東大野球部式“本物を見せる、体験させる”
30年間の塾での指導、200人の東大生を育成してきた、元東大野球部監督が教える 勉強もスポーツも得意になる育て方とは!?
教育
本物を見せる、体験させる
本章では、勉強や部活を継続する際に大切なやる気(モチベーション)について、お話しします。
子どものやる気を高めたり、高い水準で維持すること。
そのために刺激を与えるというのは、親の大事な仕事です。
なかでも、真っ先に取り入れていただきたいのが、子どもに「本物を見せる・体験させる」ことです。
「有名・優秀な塾に通わせる」「さまざまな習い事をさせる」なども方法のひとつですが、それより前にできることがたくさんあります。
たとえば、近所にプロ演奏家のピアノコンサートがあれば一緒に鑑賞に行く、美術館で名画の展覧会があれば誘って見に行く、野球ならばスタジアムに足を運んでみる、旅行であれば車窓から景色を眺めて会話す...............。
なんでもいいんです。
「生の体験」を親子一緒に体験してください。
それほどお金のかかることでもないでしょう。
人であれ、モノであれ、どの分野でも「本物」には、人の心を動かすパワーがあります。感受性が豊かな子どもならなおのこと、その体験が肥しになります。
「物心もついていない時期なので、何もわからないし、覚えていないのでは・・・」と思われるかもしれません。
しかし、大人が忘れていた一言を、子どもたちのほうがよく覚えている、ということが度々ありませんか?ご自身の幼少期を思い返してみても、おぼろげながらも、ずっと記憶に刻まれた体験や風景があるはずです。
ひと昔前に比べて、いまではなんでもネットで情報が手に入れられます。
YouTubeやNetflixなどから、見ようと思えばいくらだって名画や名シーンを見られる時代です。
しかし、”生”で”実物”を感じることほど、子どもたちを刺激することはありません。
親ができる環境整備のひとつは、「本物を見せる。体験させる」ことです。
早速、地元のイベントカレンダーでも見ながら、「週末は●●を観に行こう!」「次の連休には●●をしよう!」と、予定を立ててみてください。
スマホを置いて、街に出ましょう。
生の体験こそ、やる気に火をつける
外に出て、本物と出会うことや何かを体験することの効能は、俄然、「モチベーションが上がる」からです。
モチベーションとは、言い換えると「やる気」のことです。
テレビなどの映像からも感化されてモチベーションが高まりますが、やはり、本物の絵画を見たり、プロスポーツの現場を体感することにはかないません。
ひょっとすると、いろんな本物に触れる度に、「今日は野球選手に、明日は宇宙飛行士に......」と、興味関心がコロコロと変わってしまうこともあるかもしれません。
ですが、最初はそれでいいんです。
深く興味を持つものは自然と継続していくので、まず親は、子どもたちにとにかくあらゆるものに触れさせる機会を用意して、体験させ、入り口を用意するのが役割となります。
たとえば、男の子なら、戦隊ヒーローショーを見に行くのもいいんじゃないでしょうか。
「あの怪獣みたいなプラモデルが欲しい」と、夢中になって1体つくってみたら、それが発展して、「体重5トンのものなんてどうしたら動くのかな?」「100万°Cのビーム光線って、できるのかな?」と興味が広がればしめたもの。
立派に物理学や化学の世界への入り口となります。
これが同じヒーローショーでも、ヒーローみたいになりたいから、「強くなりたい、空手がしたい」という方向に行く子もいるかもしれません。
その子それぞれの個性や嗜好によって、何に興味を示して、モチベーションにつながるかは親の想像通りにはいきませんが、まさに「文武両道」を活用して、子どもたちの芽を見つけてみてください。
また、生の体験を親が与える際には、見たり、聞いたりできる場所だけでなく、実際に”触れられる環境”を意識してみてください。
先の怪獣に興味を持った子なら、プラモデルづくりのワークショップ、野球好きな子なら野球教室、絵に関心を持った子なら実際に絵筆を持たせる機会をつくってあげましょう。
何かを触ったりして、痛い、熱い、やわらかいといった触覚を刺激する感覚はより、子どもたちの記憶に強く残っていきます。
週末や休みには「本物」を観に連れていき、”触れる”体験をプロデュースしよう
野球指導者。学習塾「Ai西武学院」塾長。
◎―1994年に独立。東京都内に、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」としてAi西武学院を開業。地元の人気塾となっている。ただ、開業当初は、生徒の成績を思うように伸ばせず、一時は廃業寸前にまで追い込まれた。そして、廃業の危機を脱するために教育ソフト『数学ミラクルマスター』を約10年という期間を経て開発。同教材は、現在も全国の学習塾・中学校での採用が広がっている。
◎―2008年には、母校・東大野球部のスカウティング事務局を立ち上げ、高校球児に東大受験を指南。2013年~2019年まで母校東京大学野球部の監督を務める。現在は、文武両道で東大合格を目指す高校生に、自身の学習メソッドを伝える支援活動を行っている。また、全国各地の中学・高校での講演活動も精力的に行う。2023年4月からは母校土佐高校の校長に就任予定。
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