「いもうとのにゅういん」多面的に読むと深みが増す
読み聞かせの最中に親子で「やりとり」をするだけ!思考力・読解力・伝える力が伸びる -いつもの絵本が最高の教材に変わる!#03
教育
「いもうとのにゅういん」多面的に読むと深みが増す
いもうとのにゅういん
〜多面的に読むと深みが増す、子どもの成長を描いた物語〜
いもうとのにゅういん
筒井頼子作 林明子絵 福音館書店
筒井頼子さんは、本作をはじめ、『はじめてのおつかい』 『おでかけのまえに』(ともに福音館書店)など、情緒に訴えかける作品で知られる日本を代表する絵本作家です。
そして筒井さんの作品でタッグを組むのは、子どもの表情を絶妙なタッチで描き上げることで定評のある林明子さん。
林さんはご自身でも『こんとあき』(福音館書店)をはじめ、単著を多く手がけられる絵本作家です。
この作品の主人公はお姉ちゃんで、自分の大好きなお人形、「ほっぺこちゃん」で妹が遊ぶことを嫌がっています。
ある日、その妹が盲腸を患い手術をします。
お姉ちゃんは入院のお見舞いに何を持っていこうかと考えます。
手紙を書いたり、折り紙をつくったりするのですが、最後に妹がいちばん喜ぶであろうプレゼントを思いつく、というお話です。
友だちを連れて家に帰ってくる場面、妹を連れてお母さんがバタバタと病院に行く場面、雷のなかお父さんの帰りを待つ場面、お母さんと電話をする場面、お見舞いの品を用意する場面、プレゼントを渡す場面と、刻一刻と主人公の気持ちが変わりますので、子どもと一緒にそれを追体験していただければと思います。
ある程度読み慣れたら、今度は妹やお母さんの視点から読んでみましょう。
多面的に読み込むことで、物語の深みが増すはずです。
本書には「入院」や「手術」のように、幼児には難しいことばも出てきますが、子どもがわかるように説明を加えることで、子どもの語彙を増やすことができます。
なお、この作品は 『ANNA'S SPECIAL PRESENT』という題で英訳され、アメリカで賞を受けています。
描かれた姉妹の姿が、文化の違いを超えて訴えかけるテーマであることがうかがえます。
では、やりとりの例を挙げましょう。
何質問・答えの拡張・反復
たとえば、幼稚園から帰宅したあさえちゃん(姉)のバッグを指しながら、次のように、子どものことばを拡張、反復してみましょう。
子どもの生活と関連した質問
病気になった妹のあやちゃんを、お母さんが病院に連れていく場面では、
というようなやりとりをするといいでしょう。
「○○ちゃんならどうする?」という問いには、子どもに考える習慣をつけてもらう狙いがあります。
これは1人で本を読むようになったときにも必要な読書スキルです。
手術が無事に終わり、お見舞いに行くことになったあさえちゃんは、何を持っていこうかと考えます。
このシーンでも、次のように、物語の内容を自分自身の生活に置き換えて考えさせる質問をしてみましょう。
ストーリーを思い出させるやりとり
この絵本のクライマックスは、妹へのお見舞いを渡すシーン。
きれいにラッピングされたプレゼントを受けとる妹が描かれています。
この場面では、「このプレゼント、なんだと思う?」と、ページをめくる前にたずねてみましょう。
ストーリーを理解した子どもは、きっと答えることができるはずです。
大阪女学院大学・短期大学学長/大阪女学院大学国際・英語学部教授。Ed.D(教育学博士)。
同校で、本書のテーマである「ダイアロジック・リーディング」に出合い、研究を重ねる。
1998~2001年、フルブライト奨学生。専門分野は「言語習得」と「最新テクノロジーを活用する教育」。
現在は、「子どもとことば」「絵本を通してのことばの発達」を研究課題としており、絵本の読み聞かせにおける母子のやりとりや読み書き能力の発達に関する親の意識調査などを行う。
一方で、教員を対象とした「子どものことばを育てる読み聞かせ」ワークショップも行うなど、日本における「ダイアロジック・リーディング」の第一人者として普及活動に尽力している。
季刊絵本新聞『絵本とことば』(H・U・N企画)への寄稿や、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)に過去3度出演するなど、メディア出演多数。本書が初の著書となる。
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