子どもが算数を嫌いになる前に!――「つまずき」はいつ始まるのか?
算数は「センス」「先取り学習」が必要?子どものテストの成績に一喜一憂…「うちの子、算数が苦手」のお悩みを解決するヒント!食卓、買い物、遊び…日常で手軽にできる親のサポートで、算数が苦手な子ほど、ぐんと伸びる!
教育
特別な教材や難しいトレーニングは必要ありません!おうちでの遊びや日常の会話の中から、子どもの「算数が好き!」は自然に育てていけます。本書は親子のコミュニケーションを楽しみながら、子どもが「できた!」と感じる瞬間を増やし、算数に自信を持てるようになるための、親の伴走ガイドとなる一冊。
たけ先生著書の『わくわくおうち算数』から一部転載・編集してお届けいたします。
「つまずき」はいつ始まるのか?
「算数って、いつごろからつまずきやすいですか?」
これは、小学校で教員をしていた頃、保護者の方からとてもよくいただいていた質問です。
算数に限らず、国語や理科、社会についても、同じような質問は本当に多くありましたが、特に算数については多かったように感じています。
たしかに、「我が子はいつごろから算数につまずくのか」がわかっていれば、家庭でも「ここからちょっと気をつけて見ていこうかな」と準備ができますよね。
お子さんの学びをサポートしていくうえで、皆さんにとってとても気になるポイントだと思います。
では、算数につまずき始めるのは、いつなのでしょうか?
実はこの問いに対する答えは、意外にもはっきりしています。
それは「子どもによって違う」ということ。
「え、それじゃ答えになってないじゃない!」と思われるかもしれません。
でも、だからこそ大切な視点が見えてきます。
試しに一度、インターネットで「算数 つまずく いつ」
などで検索してみてください。
「入学直後にすぐつまずいた」
「くり上がりのあるたし算で混乱した」
「3年生から文章題でつまずいた」
「9歳・10歳が“壁”と言われている」
など、さまざまな意見や経験談が出てくると思います。
それらを見てもわかるように、つまずき始める時期は本当に人それぞれなのです。
一概に「この学年から!」と断言できるものではありません。
「うちの子もいつか算数につまずくかも・・・・・・」と心配になるかもしれませんが、あらかじめ「この時期に注意していればOK!」という明確な答えはありません。
では、「子どもによって違うなら、前もって備えることはできないのか?」というと、決してそうではありません。
つまずきやすい単元は?
たしかに、お子さんがどこでつまずくのかを事前にピンポイントで当てることはかなり難しいことですが、各学年の学習内容の中で、「多くの子がつまずきやすいポイント」は存在します。
たとえば、1年生では「くり上がり・くり下がりの計算」、2年生では「時計や長さ・かさの単位」、3年生になると「わり算」や「文章題」、4年生以降は「分数」「小数」「割合」などが代表的な「つまずきポイント」としてよく知られています。
ここでつまずくと、次の学年、そして中学校になってからの数学の学習にまで影響することもあるため、家庭でできるちょっとしたサポートがとても大切なのです。
子どものつまずきを防ぐコツは?
大事なことは、「つまずく時期を予測する」ことではありません。
「つまずきの始まりを『見逃さない』」ことです。
たとえば、お子さんの宿題を見ていて「あれ、ここの計算にすごく時間がかかっているな」「何度やっても答えが合わないな」と思ったとき。
または、「文章題になるといきなり手が止まるな」「『これ、わかんない』と言ってすぐにあきらめる様子があるな」「なかなか算数の宿題に取り掛からないな」のような様子を見かけたとき。
こうした違和感が、つまずきのサインである可能性はとても大きいです。
子どもは、できなかったり間違えたりしたことは「恥ずかしい」「怒られるかも」と思って何も言わなかったり、逆にふてくされたりすることもあります。
また、大人が気づきにくいように、うまく隠してしまう子もいます。
だからこそ、そばにいる大人が「この子は、本当に理解できているかな?」という小さな違和感に気づいてあげることが大事なんです。
大人から見ると「え、こんな問題でつまずくの?」と思うようなところが、実は算数を苦手に感じ始める最初のきっかけだったりします。
そしてその小さなつまずきは、一度放っておくと、どんどん積み残されていってしまいます。そして、それが後になって大きな「苦手」になってしまうのです。
でも逆に、小さなサインに気づいて適切なサポートをしていけば、つまずきを積み残しにせずにすむようになります。
むしろ、ここをうまく乗り越えることで、「算数っておもしろい!」「やればできるんだ!」という成功体験につなげることも可能なのです。
また、高学年になると「自分は算数が苦手なんだ・・・」「自分には算数はできない」と決めつけてしまう子が増えてきます。こうなってしまうと立て直すことがなかなか難しくなってきます。
でもそこまでいく前に「あれ、この単元はちょっと苦手かも・・・」の段階でフォローできれば、苦手にならずにすむことも本当に多いのです。
だからこそ、日頃からの「ちょっとした違和感」に、大人が気づけるかどうかはとても重要です。
「我が子がいつからつまずくか」は、どれだけ算数に詳しい研究者でも予測できません。
でも、「つまずき始めたサイン」に気づくことは、毎日そばで見守っている保護者の皆さんだからこそできることです。
そのタイミングを見逃さないこと。
これが苦手を生まない、一番のポイントです。
