“子どものストレスサインに気づく”子どもの脳を発達させるトレーニング

発達が気になる、不登校、すぐキレる……どんな子も「生活環境の改善」で劇的に変わります!

発達/発育

発達脳科学者。小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。
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脳を発達させるトレーニング 子どものストレスサインに気づく

子どものストレスサインに気づく

ストレスが起こった時には、「気分」、「身体の反応」、「行動」、そして「考え」の4つに反応が起こります。とくに変化に気づきやすいのは、「身体の反応」です。

ストレスが起こった時にもっとも変化するのが「ホルモン」と「自律神経」です。自律神経は、心拍や呼吸、筋肉の緊張や消化管の活動などを大きく変える働きがあるので、自分の身体の状態を常に自己モニターしている大人であれば、自分が「ストレスにさらされている状態」であることにはすぐに気づくはずですし、ストレスが重症化・慢性化してネガティブな思考が前頭葉を支配していることにも、早期に気づけるはずです。

ところが、子どもは脳の機能や身体感覚が未発達なため、自分で不調に気づくことができにくく、たとえ気づいたとしてもそれを言語で表現することがまだできません。

大人は、常に子どもを客観的に観察し、少しの変化に気づくことが大切です。

例えば、小児科の臨床において一番大切なのは、養育している親が報告する「子どもの機嫌」です。

毎日いっしょに生活して観察している親だからこそ、大好きなおもちゃを出しても、興味を示さないで部屋の隅で寝転がっていることや、いつもならまっ先に完食するはずの大好物のから揚げを1個残したことなどで、親は子の不調を察知します。親ならではのモニターカです。

それなのに、子どもがだんだん大きくなるにつれ、親は次第に子どもをモニターすることを怠けがちになります。その分、子どもに「自己モニターカ」が備わっていればいいのですが、往々にしてそういう親のもとでは子どもの脳はきちんと育ちません。

以前、成田は、「1週間前から急に布団から起き上がれなくなり、学校にも行けなくなった」という高校生を外来で診たことがあります。

お母さんに話を聞くと、「この子は、ずっと元気に勉強も部活も頑張ってきて、まったく問題がなかった」と言います。

しかし、詳しく聞いてみると、その高校生は次のような生活をしていました。

「学校は毎日休まず行き、放課後は陸上部で夜6時半まで活動して帰宅するのが7時半、その後塾に行ってさらに勉強を頑張り、夜の11時に帰宅してから夕食を食べ、お風呂に入って寝付くのが午前2時か3時ごろ。週末は部活の試合や練習があって、たまの休みでも友だちから遊びに誘われると、断らずに出かけていた」

本人に話を聞くと、「頑張れといつも親から言われていたし、これが普通だと言われていた。本当は半年前から頭が痛いことや部活をやっていてケガが多くなったことは気づいていた。でも、サボることは許されないと思ったから頑張っていた。友だちから誘われて断ると、次から誘ってもらえなくなり、友だちを失ってしまうのでは、という考えが頭を占めてしまい、どうしても断れなかった。本当はとてもしんどかった」と言って泣きました。

ペアトレ

親は、子どもを客観的によく観察し、ストレスサインを見つける努力を怠ってはいけません。そのためには、まずは親が自分自身の軽微なストレスサインに気づけるようになることです。ストレスに対して、適切な対処法を備え、実践できるように練習しておくことです。


ストレスを上手にコントロールできるようになったら、その方法を子どもに教えます。親子がお互いに観察しあい、ストレスで大きな身体症状が出たり、慢性のネガティブな思考が前頭葉を支配してしまう前に軽減させるようにします。

PROFILE

成田奈緒子:発達脳科学者。小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。
上岡勇二:臨床心理士・公認心理師・子育て科学アクシススタッフ。

成田奈緒子・上岡勇二

成田奈緒子(なりた・なおこ)
発達脳科学者。小児科医・医学博士。公認心理師。
子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。
1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。
臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

上岡勇二(かみおか・ゆうじ)
臨床心理士・公認心理師・子育て科学アクシススタッフ。
1999年、茨城大学大学院教育学研究科修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。
また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。
2014年より現職。著書は『子どもが幸せになる正しい睡眠』(共著、産業編集センター)『ストレスは集中力を高める』(芽ばえ社)。

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