中学受験のプロが伝える!――親と子の“感情のトリセツ”

受験家庭からの信頼度ナンバーワン! 「中受保護者が今いちばん相談したい人」と大人気の“声教の後藤さん”による初の著書!

教育

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辛い受験生活を、親子の絆を深める「かけがえのない経験」へ。多くの受験生家族を支えてきた著者が、過酷な状況でも平常心を保ち、子どもの力を最大限に引き出す関わり方をわかりやすく解説します。
後藤 和浩著書の『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』から一部転載・編集してお届けいたします。

親と子の“感情のトリセツ”

「勉強しなさい」と言いたくなったら

親御さんはみな、お子さんの豊かな未来を願って中学受験に取り組んでいるはずです。

にもかかわらず、中学受験のために親子関係にヒビが入ってしまっては、元も子もありませんよね。

前節の通り、子どもは「受験生である前に小学生」で、「子どもなりに頑張っている」もの。

ですから親の側は努めて冷静に、温かく見守りたいところですが・・・・・・。

「早く勉強しなさい!」

「こんな点を取るなんて、合格する気があるの!?」

「やる気がないなら中学受験(塾)なんてやめなさい!」

つい、こんなふうに言いたくなってしまったことはないでしょうか。

あるいは、もし言ってしまったことのある人がいたら、教えてください。

それを言われた子どもは、発奮して頑張ってくれたでしょうか?

‥‥‥残念ながら、そうはなりませんよね。

それどころか、互いにヒートアップして、親子喧嘩に発展するかもしれません。

親に対して不信感を募らせたり、心を閉ざしたりしてしまうと、子どもは弱音を吐いたり頼ったりする先を失ってしまいます。

そうなっては中学受験どころの話ではありません。

腹が立ってひとこと言いたくなる気持ちはよ〜くわかるのですが、そこはぐっとこらえましょう。子どもをやり込めたところで、得られるものは何もありません。

そういった場合のアンガーマネジメントとしては、怒りの感情がこみ上げてきたら一瞬我慢して「時間」と「空間」をあけてみることが有効です。

時間は十数秒でも構いませんし、空間も別の部屋に移動するだけで効果があります。

とにかく感情の波が少し引くだけでも、冷静に考え直せるようになるはずです。

キレてしまったあとの‥‥‥子どもへの「謝り方」

‥‥‥と、かく言う僕も、息子を傷つけてしまった経験があります。

ある単元について、本人は「しっかり勉強した」と言っていたのに、テストでは全然点数が取れていませんでした。

それでついイラッとしてしまい、「『勉強した』と言ってできるようになっていないならやっていないのと同じだ!」なんて言ってしまったのです。

落ち着いて考えてみれば、小学生は忘れっぽい生き物ですから、一度や二度の学習で定着するわけがありません。

それにもかかわらず、理屈で押してしまったわけです。

今思い返しても、本当にかわいそうなことをしたと心が痛みます。

翌日の朝一番。息子と顔を合わせるなり、「昨日は悪かったね、言い過ぎた」と短く謝りました。

こういうときは言い訳無用。謝りの言葉自体も短く、謝るまでの期間も短く。

とにかく謝罪の意思を示しました。

息子としては「許さないぞ」と思っていたかもしれませんが、謝るくらいしか僕にできることはありません。

偉そうに言っておいて翌朝すぐに謝るなんて、少々きまりの悪い思いをしましたが、だからこそ、「もう同じようなことを言わないようにしよう」と、自分への戒めになりました。

親だって人間ですから、思わず強い言葉が口から飛び出してしまうこともあるでしょう。

そんなときは、できるだけ早いタイミングで謝ることをおすすめします。

きっと次からは感情のブレーキをかけることができるようになりますよ。

叱るよりも「認める」言葉を

感情に任せて「怒る」のは良くないにしても、「叱る」ことが必要な場面はあるのでしょうか?

