精神科医が教える 折れない心の育て方――子どものありのままを受け入れる方法
ふにふに生きる力が武器になる!レジリエンス=心の回復力は、親が与えられる最高の贈り物!強くしなやかな芯が育つ。
親子関係
子どものありのままを受け入れる方法
まずは「そのままの自分」を受け入れる
子どもに大人気のディズニー映画「アナと雪の女王」で、エルサは、ありのままの自分を好きになってという内容の歌を歌っています。まさにこれが、レジリエンスを育む基礎の一つ、「自己受容」です。
ありのままの自分とは、たとえば「勉強ができる」「かけっこが速い」「妹や弟の面をよく見ている」といった、“何かができる自分”ではなく、長所や短所も含めた“自分丸ごと”を指します。
どんな自分も丸ごと受け入れて、大切にすること。
それが「自己受容」です。
そのためには、自分に目を向けて、自分のことを深く知る必要があります。
たとえば、誰かを好きになったら、その人のことをすごく知りたくなりますよね。
そして、いろいろなコミュニケーションを取りながら、少しずつ知っていく。
「この人はこういうときに幸せを感じるんだな」「こういうことがあると、しんどくなってしまうんだな」と、よく見ているからこそ、わかってくるのです。
でも、私たちはみんな、自分に対してはあまり目を向けていなくて、自分のことをあまり知りません。
「私は何を追い求めて生きているのか」「私は何があったら幸せなのか」。
それがわかっていれば、誰に何を言われようと、ゆらぐことなく自分を信じていられます。
私たちが他人の言葉に過剰に反応したり、傷ついたり、流されたりしてしまうのは、自分のことをきちんと知らないからなのです。
誰かに何か言われても、ゆらがない。
だって、自分が自分を認めていて、このままの自分でいいと思えるのだから。
自分が自分を心地いいと思えるのだから。
自分の中に軸のような、どっしりとしたものがあると、他人の言葉に一喜一憂せず、ゆらがない自分でいられます。
この軸がまさに、「アイデンティティ」と呼ばれるものです。
多くの人が、他人の言葉によって自分の輪郭をつくりがちですが、そうではなく、自分の価値観に基づいた自分の言葉で、自分の輪郭を築いていく。
それが正しいアイデンティティの形成です。
小学生くらいの子どもはまだ、アイデンティティの形成までは至らない年齢ではありますが、自分がどういう人間かを掘り下げて理解していく過程にいます。
なかなか子ども自身では自分を知っていくのはむずかしいので、保護者が一緒に考えていくことが大切です。
ありのままの自分を好きでいられると、自分で自分を大切にしようという気持ちが生まれて、ピンチのときに誰かに助けを求めたり、頼ったりすることもできるようになります。
レジリエンスはよく木にたとえられるという話をしました。
木そのものの折れにくさや倒れにくさだけではなく、添え木やフェンスを立てて、折れにくくするのも大切な自分の守り方です。
自分ひとりだけで困難に立ち向かわなくてもいい。
いろいろな困難がある人生の中では、他者に助けを求めて解決することも、重要な戦い方なのです。
自分のことが好きでいられないと、自分は助けを求めていい存在ではないと思い込んで、素直に他者へ頼ることができません。
それに、何か失敗したときに、それだけで自分のことを嫌いになってしまう可能性もあります。
「自分は自分の一番の味方」。そう信じられると、失敗を恐れません。
だからこそ、子どものうちに保護者と一緒に自分を知り、自分を丸ごと受け入れて、自分を大切にする土台をつくっていきましょう。
それがそのままレジリエンスを育む土台となり、子どもの大きな武器になっていくのです。
子どもの自尊感情を育てるために大切にしたいこと
ありのままの自分を好きになるには、自分をよく知ることに加えて、子どもにとって最も身近な存在である保護者から大切に扱われ、受け入れてもらう経験がとても重要です。
そうした経験を積み重ねて、「自分は大切にされる価値がある存在だ」「安心を与えられる価値がある存在だ」と感じることができるようになって、自尊感情が育まれていくのです。
子どもの自尊感情を育むために、保護者は何を意識すればいいのでしょうか。
一つは、子どもが何かを決定する権利を奪わないこと。自分自身の「こうするべき」を優先して、「ああしなさい」「こうしなさい」と子どもに押し付けてしまうのは、やめましょう。
守るべき存在ではあるけれど、子どもはひとりの自立した人間です。
大人はみんな、子どもより大人の考えが正しいと思い込んでしまいがちですが、それが本当に正しいのかなんて、わかりようがありません。
誰かに迷惑をかける、誰かを傷つける、その子自身が傷ついてしまうといった選択はもちろん止めなければなりませんが、そうではない場面で大人が行動を決めてしまうのは、子どもが尊重されていないのと同じこと。
大人に尊重されなければ、子どもが自分のことを好きになるのは、むずかしいですよね。
選択の権利を尊重することで、子どもは「自分には選ぶ権利がある」と思えます。
それをやった結果、物事をうまく進めることができたら、自分の能力に自信を持てるようにもなります。
勝手に親がすべて決めてしまわずに、子どもの選択の機会を増やしてあげるようにしましょう。
精神科専門医。産業医。公認心理師。
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