『AIは臨床試験を経ていない薬』──生成AI時代に親が手放してはいけない視点とは
不安な時代だからこそ、AIに丸投げせず『一緒に悩む』大人でいるために
インタビュー
『AIは臨床試験を経ていない薬』──生成AI時代に親が手放してはいけない視点とは
てつなぎ編集部
本日は慶應義塾大学言語文化研究所教授で、音声学・音韻論を専門とする言語学者である川原繁人先生にお越しいただきました。
今回のインタビューでは2025年10月に出版された『言語学者、生成AIを危ぶむ 子どもにとって毒か薬か』(朝日新書)についてお話をお聞かせいただこうと思います。
本書『言語学者、生成AIを危ぶむ』を書こうと思われた一番のきっかけから教えてください。
今回のインタビューでは2025年10月に出版された『言語学者、生成AIを危ぶむ 子どもにとって毒か薬か』(朝日新書)についてお話をお聞かせいただこうと思います。
本書『言語学者、生成AIを危ぶむ』を書こうと思われた一番のきっかけから教えてください。
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川原先生
直接のきっかけは、言語獲得について専門的に研究している妻と一緒に、ラジオを聞いていた時のことです。
子ども向けAIおしゃべりアプリの開発に関するニュースと、そのモニターユーザーの募集が聞こえてきて、詳細について考えているうちに「これは言語学の観点から慎重になるべきでは?」と2人で強い危機感を覚えました。
幼少期からAIとおしゃべりをさせることのリスクを、きちんと社会に問いかける必要があると感じたことが、本書執筆の大きな動機になりました。
子ども向けAIおしゃべりアプリの開発に関するニュースと、そのモニターユーザーの募集が聞こえてきて、詳細について考えているうちに「これは言語学の観点から慎重になるべきでは?」と2人で強い危機感を覚えました。
幼少期からAIとおしゃべりをさせることのリスクを、きちんと社会に問いかける必要があると感じたことが、本書執筆の大きな動機になりました。
てつなぎ編集部
具体的にはどのような危機感を抱きましたか?
川原先生
子どもの健全な発達にとって、幼少期からAIとおしゃべりさせてしまうことは良くないのではないか?というのは妻と私の共通認識でした。詳しくは本の中で解説していますが、そもそもAIの出力は、日本語と表面的に似ていても同じものではない、という懸念があげられます。たとえば、人間は音から学びますが、AIは主に文字から学びます。AIが学習に必要なデータの量も、人間が必要な量に比べて、桁違いに多い。ですから、学習データの質も量も、人間とAIでは全然違うのです。
てつなぎ編集部
ご家庭では、生成AIやおしゃべりアプリとどう向き合ってこられましたか。具体的なエピソードがあれば教えてください。
川原先生
私たちには小学生の子どもが2人いますが、小学生のうちはスマホは渡さない、という方針を夫婦で話し合って決めました。
iPadも基本的にはラジオやポッドキャストを聞く程度の用途にとどめていて、AIには直接触れさせていません。
小学生高学年くらいになると、すでにChatGPTを寂しいときの話し相手にしている子もいるという噂を、あちらこちらで聞きます。 ITリテラシーが十分にそなわっていない中で安易につかってしまうことが発達の観点からだけでなく、個人情報漏洩などセキュリティの観点からも非常に心配になりました。
自分の子どもには、AIの危険性などを丁寧に説明しています。 また、子どもにとって見本となる親自身のスマホとの付き合い方も重要だと考えていて、私は夕方以降はスマホを寝室に持ち込まず、リビングの端に伏せて置いて、子どもとの時間を優先するようにしています。 夕方以降は仕事メールを見ないと決めておくことで、結果的に子どもと向き合う時間が増えると同時に、心がざわつくような情報から距離を置けるというメリットを感じています。
iPadも基本的にはラジオやポッドキャストを聞く程度の用途にとどめていて、AIには直接触れさせていません。
小学生高学年くらいになると、すでにChatGPTを寂しいときの話し相手にしている子もいるという噂を、あちらこちらで聞きます。 ITリテラシーが十分にそなわっていない中で安易につかってしまうことが発達の観点からだけでなく、個人情報漏洩などセキュリティの観点からも非常に心配になりました。
自分の子どもには、AIの危険性などを丁寧に説明しています。 また、子どもにとって見本となる親自身のスマホとの付き合い方も重要だと考えていて、私は夕方以降はスマホを寝室に持ち込まず、リビングの端に伏せて置いて、子どもとの時間を優先するようにしています。 夕方以降は仕事メールを見ないと決めておくことで、結果的に子どもと向き合う時間が増えると同時に、心がざわつくような情報から距離を置けるというメリットを感じています。
てつなぎ編集部
子どもの発達段階を踏まえてスマホやAIとの距離を慎重に考え、ご自身の生活習慣まで含めてルールを実践されていることが、とても丁寧で一貫した姿勢だと感じます。 リスクを伝えつつ、「まず親がスマホとの付き合い方を示す」という姿勢は、お子さんにとって何よりの安心材料にもなっていきそうですね。
先生が「本書の中で、『ここだけはどうしても伝えたかった』というメッセージ」を選ぶとしたら、どのようなことになるでしょうか。
先生が「本書の中で、『ここだけはどうしても伝えたかった』というメッセージ」を選ぶとしたら、どのようなことになるでしょうか。
川原先生
一番大きなメッセージは、「AIは臨床試験を経ていない薬のようなものです。対話型AIが人間のメンタルに与える長期的影響は、まだまだ未知数です。そういう未知のナニカを、子どもに与えて本当に大丈夫でしょうか」という問いかけです。 生成AIを含む新しいテクノロジーが子どもの発達にどんな影響を与えるか、まだまったくと言っていいほど検証がなされていません。
それなのに、社会が「とりあえず子どもにも使わせてみよう」という空気になっているのではないか、そこに強い危惧を持っています。
もう一つどうしても伝えたかったのは、スマホやAIとのやりとりだと、視覚と聴覚に偏り、触覚を含む五感全体が発達する機会を損なうのではないかという懸念です。 言葉は耳で聞いて目で読むだけでなく、空気の流れを感じる触覚や他の身体感覚などとも深く結びついて、発達していきます。
そうした五感を使った体験が乏しいまま育つと、「何かが欠けた大人」になってしまうのではないかという問題意識があります。
それなのに、社会が「とりあえず子どもにも使わせてみよう」という空気になっているのではないか、そこに強い危惧を持っています。
もう一つどうしても伝えたかったのは、スマホやAIとのやりとりだと、視覚と聴覚に偏り、触覚を含む五感全体が発達する機会を損なうのではないかという懸念です。 言葉は耳で聞いて目で読むだけでなく、空気の流れを感じる触覚や他の身体感覚などとも深く結びついて、発達していきます。
そうした五感を使った体験が乏しいまま育つと、「何かが欠けた大人」になってしまうのではないかという問題意識があります。
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