僕は、基本的なスタンスとして、中学受験においては「子どもを叱ったほうがいいタイミング」はないと考えています(あくまで“中学受験においては”ですが)。

仮に、模試や塾のテストの結果を隠していたり、塾の先生に言われたことを黙っていたりするようなことがあっても、です。

嘘をつかれたり隠されたりすると、親は悲しくもなりますし、腹も立つでしょう。

でも、「なぜそんなことをしたのか」の背景と、そのような行動を取った子どもの気持ちを想像してみてほしいのです。

“なんとなく”中学受験に向かっていく子はたくさんいます。

“なんとなく”なのに、遊びたい気持ちを我慢して、塾に行って勉強するのはなぜでしょうか。

そこには、「親に行けと言われたから」だけでなく、「親にほめてもらいたいから」という気持ちも少なからずあるのではないでしょうか。

勉強して良い成績が取れれば、親は嬉しそうにほめてくれる。

でも、そうでなかったらがっかりさせてしまうかもしれない。

だから、嘘をついたり隠したりする・・・・・・。

そんな健気な気持ちを思うと、「叱るときはちゃんと叱りましょう」なんて簡単には言えません。

逆に考えると、以前に親御さんが強く叱った経験が、「隠す」「嘘をつく」といった行動を引き出してしまった可能性もあるかもしれません。

もし、明らかに子どもの気が抜けていたり、塾の宿題をいいかげんにやっていたりして、ひとこと言いたくなったら。

叱りつけるのではなく、子どもと話をしてみましょう。

「どうしたの?」と声をかけてみてください。

「疲れた」「もう勉強したくない」「つまんない」などと子どもが返してきたら、「そうなんだね」と、ひたすら話を聞いてあげてください。

子どもが言ってくることに対して、「解決しよう」「結論を出そう」と考える必要はありません。ただ「頑張っているね」と聞いてあげればいいのです。

安心して弱音を吐くことができれば、それだけで子どもはまた頑張れます。

子どもの勉強姿をどんどん写真に撮ろう

僕のスマホには、子どもたちが受験勉強をしている様子を収めた写真がたくさん残っています。

写真のアプリで「○年前の今日」といった具合に表示されてくると、今でも見入ってしまいます。

「こんなこともあったなあ」「頑張ったなあ」と、なんとも言えない懐かしい気持ちであの頃を思い出します。

当時の僕は、勉強をしている子どもの姿を愛おしく思い、何の気なしに折々に撮影していただけでした。

でも今思うと、これって親の心を整えるためにも有効かもしれません。

というのも、写真という形で「子どもの頑張り」を可視化できるからです。

受験生活のさなかは、どうしても目の前のことに精いっぱいになってしまうもの。

親御さん自身が不安にさいなまれたり、子どもに対して負の感情がわいたりしてしまうこともあるでしょう。

そんなとき、子どもが頑張って勉強している写真を眺めてみれば、「こんなに頑張っているんだよね」と、気持ちも少し落ち着くのではないでしょうか。

それこそ、子どもがスポーツや音楽なんかの習い事をしていれば、親はチャンスと見るや何枚でも写真を撮るものですよね。

中学受験は、ボールや鍵盤が鉛筆になっただけです。

子どもたちは、大会や発表会ではなく、試験を目標にして頑張ることに決めたのです。

一生懸命目標に向かって努力している姿を、ほかの習い事と同じように、ぜひ、たくさん写真に撮ってあげてください。

なお、思春期に入り始めている子どもの中には、写真を撮られるのを嫌がる子もいます。

無理に顔を写そうとせず、後ろ姿を撮るなど、子どもが嫌がらない程度にしてあげてくださいね。

ちなみにうちの息子は、クリスマスに被り物をして勉強をしている姿の写真は喜んで撮らせてくれました。

季節のイベントはシャッターチャンスです!(笑)

中学受験は「やめられる」けれど

中学受験を進めるなかで、つらいことや悲しいことが続き、受験自体を投げ出したくなってしまうこともあるかもしれません。

僕が塾講師をしていたときも、2年間塾に通ったものの、6年生になってから「やっぱりきつい」とやめた子もいますし、精神的に少し幼いところのあった小4の男の子が、みるみるうちに生気を失って離脱したケースもありました。

お母さんのメンタルがまいってしまって、お父さんが「もう中学受験はやめることにしました」と言いに来たこともあります。

また、なかには、「上の子は受験したけど、下の子は性格的に向いていないのでやめておきます」と、家庭の中でもきょうだいによって受験する・しないを変えるケースもあります。

「やめる」という手段を取れるのは中学受験のいいところです。

中学受験は家庭や親子関係を壊してまで進めるものではありません。

ですから、いざというときには受験をやめる選択肢を検討するのもありです。

仮にそのような選択をすることになっても、誰も悪くはありません。

お子さんのことも、そして親御さん自身のことも責めないでください。

でも、せっかく「受験する」と決めて勉強し始めたのなら、最後までやり切って「いい経験」にしてほしいと僕は思っています。

結果はどうあれ、チャレンジ自体に価値があるのですからね。

では、大変なこともあるなかで、リタイアせずに最後まで完走するにはどうすればいいのでしょうか?

僕が考えるに、「親と子どもだけの世界にしない」ことが大切です。

中学受験は子どものものですが、子どもだけで頑張るものではありません。

親もしっかり子どもとタッグを組んで、子どもが安心できる環境を整える必要があります。

しかし、「親と子」だけの閉じられた世界では極端な考え方をしてしまいやすいですし、お互いにストレスをぶつけ合ってしまうこともあります。

そこで、客観的なアドバイスをくれる第三者―――「塾」をうまく活用するようにしましょう。

中学受験は個人戦ではなく、団体戦です。

「親」「子ども」「塾」。

この3者でしっかりとタッグチームを組み、「納得のいく合格」を手にし、中学受験を「いい経験」にするべく、ゴールテープを目指して走っていきましょう。

PROFILE
1976年生まれ、岩手県花巻市出身。東京都立大学人文学部卒業。塾講師を10年経験したのち、過去問出版社・声の教育社へ編集者として入社。編集部時代は毎年250校、500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。2024年、同社の社長に就任。私立中高や塾との交流を積極的に行い、講演会の講師も務めるほか、YouTube「声教チャンネル」で受験情報を発信中。保護者としてふたりの息子の中学受験も経験している。三度の飯より過去問が好き。
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