6千人以上の親子をアドバイス!――命令口調は子どもの脳機能を低下させる
長男一橋大、二男慶大、三男東京藝大現役合格に導いたのは、10秒ほど寄り添うことがメイン。 従来の放任主義とは違うその方法を公開!
しつけ/育児
「もっと手をかけないと」と焦る必要はありません。3人の男の子の子育てと、6千人以上の親子をアドバイスしてわかったのは、「子育てで一番大事なことは、子どもにとって安心安全な『心の空間』をつくり、親が『ただ、いる』こと」でした。
本書は、一橋・慶應・東京藝大へ進んだ3兄弟の家庭が実践していた、エビデンスに基づく見守り力を伝授。たかもりくみこ先生の著書『ただ見守る科学的子育て』から一部転載・編集してお届けいたします。
子どもが思う通りにならないときこそ成長のチャンス
ある中学1年生の男の子SくんのママKさんが、相談に来られました。
「家でも学校でもずっと問題児なんです。何度言っても叱っても、なんともならないんです・・・・・・」。
お話を聞くと忘れ物が多く、発達障害かもしれず、勉強も嫌い。
成績も下から数えたほうが早い。宿題をしないときもしょっちゅう。
学校に呼び出され「家でなんとかしてください」と先生に言われたそうです。
周囲のママたちからの冷たい視線が刺さる。
誰にも相談できず、一人で抱え込まれ、どれだけ注意しても怒っても変わらず、ほとほと困っていました。
でも、さらにじっくり話を聞いていくと、Sくんの良さも見えてきました。
お友だちからはからかわれたりしているけれど、お友だちにひどいことやいじわるを言ったことはない。
お友だちに好かれている様子と、いつも大きく構えていてまわりから信頼もある姿が伝わってきました。
「中1という年齢の割に、なんだか、お坊さんのような懐の広さや安定感がありませんか?中学生で人に嫌なことを言ったりやったりしないことも、なかなかできることじゃありませんよね。だからお友だちにとても好かれているんですね。優しいだけでなく、器の大きさもありますよね。素敵なお子さんですね」
そう微笑んでお伝えすると、Kさんは涙ぐまれました。
「ずっと困っていたんです。本当に誰にもわかってもらえなくて。でも、その通りです。良いところがいっぱいあったはずなのに、私も見えなくなっていたし、学校でも全然評価されなかったんです。そして実は、私の亡くなった父がお寺のお坊さんだったんです。びっくりしました!」
その最初のご相談から数年後。
「あんなに勉強嫌いだった彼が、一流企業に就職が決まりました!それに誰もが知っている別の一流の会社からも『うちに来ないか?』とお誘いがあったんです」
そこから就職してさらに1年後。
「1年目なのにありえない抜擢人事で、本人が一番希望する部署に行けたんです。信じられません」
大切なのは一流企業ということではなく、SくんがSくんでいながらも、一流企業の人事担当の方から声をかけられるような魅力ある人、入社してからも高評価な仕事ぶりの人に育ったということではないでしょうか。
「家でも学校でも問題児」だったSくんに、何が起きていたのでしょうか?
彼は家でも学校でも大人に「否定」され「問題児」というレッレッテルを貼られていました。
何をやっても評価されず、良いこともなかったことにされる。
その中で誰かを痛めつけることなく、やりたくないことをしない、というのは、優しい彼の精いっぱいの抵抗だったのかもしれません。
そこに気づいたKさんは、それまで見えなかった彼の良さ、素晴らしさに目を向けるようになりました(肯定的注目)。
そして子どもとつながることに集中しました。
KさんのSくんへのまなざしが温かいものに変わり、「ただ、いる」ことができるようになるにつれ、状況も良くなっていったのでした。
子どもが思う通りにならないとき、反発するとき、どうしたらいいのかわからなくなったとき、親である私たちは、イライラし、怒りや無力感をおぼえます。まるで自分の人格を全否定されたような気持ちになることもあるでしょう。
けれども、それは「今までの関わり方を見直す時期ですよ」「何かを変える必要がありますよ」というサインなのです。
「自分の地雷」に気づくことが「幸せの招待状」
子どもは、「親の地雷」を踏む天才です。
その地雷は、罪悪感、責任感、自己否定や無力感、不足感、劣等感や痛み、「こうあるべき」という意地やこだわりの場合もあります。
大人になるまでに私たちが溜め込み、がんじがらめになり、本当の幸せを遠ざけてきたもの……それが地雷の正体です。
そこで必要なのが、「自分の地雷」に気づいて、優しく受け容れること。
まずは気づくだけで、気持ちがラクになるのではないでしょうか。
実は自分の地雷こそが「幸せの招待状」だったのです。
「罪悪感」「責任感」「自己否定」「無力感」「不足感」「劣等感」「痛み(心の傷)」「こだわり」「執着」「こうあるべきという思い込み」「観念や社会通念」「マイルール」など、それらに反する言動を誰かがしたとき、「思う通りにならない!」と反応が起きるのです(下の図1)。
Kさんはその後、自分と向き合い、気持ちを整えるようにし、お子さんとつながり続けた結果、関係がどんどん良くなっていきました。
SNSでも楽しい投稿が多くなり、家の雰囲気も良くなり、前は避けていた旦那さまとも仲良くなりました。
家族で笑って過ごす時間が増え、Kさん自身もやりたいことをスタートして大きく人生が変わっていったのでした。
