話し合える親子関係へ「学校に行く準備が進まないとき」

自身も不登校を経験し、現在はカウンセラーとして1万人以上の事例に携わった今野先生による 子どもを受容する声がけの本。

親子関係

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 学校に行く準備が進まないとき

「学校に行けない子どもに伝わる声がけ」 P58

この会話のポイント

そろそろご飯だよ

何度か行き渋りがあると、朝の支度の段階で「またか」と思う日も出てくるでしょう。

そんなときに「今日はどうするの?」「行くなら早く支度しなさい」と促すのはNGです。

まだお子さんが「行きたくない」と言ってもいないのに、「今日も休もうか」と提案する必要はありませんが、「そろそろ起きたら?」「どうしたの?」と気遣えるといいと思います。

そっか、まだ起きたくないんだね

日本人は諸外国の人々と比べて、時間への意識が高いといわれています。

そういったこともあり、「まだ起きたくない」と言う子どもに対し、反射的に「そんなこと言ってないで、早くしなさい!」と返してしまう方も多いのではないでしょうか。

時間を意識させるのは悪いことではありませんが、特に不登校のスタート期にある子どもには、大きなプレッシャーになってしまうこともあります。

「そうなのね」と、まずは子どもの気持ちに同意し、受け容れる声がけをしてみましょう。

すぐに実践することは難しいかもしれませんが、普段からこういう言い方を意識したほうが、親子のコミュニケーションがスムーズにできるようになるかと思います。

じゃああと5分だけ寝る?その分、急いで準備できる?

「まだ起きたくないんだね」と子どもの言葉を受容した上で、「あと5分寝て、急いで準備できる?」と提案しているところがポイントです。

「そうする」と返事するにせよ、「急ぐのも大変だし、もう起きる」となるにせよ、選択権を子どもに与えていることになるからです。

そのことで、子どもには「自分がそのやり方を選んだ(決めた)」という責任感が芽生えます。

「親に押しつけられた」と感じないため、自発的な行動を促すことにもつながります。

なお、「あと5分だけ寝て、その分、急いで準備しようか」という「Let's(誘い)」の言い方もありますが、その場合は少しニュアンスが変わります。

「子どもの気持ちを受け容れた上で、譲歩している」という点では同じだと思われるかもしれませんが、子どもからすると「誘導されている」と感じてしまうケースもあるからです。

微妙なニュアンスの違いではありますが、「自分が決めた」という意識をもたせるには、提案や選択権を与える声がけのほうがおすすめです。

親にできること

普段から「しっかりした子に育てよう」という思いが強い親御さんほど、時間に対しての意識も厳しい傾向にあります。

「まだ起きたくない」とお子さんが言っていても、「それじゃ学校に遅れちゃう」「朝ご飯も食べなきゃいけないのに」「私も仕事が......」など急ぐ理由で頭がいっぱいになってしまう親御さんもいるでしょう。

「遅刻したら大変!」と先回りして子どもの服や持ち物を準備したり、「早く、早く」と、とにかく急かしたりすることもあるかもしれません。

普段から「学校行くのめんどくさいな〜」「毎日休みが続けばいいのにな〜」といった言葉が出ている子どもであれば多少話は違ってくるのですが、わりと厳しくしつけをしていたり、親子の会話が少なかったりという家庭で「起きたくない」という言葉が子どもから出てきたとすれば、「あれ、ちょっといつもと違うな」と受け取ったほうがいいかもしれません。

もしかしたらそれは不登校のサインということも。

不登校のサインとは、“子どもが苦しんでいるサイン”でもあります。

さらに、普段から「親が厳しい」と感じていたり、言葉数が少なかったりする子どもの場合、こうしたサインを発することすら“かなり高いハードル”だと思っていることが多いようです。

高いハードルを越えて言葉にできたお子さんの勇気にも、ぜひ目を向けてあげてください。

親御さんは「なんとか学校に行かせなければ」とあせってしまいがちですが、この段階で親があせって急かせば急かすほど、子どもはどんどん追い詰められてしまいます。

私もそうでしたが、この時期の子どもは神経が非常に研ぎ澄まされており、親の心の状態が手に取るようにわかるものです。

「自分が起きないことで親が困っている」と感じることがプレッシャーにもなってしまいます。

だからこそ、急かすのではなく、自主的に行動することを見守るようにしてみませんか?

そのためには、まず「子どもが起きられないと言っている」という事実を受け容れることが大切です。

その上で、「子どもが突然『起きたくない』なんて言ったら、あせっちゃうよね」と自分に癒やしの言葉をかけながら、自身の心を安定させることを意識してみてください。

心が安定し、余裕が生まれると、少しずつ「親はこうあらねば」「子どもはこう育てなければ」という思い込みが緩み、気持ちがラクになっていくと思います。

今野先生のひと言

「もし準備が遅れて遅刻をしたとしても、それは子どもの問題」と割り切るように心がけて、この段階では見守るようにしましょう

PROFILE

不登校・引きこもり専門カウンセラー

今野 陽悦

10代の頃に不登校や引きこもりを経験し、どうにかして現状を変えたいとカウンセリングを受講しながら、自身もカウンセリングや心理学を学ぶ。そこでさまざまな手法と出会い、多くの人の愛と助けで徐々に心の葛藤から解放される。 引きこもり時代の自分と同じように悩んでいる人の力になりたいと、自身の経験を通じて、20歳の頃から不登校・引きこもりなど子どもの問題を専門としたカウンセラーとして活動を開始。子どもの気持ちに寄り添い、一緒に解決していくカウンセリングスタイルが話題となり、のべ1万件を超えるカウンセリングを行う。 カウンセリング活動のかたわら、無料メールマガジン「不登校・引きこもりのお子さんを持つ親御さんのための親子関係講座」(購読数約7万人)を発行し、不登校・引きこもりの改善に向けての情報発信にも力を入れている。
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