すべての親子に“圧倒的な主体性”を!――納得感を生み出す自己決定力
子どもの内発的動機を社会につなげ、自己決定力とやり抜く力を循環させる5つの成長循環メソッドを体系化したことです。そして、この独自メソッドを家庭で再現できる形に落とし込み、子どもが自ら考え行動し、失敗さえ次のチャンスへ変える「圧倒的な主体性」を育む道筋を示します。
しつけ/育児
これからの時代を生きる子どもたちにとって、最も必要なのは「自ら問いを立て、解決策を形にする力」です。本書では、子どもの知的好奇心を刺激し、社会と繋がる喜びを教える「10歳からの起業家教育」のメソッドを公開。親子で楽しみながら、未来を切り拓く強さを育むための具体的なアドバイスが詰まっています。
森博樹先生の著書『子どもの「好き」を「生きる力」に育てる 親子ではじめる 10歳からの起業家教育』から一部転載・編集してお届けいたします。
第2節 「自分で決めた」が挑戦のスイッチを入れる
納得感を生み出す自己決定力
第1節でお話しした、子どもの内側から湧き上がる「内発的動機」の炎。それは、すべての学びと成長の始まりとなる、かけがえのないエネルギーです。
しかし、その炎を具体的な「行動」へと変え、燃やし続けるためには、もう一つの重要な力が必要となります。
それが、本書で提唱する「3つの力」の2つ目、「自己決定力」です。
自己決定力とは、単に「AかBかを選ぶ」という能力ではありません。
「なぜ自分はそれを選ぶのか」という目的を理解し、その選択に責任を持つことで、行動に深い意味と「よし、これでいこう!」という腹落ち感、すなわち「納得感」をもたらす力です。
そして、この「納得感」こそが、未知の領域へ一歩を踏み出す「挑戦のスイッチ」をONにするのです。
なぜ「自分で決める」と頑張れるのか?
社会心理学に「自己決定理論」というものがあります。
これは、人は外部からの報酬や強制ではなく、自分の意思で行動を選択する時に、その行動そのものに価値や楽しさを見いだしやすくなる、という考え方です。
例えば、親に「部屋を片付けなさい!」と言われてしぶしぶ行う片付けと、「この後、友達と気持ちよく遊ぶために、今のうちに片付けておこう」と自分で決めて行う片付けとでは、行動への意識が全く異なります。
後者は、片付けという行為を「自分ごと」として捉えているため、行動の質も持続性も高まります。
私たちが運営するキンダリーでは、この「自分ごと化」を促すために、子ども自身が決定する機会を意図的に数多く設けています。
放課後の過ごし方から始まり、プロジェクトのテーマ選択、さらにはその具体的な活動内容に至るまで、子どもたちの意思が尊重されます。
例えば、洋服屋プロジェクトでデザインを自分たちで決めることで、たとえ裁縫が難しくても「これは自分たちが選んだデザインだから、絶対に完成させたい」という強い当事者意識が芽生えます。
自分で選んだテーマだからこそ、「もっと深く知りたい」「これを自分たちの手で形にしたい」という内発的な意欲が湧き上がり、行動への意味づけが深まるのです。
これは、将来子どもたちが社会の課題を「自分ごと」として捉え、解決に挑む起業家精神の、まさに原点となる経験です。
失敗を「他人のせい」にしない“納得感”の育て方
自己決定のもう一つの重要な効果は、行動の結果に対する「納得感」を強く育む点にあります。
自分で「こうしよう」と決めたことならば、たとえ結果がうまくいかなくても、「自分が選んだことだから仕方ない」と素直に受け入れ、「じゃあ、次はどうしよう?」とその経験から学ぼうとします。
一方で、他者に強制された行動の場合、失敗すると「あの人がやれって言ったからだ」と他責にしやすく、深い学びにつながりにくいのです。
キンダリーのプロジェクト型学習では、年度の初めに子どもたちが自分の興味に基づいて参加するプロジェクトを選びます。
