メンタルドクター伝授! 「期待」より「応援」

AI時代を生き抜く 子育てメソッド。 心理学、脳科学の理論をベースに、パフォーマンスを最適・最大化してきた日本で随一のメンタルドクター伝授!

しつけ/育児

スポーツドクター。メンタルコーチ。産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。
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「親の期待」という檻の中に、わが子を入れていないか?

わが子に「期待」してしまうメカニズム

私たち人間は「期待する生き物」です。

この期待をつくり出しているのも、外ならぬ脳の働きです。

人間の脳の働きのメインは、「認知」という機能です。

人間は脳がとても進化していて、動物以上の思考をしていきます。

脳は思考の中枢であり、いわば「考える作業場」です。

この認知の脳は、次のような考えを常時しています。

外界、すなわち外に向いて、さまざまな情報を仕入れて、それに対応・対策・対処して、動物ではやらない「生命維持を超えた種々の行動」を実行させていきます。

言葉がしゃべれたり、道具を使ったりするのも、すべて人間の認知機能が進化してきたおかげです。

そして注目すべきは、この脳の原動力は「結果」という点です。

人間だけが生きること以上に、結果を残すことを自他ともに脳が求めるのです。

じゃんけんですら勝とうとしませんか?

負けたらガクッてきませんか?

なぜ人間が進化してそうなったのかはわかりませんが、人間とはそういう生命体の頂点にいるのです。

この認知の脳が外に向いて、結果を求める機能、それがすなわち「期待」です。

つまり、人間は「期待の思考」を持つ生き物だと言えます。

この機能が備わっているので、油断をすると、人間は例外なく期待をしてしまうのです。

特に、他者に対して期待します。

期待をさらに分解すると、「勝手×枠組み×結果×見返り」という構造になっています。

勝手に何かの枠組みを当てはめて、それによる結果という見返りを求める思考です。

この人間固有の思考が、子育てにおいても、子どもに対して生じてしまうわけです。

身近な存在ほど、人は期待したくなります。

しかし、期待とは枠組みなので、子どもをその勝手な檻の中に入れることに他なりません。

子どもは、親が生み出す“見えない”檻の中にいるので、プレッシャーを感じたり、親の目ばかりを気にするようになります。

期待どおりにいかないと、人はそこで怒りの感情を生じるようにできています。

勝手な期待と現実のギャップに、腹が立つわけです。

つまり、期待は愛でもなんでもなく、人間関係において両者を不機嫌に導きイキイキのびのび自分らしく生きていくことを妨げている根元なのです。

期待の思考は、子どもにとってはもちろん、親にとっても不必要な考えと言えます。

子どもに必要なのは、「期待」ではなく「○○」

では、「期待を一切しない」のが子どもにとっていいのかと言えば、そうではありません。

子どもにも認知機能があり、期待という概念があるために、いきなりまったく期待しないと伝えてしまうと不安が生じます。

そこで大切なのは、「期待より応援」の思考です。

その思考を子どものために強く意識することです。

子どもは見放されたら、それはそれでつらいし不安です。

そこで見返りや枠組みのないエネルギー、すなわち応援思考で接してあげることが重要なのです。

子どもの最大の応援者が親であり、保護者であり、大人たちです。

「お父さんはいつも期待しているよ!」

と言われて育つ子どもと、

「お父さんはいつも応援しているよ!」

という言葉と思考の中で育つ子どもののびのび度合いはまったく違うでしょう。

つまり、期待は、愛ではなく勝手で、応援こそが愛であり、親子の人間関係における基本と言えます。

応援は、こちらが思いどおりに相手を動かそうとするわけではなく、あくまで子どもが主役です。

「子育ての始まりは、応援の始まり」であり、「子育ては、応援そのものだ」と言い聞かせながら子育てをしていきたいものです。

「期待される」と「応援される」、自分らしさを発揮できるのはどっち?

「応援しているだけで、子育ては大丈夫なのか?」

という皆さんの声が聞こえてきそうですが、心配無用です。

もちろん、さまざまな導きも大切でしょうが、その子育ての根幹にある思考が「期待なのか」「応援なのか」の違いを、ここでは強く申し上げておきます。

まずもって、応援の思考が当たり前のように子育ての中になければ、子どもはイキイキのびのびして成長することはできません。

例えば、自分が部下の立場で、新しいプロジェクトを任されたとき、「期待」されている環境の中にいるのか、「応援」されている環境の中でいるのか、そのどちらの環境のほうが、変なプレッシャーを感じず、のびのびと新しいプロジェクトを進めていきやすいでしょうか?

自分事としてちょっと想像してみたら、わかりやすいかもしれません。

「応援思考」の中で育つ子どもは、きっと幸せを感じて、のびのびと成長し、自分らしい大人になってくれるはずです。

KEYWORD

「期待」より「応援」。

《声かけサンプル》

「来週末、サッカーの試合なんだってね、あんなに頑張ってきたんだから、期待してるからね!」

より

「いつも一生懸命やっているのを知ってるから、応援してるね!」

PROFILE

スポーツドクター。メンタルコーチ。産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。

辻 秀一

北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。人の病気を治すことよりも「本当に生きるとは」を考え、人が自分らしく心豊かに生きること、すなわち“人生の質=クオリティーオブライフ(QOL)”のサポートを志す。その後、スポーツにそのヒントがあると考え、慶大スポーツ医学研究センターを経て、人と社会のQOL向上を目指し株式会社エミネクロスを設立。応用スポーツ心理学をベースに、個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する、自然体な心の状態「Flow」を生みだすための独自理論「辻メソッド」によるメンタルトレーニングを展開。スポーツ・芸術・ビジネス・教育の分野で多方面から支持を得ている。活動の場は多くの企業へ広がり、講演活動や産業医、Chief Health Officer、社外取締役など様々な視点から、企業の健康経営のサポートやフローカンパニー創りにも取り組む。さらに、スポーツの枠を超え、コンサルタントとしても幅広く活動。行政・大学・地域・企業・プロチームなどと連携し、スポーツの文化的価値「元気・感動・仲間・成長」の創出を目指す。

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スポーツドクター。メンタルコーチ。産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。
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