「感情リテラシー」をはぐくむ――不登校やいじめと「感情リテラシー」
「自分の感情に気づく」「他者の気持ちを想像する」「気持ちを言葉で伝える」といった、感情に関する基礎的な力を育むことは、単に感情の安定をもたらすだけでなく、今の時代を生きる土台となる。世界でも注目のSEL(社会性と感情の学習)と感情リテラシーの育て方について第一人者が丁寧に解説。
学校
繰り返しになりますが、感情リテラシーとは、自分の感情に気づき、理解し、表現し、調整する力を意味します。
感情は自然に言語化されるわけではなく、言葉にする力は、学習によって育まれるものです。
不登校の原因はさまざまですが、「葛藤なき不登校」と呼ばれるケースもあり、不登校の子どもたちが抱えている多くの気持ちを引き出すのは、決して容易ではありません。
その背景には、子どもたち自身が、自分の抱えている気持ちを整理して言語化することができず、困っているという状況があります。
ここ20年ほどの不登校児童・生徒の中には、学校に対して強い嫌悪感や不安感を示さない、「行かないこと」に困っている感じがない、本人の中であまり葛藤が見られない、といったケースが増えており、これを「葛藤なき不登校」と呼んだのです。
たとえば、感情の気づき(自己認識)の弱さが挙げられます。
子ども自身が、「行きたくない」気持ちの背後にある「不安・恐怖・悲しみ・怒り・孤独」を言語化できず、「体が動かない」「寝られない」といった身体症状に出やすくなるのです。
別の見方をすれば、感情を表現すること(自己表現)が難しいとも考えられます。
「行きたくない」と言葉に出して言うことに罪悪感を持ち、無言や沈黙で訴えているという解釈です。
怒りや反抗という形でしか気持ちを伝えられないケースもあり、大人に「わがまま」「甘え」と誤解されやすいところがあります。
あるいは、感情を調整することが難しいということ(感情調整力の欠如)があるのかもしれません。
小さな不安や葛藤がエスカレートしてしまい、「もう無理」「行けない」という決壊点に至ります。コーピング(対処スキル)が未熟で、ストレスに対して「回避」という選択しか取れなくなる可能性も考えられます。
周囲の感情リテラシー不足も影響しているかもしれません。
教師や保護者側の視点から考えてみましょう。
まず、子どもの「サイン」――無口・沈黙・遅刻・不安定な表情など――に気づけていないことです。
教師や親側が、咎める、裁くなどの感情を持っていると、どうしても子どもの感情を否定したり、軽視しがちです(例:「そんなことで休んでどうするの?」)。
そうして子どもの気持ちを見逃してしまうことが起きてしまいます。
学校に行けない子どもを前に、すぐさま「正論」や「励まし」を繰り出すことで、逆に追い詰めてしまって、その実、子どもの声にしっかり耳を傾けていないことが考えられます(例:まだ、話を聞いてあげていないのに、「行けば楽しくなるよ」「みんなも頑張ってるよ」と繰り返す)。
大人自身が、子どものことへの心配や焦りに心を支配されてしまい、子どもの気持ちを理解して共感することができずに、追い詰めてしまう方向に行動しやすいものです。
ですが、よい結果を望むのであれば、いろいろなツールや対応法を習得して、こうした事態になることを予防したいものです。
不登校は「行動の問題」ではなく、「感情の訴え」であると考えてみるのが一つの方法かもしれません。
子どもの「心の声」を聴く力=感情リテラシーを、大人も子どもも身につけることが、不登校支援の本質です。
法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。
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