そこから先も、小さな決定の連続です。
洋服屋プロジェクトでデザインが難航しても、自分たちで決めたデザインであれば、「どうすればもっと上手に描けるだろう?」「別の布で試してみようか?」と、自ら解決策を模索し始めます。
劇団プロジェクトでも、脚本の修正や配役、舞台装置の配置など、全ての決定を自分たちで行います。
この無数の小さな自己決定の積み重ねが、子どもたちの納得感を育み、「これは『自分たちの』プロジェクトだ」という強い当事者意識を生み出します。
もちろん、失敗はつきものです。
しかし、その失敗を自分の決定の結果として受け止めることで、子どもたちは他責にすることなく、自らの成長の糧へと変える力を着実に身につけていくのです。
「挑戦するマインド」に火をつける安全な失敗の場
そして、深い意味づけと納得感に支えられた自己決定は、子どもたちの「挑戦するマインド」、すなわちリスクを恐れずに新しいことに踏み出す勇気を育みます。
「自分で選んだのだから、最後までやり遂げたい」という強い気持ちが、困難への挑戦を後押しするのです。
キンダリーの活動は、まさにこの「挑戦」の連続です。
例えば、初めて針と糸を使う洋服屋プロジェクト。
最初は戸惑い、うまく縫えないかもしれません。
しかし、「自分で選んだ洋服屋だから、このデザインを完成させたい!」という強い気持ちが、地道な練習を続ける原動力となります。
私たちは、子どもたちが壁にぶつかった時、すぐに答えを与えません。スタッフは解決策を提示する代わりに、「どうすればできると思う?」「これまで何を試した?」と問いかけ、子ども自身が解決策を見つけ出すプロセスに伴走します。
この「自分で考えて、自分で解決する」という経験の積み重ねが、「自分ならできるかもしれない」という確かな自信、すなわち自己効力感を育むのです。
さらに、「失敗しても大丈夫」という心理的安全性が確保されています。
新しいことに挑戦し、たとえうまくいかなくても、「よく挑戦したね」「ここから何を学べたかな?」と前向きに捉える姿勢を大切にしているのです。
例えば、劇団プロジェクトで多くの子が同じ主役をやりたがり、意見がぶつかったとします。
そんなときも、スタッフは誰かを指名したりはしません。
代わりに「どうすれば、みんなが納得して、最高の劇になるかな?」と問いかけ、対話を促します。
子どもたちは話し合い、それぞれの役の面白さや重要性を発見し、時には「新しい役を作ろう!」と創造的な解決策さえ生み出します。
こうしたプロセスを経て、全員が納得できる役割(納得解)を見つけ出した経験は、意見の対立という乗り越えるべき壁を「チームの絆を深める学び」へと変え「もっと良くしたい!」という前向きな気持ちへと転換させるのです。
その集大成が、プロジェクトの成果発表会です。自分たちで考え、作り上げたものを大勢の前で発表することは、子どもにとって計り知れない緊張を伴う大きな挑戦です。
しかし、自分たちでゼロから作り上げたものだからこそ、「これをみんなに見てもらいたい!」という強い気持ちが湧き上がり、その緊張を乗り越える力となります。
そして、発表を終えた時の大きな達成感と、仲間と分かち合う喜びは、何物にも代えがたい成功体験として心に刻まれ、次の、さらに大きな挑戦への原動力となるのです。
このように、自己決定は、子どもたちが行動に深い意味を見いだし、納得感を持って取り組み、そして困難に直面しても諦めずに挑戦し続けるための重要な土台となります。
内発的動機から生まれた「やってみたい!」のエネルギーを、具体的な行動と持続的な挑戦へと繋げるために、家庭でも自己決定の機会を意図的に与え、そのプロセスを温かく見守ることが、子どもの「挑戦スイッチ」を入れる鍵となるのです。
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