30年以上不登校の相談を受けてきた心療内科医が伝える――不登校に関する「7つの誤解」

診察室や相談の現場で、このような相談を30年以上受けてきた心療内科医が 不登校児童が増える今、「これだけは伝えたい」と思ったことを一冊にまとめました。

学校

心療内科医。子育てカウンセラー。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。一般社団法人HAT共同代表。児童相談所嘱託医。
  • このお題をXでシェア
  • このお題をLINEでシェア
  • このお題をfacebookでシェア
  • コメントを見る

「不登校は甘えじゃない」。状況を焦らず見守る大切さ。昼夜逆転やゲーム漬けの日々でも、それは大切な回復への一歩。
30年以上親子に寄り添った心療内科医が、いちばん大切なことをわかりやすく伝える実践本。
明橋大二先生の著書『不登校からの回復の地図』から一部転載・編集してお届けいたします。

※コラムは出版社様の許可をいただき掲載しております。

もう振り回されない!不登校に関する「7つの誤解」

一方で、世の中には、不登校に対する誤解がまだまだあります。

どれも私からすれば、不登校の実態を知らない、あるいは不登校について息の長い支援をした経験のない人たちの先入観に基づく勘違いです。

親もついついそういう意見に影響されてしまいがちなので、ここでその勘違いの代表的なものを挙げて、実際はどうなのかをお伝えしたいと思います。

誤解1 不登校はわがまま

「不登校はわがままに育てたからだ」という意見があります。

しかし「わがまま」ということは、マイペース、ということです。人間、自分のペースで生きられれば、ストレスになることはありません。

自分のペースで生きられないからストレスを受けてしまうのです。

不登校になる子の多くは、むしろわがままにできない、人に気を遣って、無理をして、それで疲れてしまって不登校になる場合が多いです。

決してわがままに育てたからではありませんし、わがままを言っているわけでもないのです。

子どもには子どもなりに事情があり(疲れているとか友達関係で悩んでいるとか)、それを単に「わがまま」と片づけられてしまうと、子どもは「つらいことを話しても無駄なんだ」と思ってしまうでしょう。

誤解2 不登校はなまけ

「なまけだ」という意見もあります。

確かに、子どもが学校に行かずに家でごろごろしていたり、ゲームばかりしていたりすると「なまけている」と思いたくなる気持ちも分かります。

しかしなまけがもし原因なら、これはひとつの持って生まれた性格ですから、生まれたときからずっとなまけ者のはずです。

しかし不登校になる子は、不登校になるまでは決してなまけ者ではなかった、むしろ頑張り屋さんだったということも少なくありません。

そういう子どもがなまけざるを得なくなったということは、何らかの異変がその子に起きた、ということです。決してなまけ癖でなるのではないのです。

また、もし単なるなまけなら、子どもは学校を休んでいれば楽なはずです。

しかし多くの子どもは学校に行けないことで苦しみ、自分を責めています。

決してなまけているわけではないのです。

誤解3 不登校は甘え

「甘えているだけだ」という意見もあります。

しかし「甘え」はそもそも子どもの成長には大切なものです。

確かに、不登校になった後に、甘えが強く出てくる子どもはありますが、不登校になる前は、むしろ甘えずに頑張っていた子が多いです。

決して甘えから不登校になったわけではないのです。

誤解4 不登校は逃げ

「逃げだ」と言う人もあります。

そういう人は「嫌なことから逃げてはいけない」と言います。

確かに、困難なことを乗り越えることで自信になることもあります。

しかし本当に、命に関わるような場合は、逃げなければならないこともあるのではないでしょうか。

最近は全国で、熊に襲われた、という被害が多く出ていますが、熊に出くわしても「逃げてはいけない」という人はあるでしょうか。

学校でも、いじめなどは下手すると命に関わることです。

そういうことから逃げるのは、決して悪いことではなく、むしろ命を守る行動です。

誤解5 不登校は心が弱いから

「心が弱いからだ」と言う人もあります。

「もっと強くなれ」と言う人もあります。

しかし、熊に出くわして、立ち向かうことだけが、本当の強さと言えるでしょうか。

戦いでも、前進するだけでなく、退却することが本当の強さだ、ということはいくらでもあります。

状況が悪化しているのに無謀にも戦い続けて全滅するよりは、いったん退却して、態勢を立て直してからまた立ち向かうことでクリアできることもあるはずです。

人間、ときには退くことが必要な場合もあるのではないでしょうか。

誤解6 勉強についていけなくなる

「勉強についていけなくなる」これも親にとっては心配でしょう。

しかし、心が疲れた状態では、勉強しようとしても頭に入りません。

ポリヴェーガル理論でも、凍りつき反応が起きているときには、思考力も意欲も失われると説いています。

むしろしっかり休養して、元気を回復すれば、多くの子どもは集中して勉強するようになります。そうすると、勉強の遅れを取り戻すことも、そんなに難しいことではありません。

実際、高校を卒業する頃になれば、専門学校や短大、大学に進学できるだけの学力を身につける子どもも少なくありません。

学校にも行けず、生きることに絶望している子どもに、「将来どうするの」「勉強についていけなくなるよ」と説得して何の意味があるでしょう。

そのように追い詰められれば追い詰められるほど、子どもは生きることに希望を失い、「もうすぐ死ぬからほっといて」とキレることになるのです。

むしろ「今はしっかり休めばいいよ。勉強のことは心配しなくていいよ。元気になったらいくらでも取り戻すことはできるから」と伝えてほしいのです。

誤解7 不登校だと、ひきこもりになる

「今のままだと、将来ひきこもりになるよ」と言う人もあります。

しかしすでにお示しした通り、不登校が皆、ひきこもりになるわけでは決してありません。

中学3年で不登校であっても、5年後にはほとんどが学校に行っているか働いていると、文部科学省の委託調査が明らかにしている通りです。

以上のように、世間一般で言われることには、不登校の実情をよく知らずに一面的な知識や思いつきで言われる、根拠のないことが多いのです。

PROFILE

心療内科医。子育てカウンセラー。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。一般社団法人HAT共同代表。児童相談所嘱託医。

明橋 大二

昭和34年大阪府生まれ。京都大学医学部卒業後、国立京都病院内科、名古屋大学医学部付属病院精神科、愛知県立城山病院を経て、真生会富山病院心療内科部長。心療内科医としての勤務やぱれっとでの活動を通して、30年以上不登校の子どもたちを支援している。シリーズ累計500万部を突破した「子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)など著書多数。訳書に『ひといちばい敏感な子』(小社刊)などがある。
※コラムは出版社様の許可をいただき掲載しております。当サイトの情報を転載、複製、改変等は禁止いたします。
※当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています。
※Amazonのアソシエイトとして、てつなぎは適格販売により収入を得ています。

記事の内容がよかったら「イイね!」ボタンを押してね

心療内科医。子育てカウンセラー。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。一般社団法人HAT共同代表。児童相談所嘱託医。
  • このお題をXでシェア
  • このお題をLINEでシェア
  • このお題をfacebookでシェア
  • コメントを見る

コラムに関連している掲示板

  1. 子育て本
  2. 学校
  3. 30年以上不登校の相談を受けてきた心療内科医が伝える――不登校に関する「7つの誤解」

ログインありがとうございます。1ポイントゲット!

ログインありがとうございます。0ポイントゲット!