「自分で考える子」に育つ!――競技歴に合わせた接し方・教え方を
全国各地から指導の依頼が殺到!NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』出演の少年野球指導者が語るスポーツで子どもを伸ばす9の導き方
しつけ/育児
学年や年齢ではなく、競技歴に合わせた接し方・教え方を
初心者の子がチームに入るとき、保護者には必ずこう言っています。
「野球の力をその子の年齢や学年で判断しないでくださいね。“野球歴”で考えてください」
私はどんな競技であっても、英会話のように早いうちに始めたほうが有利だと思っています。
多賀少年野球クラブの場合はまず幼児教室(または初心者の体験入部)という導入部分があり、そこで「捕ること」「投げること」という技術の基礎を身につけてもらいます。
そして「普通に練習しても危なくない程度の技術が身についた」と判断できたら導入部分を卒業し、2年生以上が行う通常の練習に交ざっていく。
そんな流れなのですが、数年後を見てみるとやはり、技術レベルは2年生以上になってから野球を始めた子よりも、幼児や1年生から経験を積んでいる子のほうが高いことが大半です。
もちろん例外もあって、野球経験ゼロでも運動神経の良い子、自分で考えて取り組める子などがグングン伸びていくケースもあります。
ただ、私たちは時間を見つけては座学で野球の知識を教える時間を設けており、小さいうちから試合の考え方などもしっかりと伝えています。
そうなってくると、野球をちゃんと理解しているかどうかという部分でも競技歴によって差が出てきます。
ある年の秋、2年生チームが練習試合を行いました。
1試合目は野球の実力が高い子たちで組んだAチーム、2試合目はそれ以外の子たちで組んだBチームです。
1試合目では、私が打席の立ち位置や「ストライクボール」の判断などを細かく求め、子どもたちはそれを実行しようとしていました。
彼らはやはり早いうちから野球を始めていて、保護者の声を聞いても「もっと上達してほしい」「いろんなことを教えてほしい」。
だから、選手としての育成をより重視したわけです。
一方で2試合目は、まだ野球歴の浅い子どもたち。
正直、野球の試合として成立しない可能性もあるレベルです。
ですから私はボール球だろうと、とにかくバットを振ったことに対して「ナイススイング~!」と褒め、試合を楽しませる雰囲気作りに徹しました。
低学年の練習試合では「3アウトを取るか、3点を取ったらチェンジ」などと点数も制限しているのですが、Bチームの試合前、私は保護者を集めてこう言いました。
「毎回3点取られてチェンジになるかもしれないけど、一切気にしないでくださいね。今はそれでいいんです。試合を経験して子どもたちが楽しむことが大切ですから」まだ2年生の段階で、すでにそうやって差が出るものなのです。
少年野球でよくあるのは、親が「3~4年生くらいになったらチームに入ればいいんじゃないか」と考えているケースです。
実際3~4年生で入ってきた子どもの保護者に、私は冒頭のように伝えるのですが、最初はみんな必ず「いや、子どもが野球を楽しくやってくれればそれでいいんです」と答えます。
ところが、やっていくうちに自分の子が同じ学年の他の子に追いつけないことが歯痒くなり、「もっと頑張れ」などとキツく当たる。
しかし、他の子だって頑張っている上にそもそも経験を積んできた土台があるわけで、そう簡単に差が埋まるはずはありません。
他チームから移籍してくる子の場合は「野球歴」を持っているので、ひとまず同じ学年に入れてレベルを見るところからスタートします。
ただ、それまでが完全に未経験なのであれば、4年生から入ろうが1年生から入ろうが「野球歴1年生」。
もちろん、その後の伸び率に個人差はあるものの、たとえば3年生で半年くらいしか経験していない子は、年長から入って1年半程度の1年生と技術レベルがあまり変わらなかったりもします。
入ってきたばかりの4年生であれば、幼児から経験している2年生のほうが上手かったりもするのです。
逆にいうと、野球が上手い子のほうも勘違いしてはいけないということです。
今はまだ蓄積してきた経験があるから周りの子よりも少しリードしているだけで、体の成長が止まり、みんながそれなりに経験を積んできた段階になれば、追いつかれてしまうこともよくあります。
野球を始めたばかりの子どもたちを見ていると、実は同じ学年の子との比較はあまり気にしていないように感じます。
きっと、一番気にしているのは親なのでしょう。
絶対にやってはいけないのは、「他の子みたいに頑張れないんだったら、もうやめなさい!」などと言って、親の感情で子どもからスポーツを取り上げてしまうこと。
もし子どもがスポーツを始めるのであれば、年齢ではなく競技歴で判断して、温かく見守ってほしいと思います。
少年野球指導者。
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