障がいを持つ子どもを育てる人のためのライフデザイン――子育てのストレスをマネジメントする
発達障がいの子を社会人になるまで育ててきた著者が試行錯誤してわかった、自分も子どもも優先する こう考えればよかったんだ!を全部。
発達/発育
子どもに障がいがあると、親は子育てのストレスを感じやすくなります。
多くの場合、ストレスの原因は子どもの障がいにあります。
そのため、完全に解消することは難しく、付き合い方を考えていく必要があります。
そこで大切なのがセルフマネジメントです。
セルフマネジメントの基本は、ストレスが自分の許容量を超えないように日常的に予防すること。それでも超えそうなときは、早めにストレス対処行動をとることです。
子育てをしていると、そのときの状況によって気分転換の方法も限られてきます。ですから、ストレスに対処する方法は複数準備しておいたほうがいいでしょう。
ストレスをマネジメントする方法には「ストレスを予防する習慣」と「ストレスを解消する行動」があります。
「予防」は日常的にストレスが溜まらないようにする習慣、「解消」は溜まったストレスを軽くする行動です。具体的には、次のようなことです。
・ストレスを予防する習慣:アンガーマネジメント、コーピング、コミットメント
・ストレスを解消する行動:マインドフルネス、散歩、体を動かす、家から離れて過ごす
ストレスを予防する習慣
●アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、怒りの感情を上手に管理して付き合う技術です。
その中で、子どもの行動に怒りを感じてぶつけてしまいそうなとき、取り入れたいのが「6秒ルール」です。
怒りの感情は6秒経てばピークを越えると言われています。
怒りを感じたとき、6秒間だけ我慢すると、一時的に怒りは静まります。
怒ることが少なくなれば、それだけストレスも溜まりにくくなります。
子育てに怒りの感情は付きものなので、一度はアンガーマネジメントの本を読んでおくことをおすすめします。
これを理解することで子育てへの向き合い方や、負担の感じ方は変わります。
●コーピング
コーピングには「対処する」という意味があります。
避けられないストレスには、対処する行動をあらかじめ準備しておく、というのがその考え方になります。
方法は、コーピングリストを作成して、その内容を生活の中になるべく多く取り入れるというものです。
コーピングリストには、気分転換になりそうな行動を、箇条書きにしていきます。
特別な行動だけでなく、日常でのちょっと気分がよくなることでかまいません。「旅行に行く」「スポーツをする」から、「深呼吸をする」「空を見上げる」「コーヒーの香りを嗅ぐ」などの些細なことまで、なるべくたくさん書いていきます。
あるテレビ番組で、宇宙飛行士の古川聡さんが、宇宙で活動するために作成したコーピングリストを公開していました。
その項目数は40を超えていたように記憶しています。
宇宙という過酷な環境でのミッションには強いストレスが伴います。
そのため、コーピングリストの数もそれだけ必要だったのだそうです。
毎日の生活の中に、気分転換になる行動をたくさん取り入れることで、ストレスは溜まりにくくなります。
コーピングリストを作成したら、なるべく多くの行動を生活に取り入れていきましょう。
●コミットメント
気分転換が必要だと自覚していても、行動に移そうとすると疲れて動けなかったり、面倒になったりしてしまうことがあります。
そんなとき、スマホいじりや暴飲暴食などの手軽だけど不健康な行動をとってしまいがちです。
その時間だけは心地よくても、すぐに気分は戻ってしまい、ストレスは解消されません。
大切なのは、疲れる前のまだ元気で適切な判断ができるうちに、健全な気晴らしになる行動をスケジュールに入れてしまうことです。
旅行が気晴らしになるのなら、なるべく早めに宿を予約してしまう。
おしゃべりが気晴らしになるのなら、先に友人とランチの約束をしてしまう。
そうすることで、気晴らしの行動が先送りにならないように確約できます。
このように、自分の行動を事前に決めてしまい、選択肢をなくして行動をコントロールすることをコミットメントと言います。
避けられないストレスには、解消するスケジュールも事前に入れ込んでおくことが大切です。
最低でも月に1回は、楽しみなイベントをコミットメントしておきましょう。
ストレスを解消する行動
・マインドフルネス
マインドフルネスとは、「今ここにある」という意識に集中する行為です。
自分の身体感覚を意識することで、ネガティブな感情にとらわれている意識を体に取り戻し、心を落ち着かせます。
その簡単な方法は次のとおりです。
①椅子に腰かけて両足を床につけ、背筋を軽く伸ばす。
②両目を閉じてゆっくり呼吸する。
③3~5分、自分の呼吸に意識を集中させる。
ほかのことが頭に浮かんできたら打ち消して、意識を呼吸に戻すようにする。
④ゆっくりと目をあけて心身の状態を確認する。
私はストレスに弱く、小さなイヤなことも忘れられない性格です。
そこで就寝前にマインドフルネスを行って気持ちを切り替え、しっかりと眠り、翌日にネガティブな感情を持ち越さないようにしていました。
小さなストレスが積み重なると、大きなストレスになります。マインドフルネスを生活に取り入れると、ストレスが小さいうちにリセットできます。
・散歩(自然に触れる)
散歩して日光を浴びたり、緑が多い公園で休んだり、自然を感じられる場所で過ごすことは、ストレス緩和につながります。
そういう環境に住んでいなかったり時間が限られていたりする場合、いつもは車で行くスーパーまでの道のりを歩いてみたり、通勤の際に一駅分を歩いてみたりするだけでもかまいません。
空の色合いを確かめたり、路上の樹木の様子を少し観察したりするだけでも自然の営みを感じられ、気分が変わります。
天気のいい日に、子どもと手をつないで歩けば、親子それぞれの気分転換にもなります。
私は、息子とキャンプや川遊びに行くことでストレスを解消できていた時期があるのですが、今はそういった機会がめっきりなくなって困っています。
・体を動かす
体を動かしているとき、意識は身体感覚に集中しているので、悩みごとは頭から消えます。
運動後は心地よい疲れや爽快感が得られ、心身はリラックスし、ストレスも解消されます。
体を動かすと体力がつくので、疲れにくくなります。子育てには体力もいるので、心身の余裕をつくるのにもぴったりです。
運動の効果は続けることで得られるのですが、続けるのにも工夫が必要です。
誰かと一緒に取り組んだり、自分にご褒美を用意したりするといいでしょう。
有酸素運動はストレス緩和に効果があると言われていますが、生活習慣病や認知症の予防にも効果があります。
体力に余裕があるなら、スローペースのジョギングやインターバルトレーニングもいいでしょう。
・家から離れる
ストレスを受けている人や場所から物理的に離れることも、ストレスの軽減になります。
気分は環境からも影響を受けるので、環境を変えると気分も変わります。
自宅から離れた場所で過ごす時間を持つことは、気分が変わるだけでなく、日常を俯瞰で見つめ直すことにもなります。
その場所は、近所のカフェでもいいし、一人旅でもいいでしょう。
作業療法士
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