本を味方に!『読書は他者の気持ちを知る力を高める』
結局、読書にハマらなくても、動画メインでもOK!「読書の効果」を無理なくいいとこ取りしよう。「頭がよくなる」だけじゃない、探究心・知的好奇心・思いやり・友達や周囲の大人とのコミュニケーション力が身につく読書のすすめ。
教育
子どもに本を読んでほしいけれど、どんな本をどう選べばいいかわからない…。そんな悩める保護者に贈る、読書教育の決定版が登場。読書が脳や言語能力に与える真の影響を、最新の研究を基に解説します。
猪原敬介著『科学的根拠(エビデンス)が教える子どもの「すごい読書」』から一部転載・編集してお届けいたします。
読書は他者の気持ちを知る力を高める
「共感する力」を測定する「目から心を読む」テスト
「共感」とは「相手の感情や経験に寄り添う」ことを意味する言葉です。
誰かと信頼関係を築き、友人となったり、一緒に仕事をしたりするためには、ある程度の共感力は欠かせません。
相手の感情や、これまでどういった経験をしてきた人なのか、という部分をまったく無視してしまっては、うまくやっていけるはずがありませんから。
そういった意味で、共感は対人コミュニケーションの基礎といえるでしょう。
高知工科大学の日道俊之さんらが日本語版を作成した共感性を測定するための質問紙では、例えば、
●「自分は思いやりの気持ちが強い人だと思う」
●「友達のことをよく知ろうとして、その人からどのように物事が見えているか想像する」
といった項目に、「まったく当てはまらない」から「非常によく当てはまる」のいずれかで回答します。
こうした質問紙は「ああ、共感性の高さを測っているなぁ」と納得しやすいですね。
しかしこれは「あなたは共感性が高い人ですか?」と直接聞いていることに近く、実際にその人がうまく共感できる人かどうかはわからないわけです。
そこで心理学の研究では、正解/不正解のある「テスト」がよく用いられます。
中でもよく用いられるのが「目から心を読む」テストです。
「目から心を読む」テストは、人の顔の目元部分だけをくりぬいたモノクロ画像を見その人の感情を「いらいらした」「嫌みな」「不安な」「友好的な」といった4つの選択肢から選んで当てるテストです。
あくまでも「共感」という心の働きの中の、「他者の気持ちを知る力」だけを測定したものではありますが、「共感力」を構成するひとつの要素としては確かに存在するものでしょう。
物語は他者の感情を理解する力を向上させる
さて、読書は「他者の気持ちを知る力」を高めるのでしょうか。
物語の読書について、答えは「YES」です。
2013年、アメリカのデヴィッド・カマー・キッドさんらは「文学作品を読むことは他者の心を推測する力を向上させる」と題する論文を発表しました。
この研究で行われた実験手続きはシンプルです。
参加者は、次の2つのグループにランダムに割り当てられました。
●何も読まずに「目から心を読む」テストを行うグループ
●「文学小説」を読んでから、「目から心を読む」テストを行うグループ
結果として、「目から心を読む」テストのスコアは、
●文学小説グループ>何も読まないグループ
でした。
2つのグループへの参加者の割り当てはランダムなので、もともとの「他者の気持ちを知る力」は2つのグループでほぼ等しいと考えられます。
キッドらのこの研究は非常に注目されて、数多くの研究者たちが同じ結果を再現しようとしたり、類似の実験を行ったりしました。
この結果を疑問視する論争も起こりましたが、行われた膨大な研究を再分析して、より堅実な結論を出す「メタ分析」が行われた結果、次のようなことがいえるとわかりました。
●キッドらの実験のような「物語の読書が共感力を高める」効果は、実在する
●「物語」と「説明文」を比較すると、物語を読むほうが共感力を高める効果が大きい
●物語「読書」と物語「視聴」を比較すると、読書のほうが共感力を高める効果が大きい
●ただし物語読書が共感力を高める効果はそれほど大きいとはいえず、読書習慣との関係の強さは、「言語>知能>共感」であった
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