子どものボキャブラリーを増やす「言葉がけ」

たった1割言い方を変えるだけ!

親子関係

教育家・見守る子育て研究所® 所長
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親御さんたちから、しばしば聞かれる悩みに「言葉がけ」の問題があります。

「どうしたら言うことを聞いてもらえますか?」

「こんなとき、子どもに何と言えば良かったのでしょう」

「注意しなくても、自ら進んで動くようになってほしいのですが・・・」

こんな相談をよく受けます。

「言葉がけ」と聞くと、大人はかける言葉のほうに注目しがちですが、実際には、子どもの心に届く言葉がけができている人というのは、「子どもの話を聞く」「子どもの様子を見る」ことに9割の力を使っています。

子どもをしっかりと観察したうえで、残りの1割で言葉を選んでいるのです。

なぜ、9割の力を観察 (「聞く」「見る」)に使うのか。

それは、同じ「なかなか始めようとしない」という場面でも、その子の「事情」によって、対応を変えなければならないからです。「やりたくない」のか、「やり方がわからない」のか、「単純にやるのを忘れている」のか、事情によって、かけるべき言葉は異なります。

ですから、まずは子どもの様子をよく観察して、子どもの表面的な行動や言動の裏にある事情を汲み取ることが大切なのです。

知っておくべきは「子ども」の事情

親御さんが何かを言葉で伝えたとき、お子さんが思うように反応してくれなかったとしたら、そこには必ず、子どもなりの「事情」があります。

ですが、子どもは自分の事情を言葉でうまく説明できないので、「黙り込む」「スルーする」「逆ギレする」といった形で反応します。それを大人が表面的に解釈して悪くとってしまうことで、いら立つのです。一方、子どもの反応の裏にある、彼らなりの事情がわかると、適切な関わり方ができるようになり、親の側がイライラをつのらせるといった事態が減っていきます。

こんなふうに言うと、なんだか難しいことが書いてあるように思われるかもしれませんが、本コラムでは、親御さんたちからいただいた実際の悩みにお答えしたり、わかってはいても、つい言ってしまいがちな「NGワード」について解説したりするなど、 身近な話題を引き合いに出して言葉がけのコツを事例を出しながら説明していきます。

口ごたえをしてくる

事例  イヤイヤばかりで対応に困る

「帰ろう」と言っても「まだ遊びたい」と主張。無理に帰らせようとすると、嫌がって地べたに寝そべり大泣きし、かんしゃくを起こします。(2歳女子)

子ども

の事情

感じたこと、考えたことをどう伝えたらいいかわからない。

OK

ワード

「本当は、何て言いたかったの?」

かんしゃくを起こすのは「考える量」が増えている証拠

イヤイヤ期とは、「僕は、私は、こうなんだよ!!!」 と「自分をワカッテ、ワカッテ期」なんです。

本当は嫌じゃないのです。

だから、「そっかそっか、遊びたいんだね」といったん「受け止める」ことがポイント。

あなたの気持ちはキャッチしたよ、認めているよ、と伝えます。

「受け止める」だけでOKで、「受け入れる」必要はありません。

子どものかんしゃくで悩む方は結構多く、ご相談もよく受けます。

かんしゃくの原因について共通して言えるのは、お子さんが欲求や不安、戸惑いなど、自分の中にふくれ上がった感情を言葉でどう伝えればいいかわからないとき、怒るか泣くかしか術がないということです。

実は、激しいかんしゃくを起こすようになったり、その頻度が上がってきたりするというのは、「考える量」が増えている証拠です。

今までよりも考えることが増えてきて、それを周囲の人に伝えたい、わかってもらいたいのに、それが出せていないということです。

伝えたいものが心の中にたくさんある状態ですから、抑え込むのはよくありません。

「いつまでも怒らないの!」とやめさせようとすると、子どもはガス抜きができないので、かえってかんしゃくが長引いてしまいます。

こういうときは言葉ではなく、スキンシップによって子どもの気持ちを受け止めます。

手を握ったり、背中をさすったり、頭をなでてあげながら「どうした?」「うん うん」と、たとえ子どもの言葉が言葉になっていなくても、聞いてあげましょう。

落ち着いてから「本当は」を入れて質問する

そして、ここがポイントなのですが、子どもが落ち着いたあとに「本当は、何て言いたかったの?」と聞いてみます。

「本当は」を入れるのがコツです。

この「本当は」には「さっきは怒ることで表現していたけれど、落ち着いて言いたいことが整理できたら、言葉で言えていたよね。怒りたかったんじゃないよね」という気持ちが込められています。

子どもが「○○ちゃんがケーキのお話ししてた」などと、ぽつぽつ話し出したら、「そうか、だからケーキが食べたくなっちゃったんだね。うらやましかったんだね」などと、こちらが言葉を補ってあげます。

「じゃあ最初からそう言ってよ」と言いたくなるのはやまやまですが、そこはぐっとこらえましょう。

次に同じようなことがあったときのために、子どものボキャブラリーを増やすチャンスです。

ボキャブラリーが増えると、かんしゃくは減っていきます。

自分の感情を言葉で伝えることが上手になっていくので、自分でガス抜きができるようになるからです。

ですから子どものかんしゃくは何年も続くことはありません。

どうぞ安心してください。

学童期になってからも、いじけやすかったり、気持ちの高ぶりを抑えられず、かんしゃくを起こす子も中にはいます。

そうした子には、「受け止めているから大丈夫だよ」「慌てなくても大丈夫だよ」などと伝えて安心を渡してあげるといいでしょう。

PROFILE

教育家・見守る子育て研究所® 所長

小川大介

教育家・見守る子育て研究所® 所長 1973年大阪出身・京大法卒。
学生時代から大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。 子ども本来の持ち味を見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。
塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動。
受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力育てと親子関係の築き方に関するアドバイスに定評がある。著書25冊以上・メディア出演700回超・講演多数。
現在は「“見守る子育て”を日本の常識にする」をミッションに掲げ、人の隠れた才能を見つけ引き出す技術体系「見守る子育て」の普及に務めている。

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