精神科医が教える 折れない心の育て方――「安心・安全」の種をまく

ふにふに生きる力が武器になる!レジリエンス=心の回復力は、親が与えられる最高の贈り物!強くしなやかな芯が育つ。

親子関係

精神科専門医。産業医。公認心理師。
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子どもの心いっぱいに「安心・安全」の種をまく

レジリエンスを育てるには、さまざまな困難に遭遇しても、子ども自身が「自分は大丈夫だ」「きっと乗り越えられる」と心から思えることが重要です。

その根拠となるのが、自分が持っている“資源”です。

資源というと、何かをつくるための材料などをイメージしがちですが、個人にとっての資源とは、その人自身の能力や性格、そばにいる人、生きている環境そのものを指します。

人はそれぞれ、「個人内資源」と「環境資源」を持っていて、その質や量によって、「これがあるからきっとなんとかなる」「この人は自分を絶対に支えてくれる」というように、安心・安全を感じたり、自信を持てたりします。

これが、レジリエンスを育む種となるのです。

「個人内資源」とは、性格や能力、考え方などの個人の資質のうち、ポジティブに働くものを指します。

たとえば、楽観的で何事も前向きにとらえることができれば、逆境に打ち勝つ武器になり得ますし、誰とでもすぐに打ち解けられるコミュニケーションカは、困ったときに助けてくれる“人のネットワーク”を広げることができます。

「環境資源」とは、家族や親族、友人や先生など自分の味方でいてくれる人、心が落ち着く家や居場所といった、自分の外側にあるポジティブな要素を指します。

たとえば、何でも相談できる保護者がいれば、悩みや心配ごとを抱えてしまったときでも一緒に前向きな解決策を考えることができますし、大好きなものに囲まれた自分の部屋があれば、ストレスを受けたときでも安心して気持ちを休めたり切り替えたりすることができます。

自分がどんな資源をどれだけ持っているかがわかっていると、つらいことや大変なことに遭遇しても心が折れることなく、立ち向かったり、上手に回避したり、解決策を導き出すことができるのです。

なかでも、保護者が提供してあげられるのは、絶対的な味方という存在と安心できる居場所です。

「どんなことがあっても、私はあなたの味方だよ」と、子どもに伝え続けてください。

とはいえ、唐突にそんなメッセージを伝えるのはむずかしいと思う人もいるでしょう。

その場合は、日々のコミュニケーションの中で小出しにするのがおすすめです。

テレビを一緒に見ていていじめの話題などを目にしたら、「私なら、こんなふうに助けるから、悩む前に話してね」というように、目の前の出来事を踏まえて話すのです。

避けたいのは、家庭内で子どもにストレスを与えることです。

親同士が頻繁にケンカをしたり、不機嫌になって八つ当たりをしたりといった環境は、子どもにとって安心できる場所でなくなってしまいます。

職場などでの「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」という言葉が話題になっていますよね。

不機嫌さを前面に出すことはまわりにいる人の心理的安全性を奪います。

不機嫌にしていれば子どもは言うことを聞きやすいですから、ついついやってしまうかもしれませんが、レジリエンスを育むうえではマイナスになりかねません。

精神科医が教える 子どもの折れない心の育て方 P37

家族で考え解決する経験が「乗り越える力」を育てる

環境資源の中でも、とくに家族の存在は子どものレジリエンス育成に大きな影響を与えます。

心理学者のデイヴィッド・ウォルシュは、家族が潜在的な資源として個人を支え、逆境や困難に家族がともに取り組むことで、家族自体の力も強化されていく、ということを述べています。

わかりやすく言うと、家族は一つの相補的な共同体で、何か問題が起きたときに個人ではなく共同体として一緒に乗り越えていくことが、本人にも家族にも重要だということです。

レジリエンスはよく木にたとえられます。

木が折れやすいか、そうでないかは幹の太さだけでは決まりません。

添え木があったり、フェンスを立ててくれる人がいたりすれば、さらに折れにくくなるでしょう。

もし横にもう1本の木があれば、強い風が吹いても風の力が分散されてダメージを減らせます。

壁になったり、壁をつくったりしてくれる人がそばにいるか。

一緒に並び立ってくれる仲間がいるか。

そういった環境資源は、レジリエンスの必要条件だと私は思います。

何も、自分ひとりだけで困難に立ち向かわなくてもいいのです。

助けを求めることだって、大切な生き残り戦略です。

木の幹を太くするように、個人内資源を増やしたり強くしたりするのはそう簡単ではないし、限界があります。

だからこそ環境資源をたくさん持っておくこと、それに気づいていることが大切になってきます。

とくにいちばん身近な家族が誰よりも自分のことをわかってくれて、いつでも味方でいてくれて、何があっても支えてくれると信じられることほど、子どもにとって心強いものはありません。

PROFILE

精神科専門医。産業医。公認心理師。

藤野 智哉

1991年生まれ。精神科専門医。産業医。公認心理師。 秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。 学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医師の道を志す。 現在は精神科病院勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。 障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を著作やSNSで積極的に発信しており、メディアへの出演も多数。 主な著書に『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)などがある。
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