偏見が子どもに与える影響
日々の質問が子どもの未来を育む「子どもの日常を知的な刺激で満たしていますか?」#01
教育
偏見が子どもに与える影響
子どもの人生に影響を与える親の「偏見」
悪口は3人を殺す。 悪口を言う者、言われる者、聞く者。
――― ミドラシュ
ある日、幼児教室で、講師を務める知人を待っていたときのことです。
とある幼稚園児が非常に衝撃的なことを話していました。
子どもたちがレッスンを終えて送迎バスで帰ろうとしたところ、 送迎バスの中年ドライバーが遅れたそうなのです。
すると、ある子が友だちに「歳を取るとろくなことしないね」と言ったというのです。
私はショックでしばらく動けませんでした。
講師である知人に話したら、知人はさらに驚くべき話を聞かせてくれました。
「それ、その子の母親がよく言ってるんだよ」
親から見れば、習い事や塾に通っているのは子どもですが、実際に教室に来ているのは子どもではなく親だともいえます。言葉や文章をはじめ、子どものすべての態度から親の姿がそのまま見えるからです。
幼い子どもが「ろくなこと」という言葉を使いこなすのは難しいでしょう。
では、なぜ知っているのでしょうか?
おそらくその子の親は家で、年老いた自分の親などと電話で話した後、無意識のうちに「歳を取るとろくなことしないね!」と吐き捨てるように言っているのでしょう。
その言葉を覚えてしまった子どもは、似たような状況に遭遇し、迷うことなく口にしたわけです。そうやって子どもは、自分でも気づかないうちに非難ばかりする大人になっていくのです。
この本で最初に言いたいことは、お父さん・お母さんが自分の言語習慣をきちんと認識し、それが子どもにどんなに大きな影響を与えているのか考えた上で、お子さんに身につけてほしい言葉を自身の生き方を通して示してほしいということです。
大人は子どもの前で、すぐに感情や意思を表現します。
もちろんお手本となるような言葉もありますが、時には「そんなことを言って大丈夫?」と思うほど偏見に満ちた言葉を吐くこともあります。
「よく覚えておいて。あの人は悪い人よ」
「そんな子とは遊んじゃダメ」
誰にでも偏見はあります。
問題は、親が「あなたもそうしなきゃダメ」と偏った考えを子どもに押し付けるところから始まるのです。
そのような態度は、子どもという生まれたばかりの小さな可能性を、自分の思い通りに動く奴隷と見なしているのと同じです。
子どもの感情と態度を親の思うままに動かしたり、勝手に決めたりしてはいけないのです。
親の偏見を日々聞かされている子は、その家庭の中では良い子に育ちます。
少なくともその家庭の「ルール」さえきちんと守れば問題が起きないからです。
でも、家の外ではどうでしょうか。
世の中にはたくさんの意見が存在します。
ある所で「悪い人」といわれている人が、別の所では「いい人」といわれることもありますし、また別の場所では「将来が楽しみな人」と考えられることもあります。
その人に対する見方と、その人が置かれている環境によって、評価が異なってくるからです。
しかし、偏見という「確定の言語」を聞いて育った子は、親に押し付けられた考え以外に別の考え方をすることができません。
「それだけが正しい」と思い込んで生きているからです。
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