰り返しお伝えしている「やり抜く力」とは、この「成長マインドセット」という豊かな土壌があって初めて、力強く育つものです。
それは、お子さんが人生という長い道のりで出会うであろう、様々な困難にも決して揺らぐことのない、たくましい大樹へと成長していくための「生きる力」そのものなのです。どんなに素晴らしい可能性の種をお子さんが持っていても、心の土壌が痩せて硬いままでは、残念ながらその根を深く張ることはできません。
少し想像してみてください。お子さんの心の中には、生まれ持った好奇心や「やってみたい」という気持ちが、たくさんの輝く可能性の「種」として存在しています。
『ピアノを弾いてみたい』『プログラミングって面白そう』『新しい友達と話してみたい』・・・。どれも、お子さんの人生を豊かにする可能性を秘めた、かけがえのない種です。
しかし、心の土壌が「自分には才能がない」という硬直マインドセットのままだと、どうなるでしょうか。
お子さんが勇気を出して『ピアノを弾いてみたい』という種を蒔きます。
しかし、練習が進むと、どうしても指が思うように動かない難しい和音という「壁」が現れます。この瞬間、硬い心の土壌しか持たないお子さんは、この「できない」という事実を、自分の才能の限界だと感じてしまいます。
そして、心の中はこんな諦めの言葉でいっぱいになってしまうのです。
「ああ、もうダメだ・・・。やっぱり僕には才能がないんだ。これ以上やっても、きっとうまくならない・・・」
その瞬間、伸びようとしていた小さな芽は「やっぱり自分はダメなんだ」と自信をなくし、固い土の中へと引っ込んでしまいます。
そして、その一度の経験が、「これもやってみたい」「あれも面白そう」という、心の中にあったはずの他のたくさんの可能性の種さえも、固い殻に閉じこめてしまうのです。
一方で、心の土壌が「努力すれば成長できる」という成長マインドセットであれば、物語は一変します。
同じようにピアノの練習で難しい和音という「壁」にぶつかったとき、その豊かな土壌は、お子さんの心に「大丈夫、練習すれば必ずできるようになる」という温かい信頼感や希望の問いかけを与えてくれます。
すると、心の中に響く声は、「もうダメだ・・・」という諦めの言葉ではありません。「悔しい!でも、さっきよりほんの少しだけ、指がスムーズに動いた気がする。
上手な子は、どんな指の形で鍵盤を押さえているんだろう?やり方をちょっと変えて、もう一回やってみよう!」子どもは「そうか、練習すれば弾けるようになるんだ!」と捉え、粘り強く鍵盤に向き合います。
試行錯誤の末に和音が弾けたときの達成感は、困難を乗り越えた者にしか味わえない、最高の喜びとなり、次の、さらに大きな花を咲かせる意欲へと繋がっていくのです。
私たちキンダリーの教育の核は、日々のプロジェクトや仲間との関わりを通じて、お子さんの心にある土壌を、この「成長マインドセット」という豊かで柔らかなものへと耕し続けることにあります。「うちの子の心の土壌は、少し硬いかもしれない・・・」そう感じられた保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
でも、ご安心ください。何より大切なのは、お子さんの心の土壌は、決して生まれつきで決まっているものではない、ということです。
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