学校で「算数が苦手」が生まれる瞬間
断言します。子どもが「算数って苦手かも・・・・・・」と感じ始めるきっかけは、たいてい「学校」で生まれています。(・・・・・・学校で長年働いていた私が言うのも少し気が引けますが・・・・・・)
もちろん、「学校が悪い」という話ではありません。
学校には当然学校のよさがあります。
ただ、「苦手の芽」が生まれる場面や環境が学校にはあることも事実なのです。
わからないところがあっても子どもが質問しづらい
原因の1つが学校の授業スタイルによるものです。
学校では、多くの場面で「一斉授業」が行われています。
先生の指導により、クラス全員が同じ内容を、同じペースで学んでいくスタイルです。
これは、たくさんの子どもたちに効率よく学習内容を届けるにはとても優れた方法です。
ただし、1人でも「ちょっとわからないかも・・・・・・」と感じた子がいても、授業は待ってくれません。
手を挙げて「わかりません」と言える子ばかりではありませんよね。
質問できないまま時間が過ぎ、「まあいいか」と先へ進んでしまう。
そしてこの「わからない」が積み重なっていくうちに、気づけば「算数って苦手かも・・・・・・」と感じるようになってしまうのです。
算数は「積み上げ式」の学習
さらに、算数という教科の特性も、つまずきにつながりやすい理由の1つです。
算数は、社会や理科とは違い、「積み上げ」の教科とよく言われます。
一つひとつの単元が、前の学習の上に成り立っているのです。ですので、どこかの学習を理解できないままに積み残してしまうと、後の関連する単元の学習を理解できないということが起こります。
たとえば、社会なら「平安時代」の学習内容を忘れていても「江戸時代」の単元についてのテストで点を取ることは可能です。
しかし算数ではそうはいきません。
3年生で初めて学ぶ「わり算」がわからなければ、その後に出てくる「あまりのあるわり算」や「小数のわり算」も当然理解できず、つまずいてしまう可能性が高くなります。
少し前の単元にあった「わからなかった」「できなかった」が、後の学習で大きな壁となります。そして後から取り返すのが本当に大変になってしまうのです。
「取り返しきれなかったつまずき」が苦手意識につながっているケースがとても多いのです。
文章を読まずに解くくせがついてしまう
さらにもう1つ。
私が学校で教えていて、見過ごされやすいが、でも実は苦手を生む上で非常に影響していると感じていたのが「教科書の単元構成」によるものです。
小学校の算数は、基本的に「たし算の単元」「ひき算の単元」など、演算ごとに分かれて学ぶスタイルが基本となっています。
特に1・2年生でこの傾向がとても強く、学校のテストでも上部分に「たし算」や「小数のかけ算」などと明確に書いてあるはずです。
この構成だと、子どもは「今はたし算の勉強だから、文章題でも式はたし算だろう」と無意識に判断してしまいます。
つまり、文章をしっかり読まずに「とりあえず文章に出てきた数字を順番にたせばいい」といったように、考えることなく解くクセがついてしまうのです。
そして低学年のうちは、このように考えなくともテストで点数がとれてしまうということが起こるのです。
その良い点数を見て保護者もその頃は安心します。
「うちの子、算数は大丈夫みたい」と。
ところが、3年生・4年生になると話は変わってきます。
たし算か、ひき算か、かけ算か、わり算か。
どの計算を使えばいいのかを、文章から考えて判断しなければいけない問題が増えてきます。
特に高学年では「割合」「速さ」など、多くの子どもが苦手と感じる単元でそのような問題が多くなっていきます。
このとき、低学年で「考えずに解く」スタイルに慣れてしまっていた子どもたちは、急に文章題が解けなくなってしまうのです。
「うちの子、急に文章題ができなくなったんです」
「文章題で、いつもてきとうに式を作って間違えるんです」という相談は本当によく受けてきました。
でもそれは、子どもの力が急に落ちたわけでも、サボっているわけでもありません。その背景にはこうした学校の単元構成による「考える力を育てるタイミング」がなかったことが関係している可能性が高いのです。
考えずに解けていたのに急に解けなくなる。
大人からは「ちゃんと考えなさい」と言われるけれど、そもそもの考え方がわからないために問題が解けずに終わる。
またはてきとうに式を作って間違える。こうして算数の苦手は生まれていくのです。
このように、「一斉授業の限界」「積み上げ型という教科の特性」「単元構成」など、いくつもの要素が重なって、子どもは知らず知らずのうちに「算数が苦手かも・・・・・・」と感じてしまうのです。
ここまで読んで「じゃあ学校の教育ってだめなの・・・・・・?」
と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、決してそうではありません。
学校は、子どもが社会に出ていくための土台をつくる、とても大切な場所です。
勉強だけでなく、友達との関わり方、集団生活のルール、自分を表現する力など、あらゆる経験を学校で積んでいます。
先生たちも日々、目の前の子どもたちに基礎学力をつけようと、一生懸命に取り組んでいます。
それでも、すべての子どもに完璧な対応をするのは、どうしても難しいのが現実です。
そしてその結果「苦手」「つまずき」が生まれていくのです。
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