その2年後、同じく勉強嫌いだったSくんの妹Mちゃんが高3で学年1位となり、晴れて第1志望の難関R大学の指定校推薦で合格。
「我が家からR大学に行く子が出るなんて!」とご夫婦で感動されていました。
Kさんの家庭がうまくいったのも、地雷に気づいて癒し、こだわりを捨てたからでした。
こだわりとは、子どもが自分の思う通りにならないことでした。
子育てが思うようにいかないと感じたとき、それはあなたが間違っていたからでも、ダメな親だからでもありません。自分の地雷を踏まれた場合が多いのです。
そこで「自分の地雷」に気づき、地雷から解放されることで、「これまでのやり方を卒業するタイミング」となります。
です。それは「未来」への大きな伸びしろとなります。
「我が子のために!」よりも「普通でいる」ほうを子どもは望んでいる
「私のせいでこの子がうまくいかないのかもしれない」
「ちゃんとできていない私が悪いのではないか」
そんなふうに、自分を責めてしまうことは、親になった誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
特に母親は、社会や周囲の目にさらされやすく、「母親なんだから」「ちゃんとして当然」といった無意識のプレッシャーを日々受けています。
SNSを開けば、丁寧で完璧に見えるママたち。
笑顔で子どもと遊び、仕事も家事もバランスよくこなしている投稿。
そんな理想の姿と自分を比べて、「私は全然ダメだ」と落ち込んでしまう。
そんな声をたくさん聞いてきました。人は自分を責めているとき、「心の空間」を失います。
でも、私たちは神さまではありません。
完璧な存在ではなく、手探りで日々を生きる一人の人間にすぎません。
親だってわからないことだらけで、失敗しながら、悩みながら、それでも子どもと向き合い続けています。
そこで、自分にこんなふうに問いかけてみてください。
「この責任感、本当に今のこの子のために必要?」
「それとも、親としてこうあるべきという思い込み?」
「この自分責め、何かいいことある?」
責任感は抱えすぎると『愛』より『重荷になります。子どもは、責任感でいっぱいの親の姿を望んでいません。
「あなたのために頑張っているのよ」と言われたら、誰でもきっと息が詰まるでしょう。子どもは“普通”にしてくれているほうがよっぽど助かるのです。
責任感を降ろすことは、子育てを放棄することではありません。
「ちゃんとしなきゃ」という重たいリュックを降ろすだけで、心がラクになり、笑顔が戻ります。
もし、あなたが今、責任を感じすぎているなら、そのたびに自分に言ってあげてください。「それはもう、必要ないよ」と。
そして、自分の「やりたいこと」と「やるべきこと」がぶつかったときは、子どもやパートナー、家族や友人に、心を開いて相談してみてください。
必ず、第三の道が見つかります。
きっと世界は、思っているより、優しいことを実感できるのだと思います。
命令口調は子どもの脳機能を低下させる
「早くしなさい」「ちゃんとしなきゃダメでしょ」「静かにして!」。
子育てをしていれば、当たり前のように使うこうしたフレーズたち。
そこに指示・命令・コントロールしようという強い思いが入ると「圧」になります。
「宿題はどう?」と優しく言っているつもりでも、心の中で「なんでやらないの?」「今すぐやりなさいよ!」と思っていたとしたら、それは「圧」となって子どもに届いています。
三男は、私からの「圧」を感じると、そのたびにいちいち大騒ぎ。
ぴょんぴょん飛び上がって怒り、断固拒否したり、「イヤだ!」と反発しました。
なので、それまで当たり前に使っていたこれらの言葉と圧をやめざるを得なくなったのです。
親や先生の指示命令通りに動いてきたお子さんたちの思春期や反抗期の様子を聞き、子ども自身にとっては良いこととはいえないという結論にもいたりました。
「圧」は、「心の空間」を小さくし、心理的安全性を失わせます。
心理的安全性が失われ、危険状態になることは脳の機能も低下させます。
東大生のアンケートでも「勉強しなさい」とうるさく言われなかった割合が多かったという結果も出ています。
「○○しなさい」はもう古いスタンダードなのです。
とはいえ、普通に子育てする中、子どもをコントロールすることは、親はついやってしまいます。それが一番、子どもを動かすのに簡単だからです。
「ちゃんとやったら、これを買ってあげる」「○○しないんだったら○○に連れて行かない」という何かで釣る、といったわかりやすいコントロールもあれば、子どもの言動が気に入らないと不機嫌になる、「はあ」と大きなため息をつく、わずかに眉をひそめる、というほんの些細な表情で無意識に、子どもをコントロールする場合もあります。
特に繊細なタイプの子どもの場合、親の表情に敏感に反応します。
親の不機嫌さや親の表情が少し曇っただけで、親の意に沿わなかった、間違ったことをしたことを悟ります。
あなたがもし、いつもどこか不安で、誰かの承認や正解を求めてしまうとしたら、子どもの頃にコントロールされていたのかもしれません。
一般社団法人コンシャスペアレンツジャパン代表。親子・家族関係の専門家/日本人唯一のDr. Shefali認定コンシャスペアレンティング&ライフコーチ。
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