元教員・子育て専門コーチが伝える!つい言ってしまうその言葉「勉強しなさい!」を手放したとき
「こうしたほうがいいよ」「あとで後悔するよ」「それ何の役に立つの?」と無意識に言ってしまうことはありませんか?思春期を乗り越え、一生ものの絆を育むための声かけの技術。
しつけ/育児
「あなたのためを思って」その言葉、逆効果になっていませんか?本書は、良かれと思った声かけが子どものやる気を奪うメカニズムを解説。親のコントロールを手放し、子どもが自ら動き出すための関わり方を伝授します。
潮田 学著書『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』から一部転載・編集してお届けいたします。
「勉強しなさい!」を手放したとき
ご紹介するのは、Kさんというお母さんのお話です。
Kさんが悩んでいたのは、「子どもがまったく勉強しない」ということでした。
Kさんのお子さんは15歳の男の子。
高校受験が近づいているにもかかわらず、本人にはなかなかやる気が見られない。
机には向かわず、スマホを見たり、のんびり過ごしていたり。
その姿を見るたびに、Kさんの心はざわつきました。
「このままで、本当に大丈夫なの?」
「入試まであと○日しかないのに」
気づけば、毎日のように怒鳴っていました。
「勉強しなさい!」
「この学校に行くには、これくらいの学力が必要なんだよ!」
「今頑張らないと、後で困るよ!」
きっと、言っていることは間違っていません。
むしろ、親として自然と出てくる
言葉だったと思います。
けれど、どれだけ伝えても、お子さんは動きませんでした。
「わかってる」
「あとでやる」
そう言うだけで、結局何も変わらない。
Kさんの中では、まるで時限爆弾のタイマーが、カチ、カチ、と音を立てているような感覚だったそうです。
時間だけが過ぎていく。焦りばかりが膨らんでいく。
そしてつい、「いつになったらやるの!」「このままじゃ、取り返しのつかないことになるよ!」と、声を荒げてしまう。
そのたびに、お子さんは黙り込みながら親を睨みつけ、親子の空気は重くなっていきました。
ステップ①その背景にある信念・価値観を見つける
丁寧に見ていくと、Kさんの中にはこんな思いがありました。
「勉強しないのは怠けていることだ」
「学力がないと、この先、生きていけない」
「親が導かなければ、子どもは間違った道に進んでしまう」
そして、さらに対話を深めていくと、その信念・価値観を身につけることなった、Kさん自身の幼少期の経験につながっていきました。
Kさんは、小さい頃から、「成績がいい子」でした。
テストでいい点を取ると、親は喜んでくれた。褒めてくれた。認めてもらえた。
でも逆に、思うような結果が出なかったときには、どこか冷たい空気を感じていたそうです。
だからいつの間にか、「いい成績を取ることが自分の価値である」そう思うようになっていました。
勉強ができることや成果を出すことが、自分を守るための武器となり、自分の存在価値を支える土台になっていたのです。
だからこそ、わが子が勉強しない姿を見ると、「このままでは危険!」「大変なことになる!」という不安や恐れが湧いてきていたのです。
ステップ②その信念・価値観をゆるめ、本当の願いに戻る
Kさんは、そこで初めて気づきました。
「私は、自分が勉強で認められてきたから、この子にも同じ道を求めていたんだ」
「勉強ができることは私にとって命綱だったんだ」
まずは、そのことを責めずに受け止めました。
「悲しかったよね」「できない自分も、ありのままの自分を愛してほしかったよね」。
そうやって、自分に寄り添っていきました。
そして、自分に問いかけました。
「本当に、いい学校にいくことがこの子の価値を決めるの?」
「この子には、優しさがあるじゃないか。それで十分じゃない?」
少しずつ、信念を揺さぶっていきました。すると、その奥にあった本当の願いが見えてきました。
「自分らしさを大切にのびのびと生きていってほしい」
「自分の人生を、自分で選べる人になってほしい」
第一志望に合格してほしいわけではない。
偏差値の高い学校に行ってほしいわけでもない。
本当は、この子が自分の足で、自分らしく、自分の人生を歩いていけること。
それを願っていたのです。
ステップ③本音ベースで伝え直す
ある日、Kさんはお子さんに声をかけました。
「ねえ、何か困ってることある?」
お子さんは、少し驚いた顔をしました。
「別に」
「そうだよね。急に言われても、びっくりするよね」
少し間を置いて、Kさんは続けました。
「お母さんね、これまでずっと『勉強しなさい』って言ってきたけど、本当は、あなたらしく、自分で自分の道を選択して生きていける人になってほしいと思ってる」
「どんな学校に行くかより、自分で考えて決められることのほうが大事だなって思った」
「だから、進進路も、勉強も、あなたが決めていいよ」
「必要なら、一緒に考える」
「でも、決めるのはあなた」
その言葉を聞いて、お子さんはしばらく黙っていました。
そして、ぽつりと、「・・・・・・行きたい学校がある」と、言ったそうです。
それは、初めて聞く言葉でした。
それから少しずつ、お子さんは自分で勉強の計画を立てるようになりました。
言われたからではなく、自分で決めたから。
自分で考え、自分で選び、自分で頑張る。
それはまさに、自立のはじまりでした。
結果として、第一志望には届きませんでした。
けれど、Kさんは言いました。
「もう、それでいいと思えたんです」
「この子は、自分の人生を歩いていける」
「私は、この子の育つ力を信じられるようになりました」
子育てコーチ/教育者。
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