「大手塾から中高一貫」はコスパが悪い……?「複雑化する受験」
重要なのは「子どもの適性」だけではない。親の経済的・時間的負担、変わる大学受験制度、首都圏で高まる小学校受験・中学受験人気…いま知っておくべき「受験ルート」を詳細に解説。
教育
受験は親子で疲弊するものではありません。大学卒業と就職を一つのゴールとするなら、必ずしも中学受験を検討する必要はなく、希望する大学への入学に至る「受験ルート」について親が正しく理解することが求められるでしょう。
本書では、子どもの適性だけでなく、学費や塾代など親の経済的負担、送り迎えや宿題対応等の親の時間的負担という視点で、各「受験ルート」を詳細に解説します。
伊藤 滉一郎の『小中高大受験戦略 子どもが沈まない 親が無理しない』から一部転載・編集してお届けいたします。
複雑化する受験
「過去最多」を更新し続けた中学受験者数
怒涛の勢いで少子化が進行する中で、子ども1人当たりの年間教育費は年々増加しています。
1980年代半ばには15万円程度でしたが、2017年には31万円と、倍以上に増加しています。
一人っ子家庭が増え、親たちが子どもにお金と時間を惜しみなく投資する風潮が高まる中で、幼稚園・保育園から大学に至るまでの「受験ルート」の選定は重要事項となりました。
近年のトレンドとしては、2015年ごろから中学受験の人気が過熱しています。
2023年度入試まで、受験者数は毎年、「過去最多」を更新し続けていました。
2025年の首都圏中学入試の「私立・国立中学校の受験者総数」〈首都圏模試センター推定〉は、前年よりわずか100人減の「5万2300人(前年比99.6%)」と、過去40年で3番目に多い受験者数でした。
ちなみに受験率は「18.10%」と、過去2番目の高さでした。
本書を執筆中の2025年10月実施の第4回合不合判定テスト(四谷大塚)の受験者数は前年比1.1%増となっていることから、2026年度入試では受験者数が過去最高を更新する可能性が高いと言われています。
また、東京・大阪など都市部では、中学受験の際に学力レベルの最上位層が抜けた中で、あえて上位私立大学の付属校や公立トップ校を高校受験で狙う「高校受験主義」という勢力も近年台頭しています。
一方で、特に首都圏では幼稚園受験や小学校受験など、親の方針で子どもの進路を早期に確定させる「利確(利益確定)」を目指す勢力も根強いです。
タイミングも時間も費用も「踏み入れないとわからない」
加えて、中学受験であれば塾選びや学習伴走、小学校受験や幼稚園受験では幼児教室や塾選び、親子面接など、実際にその界隈に足を踏み入れてみないとわからないことだらけ、といった状況になっています。
そのため、子どもに歩ませたい道筋が大まかには決まっていたとしても、具体的な受験戦略を検討すると「どこのタイミングで参入するべきなのか」「どのくらいの時間やお金がかかるものなのか」などがよくわからないという家庭も多いといいます。
「大学受験合格」とその先の「就職」「キャリア形成」を一つのゴールとするのであれば、金銭的な負担や労力的な負担、子どもの適性などを含め保護者が正しく理解した上で戦略を立てることが求められます。
本書では、各ルートについて詳細に解説をしていきますが、まずは各ルートのリアル(現状)について、詳しく見ていきたいと思います。
指定校推薦、総合型選抜、共通テスト[大学受験のリアル]
受験生の半分は推薦・総合型
大学受験については、団塊ジュニア世代が中心の保護者世代(1990年代の大学入試)とは大きく様変わりしていますので、簡単に触れておきます。
これから紹介する各受験ルートは、大学進学を一つのゴールとして扱うため、こちらもしっかり押さえておきましょう。
まず、入試制度の多様化が急速に進み、一昔前に比べて一般選抜(一般入試)の受験率が激減しています。
近年、大学入試における学校推薦型・総合型選抜の規模が急速に拡大しています。
2022年度には推薦・総合型選抜による入学者が全体の5割を超えました。
年内入試(高3の12月までに試験が終わるため、このように呼びます)を利用する受験者が一般入試の受験者数を上回り、なんと「受験生の過半数が一般入試を受験しない時代」が到来しているのです。
私立大学では入学者の約6割、国公立大学でも約2割が推薦・総合型選抜を経た入学です。
推薦・総合型選抜は特別な入試制度ではなく、主要な進学ルートになっています。
また、入試制度そのものも多様化が進み、「女子枠」「探究型入試」「高大接続型入試」といった新たな選抜方式が次々と登場しています。
東大でも京大でも導入が進む総合型選抜
総合型選抜はかつてAO入試と呼ばれていました。
AOとは、Admissions Office(アドミッションズ・オフィス)の略で、各学校の入学選考事務局を指します。
総合型選抜で評価の基準になるのは受験学力ではなく、それぞれの学部・学科が提示するアドミッション・ポリシー(受け入れ方針)に基づいた「期待する人物像」に合致しているかどうかです。
総合型選抜は学力によらず、その学校、学部・学科で学びたいという学習意欲や学校への適性、各々の個性などを評価するアメリカ型の選抜方式で、日本の就職活動に近いような印象を受けます。
私立大学を中心に実施されているイメージがあるかと思いますが、国公立の超難関大学においても導入され始めています。
東京大学、京都大学、東北大学など日本を代表する国立大学も総合型選抜の採用を進めており、東北大学に至っては、総長が「2050年までに全生徒を総合型選抜で取りたい」と話し、受験業界に大きな衝撃を与えました。
冒頭で書いたような保護者世代とのギャップといった話ではなく、10年前と比較しても大きなゲームチェンジが起きています。
この潮流が高まるということはつまり、これから先はいわゆる「逆転合格」が起きにくくなるということでもあります。
総合型選抜で求められる「原体験」「語る力」といった要素は一朝一夕で身につくものではありません。
大手推薦・総合型選抜予備校では、対策が間に合わないという理由で高3からの入塾を断っているそうです。
一般入試が主流だった時代は、高3の夏まで部活を全力でやり、秋からの猛勉強でギリギリ難関大学に滑り込むといった例も珍しくありませんでしたが、推薦・総合型選抜が主流になると、そういった逆転劇は少なくなることでしょう。
今後の大学入試は高3の直前期のみ頑張ればいいといったものではなく、中学高校の6年間、もしくは小学生時代までも含む取り組みや経験の成果が表れるものになると予想されます。
そのため、小学校から高校までを過ごす環境がより大きな意味を持つといっても過言ではありません。
こうした大学受験のトレンドから逆算して、受験ルートを選定していく必要が出てくる時代になるでしょう。
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