「常識的な勉強法」を再検証!――体を動かすことが勉強を制する!

データに裏付けられた「科学的エビデンス」+自衛隊などの現場で結果が出た「再現性のある学習」+「失敗・間違い」を上手に活用。だから、効率よくグングンと成績が伸びる。

教育

博士(教育学)。元防衛省海上自衛隊数学教官、元代々木ゼミナール数学科講師。
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ただ時間をかける勉強から、戦略的に結果を出す学びへ。本書は、最新の科学的エビデンスに実践的な工夫(+α)を掛け合わせた「最も効率的な学習法」を徹底解説。短期間で目標を達成するための実践的なアプローチを紹介。
佐々木 淳著書の『科学的根拠+αで成果を出す 戦略的勉強法』から一部転載・編集してお届けいたします。

体を動かすことが勉強を制する!

多くの人にとって勉強は、「机に向かうこと」から始まると思います。

もちろん、間違えていません。

でも、効果的に勉強したい場合は、ウォーミングアップが必要です。

効果的な勉強につながるウォーミングアップは「体を動かすこと」です。

人間の脳は、体と密接に連動しています。体が動くと、脳が活性化します。

体を動かすなどのウォーミングアップに「動き」を取り入れた学習を、本書では、「動的学習」と呼びます。

「動的学習」を、ずっと前から自然に実践してきたのが「自衛隊」です。

私が所属していた海上自衛隊の隊員の場合、1日は午前6時の総員起こしから始まりますが、起床後すぐに集合し、海上自衛隊第一体操と呼ばれる体操をします。

その後、腕立て・駆け足をして清掃を行い、これらすべてが終わってから、ようやく朝食をとりに隊員食堂(通称:隊食)に向かいます。

自衛隊員は、実践で動けるように「身体感覚と関連付いた指導」がなされます。まず体を起こし、そのうえで頭を使う。

知識を暗記するだけではなくて、実践で試行錯誤しながら使って、間違って、修正して体に染み込ませます。

そうして、初めて実践で効果を発揮するのです。

運動すると脳が覚醒する

では、なぜ体を動かすことが学習に効果的なのでしょうか。

その答えは、脳科学の研究によって報告されています。

ハーバード大学医学部のジョン・レイティ教授は、運動と脳の関係を多くの研究から整理しています。

運動によって分泌されるBDNF(脳由来神経栄養因子)は、学習効率を上げる物質です。

他にも運動は前頭前野の機能を活性化し、集中力、記憶力などを向上させることが、多くの研究で明らかになっています。

一回の運動直後から脳が覚醒して、数時間にわたって暗記の定着がよくなり、集中力が高まるなど学習成績の向上につながる実験結果も報告されています。

ドイツの研究では、運動後に語彙の学習をしたグループは、運動をしなかったグループよりも約20%も速く単語を覚えることができていました。

さらに運動後の脳波測定では、学習に最適な脳波パターンが確認され、ストレスホルモンであるコルチゾールの値も低下していました。リラックスした状態で学習に取り組めることがわかったのです。

継続的に運動を行った生徒たちは、海馬の容積が増加し、記憶力そのものが向上するなど、長期的な脳の基礎体力の向上にもつながっていました。

最近の研究では、朝の運動習慣が学習効果だけでなく、集中力や記憶力の向上、さらには睡眠の質の改善にもつながることがわかっています。

これらの効果は、運動直後だけでなく、数時間にわたって続くことも確認されています。

ネイパービル203学区で起きた奇跡

この「動的学習」を、学校教育の現場で実践した例があります。

それが、アメリカ・イリノイ州のネイパービル203学区です。

人口15万人ほどの小さな街にあるこの学区は、2001年に発表されたTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)で世界的な注目を集めました。

TIMSSは、世界各国の小学4年生と中学2年生(8年生)を対象にした国際学力調査です。

この調査で、ネイパービル203学区の中学生(8年生)は、

・理科:世界1位

・数学:世界6位

という驚くべき成績を収めました。

当時のアメリカ全体の順位は「理科18位、数学19位」で、平均的な位置にあったなかで、この学区だけが世界のトップに躍り出たのです(参加国38)。

これは、教育水準が高いことで知られるシンガポールや韓国をも上回る結果でした。

しかし、ここで注目すべきは、補習時間や勉強時間を増やしたわけでも、勉強法を大きく変えたわけでもなかったことです。

ネイパービル203学区で取り入れられたのは、たったひとつの習慣でした。

それが「0時限目体育(Zero Hour PhysicalEducation)」です。

子どもたちは体育の時間に移動をしただけで、授業時間が増えたわけでもないのに、学力が大きく伸びたのです。

朝の25分が1日を変える

動的学習で重要なのは、時間の配分です。

一例として、朝の25分を運動15分と掃除に10分充ててみてください。

これだけで、学習効率を高めるウォーミングアップになります。

学習効率が上がるので、トータルの学習時間の短縮につながるのです。

「動的学習」は、特別な設備も費用も必要ありません。

次のような方法で、今日からでも始められます。

明日の朝、目が覚めたらすぐに机に向かうのではなく、まず体を動かす。

ラジオ体操でも、海上自衛隊第一体操でも、軽いストレッチでも構いません。

そして、勉強する場所を少し片付けてから、机に向かう。

このウォーミングアップを取り入れることで、成果につながります。

成果の確認には模擬試験などを活用しましょう。

なお、このような研究の背景を知って学ぶのと知らずに学ぶのでも違います。

理論に納得して「効果がある」と信じて学んだほうが、成果が出やすいことも研究結果として報告されています(自己効力感、期待×価値理論など)。

なお、海上自衛隊第一体操はYouTubeの動画などでも確認できます。

艦上で行うことを想定しているので、場所を取らないです。

PROFILE

博士(教育学)。元防衛省海上自衛隊数学教官、元代々木ゼミナール数学科講師。

佐々木 淳

下関市立大学教養教職機構准教授。1980年、宮城県仙台市生まれ。東京理科大学理学部第一部数学科卒業後、東北大学大学院理学研究科数学専攻博士前期課程・東北大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻博士課程後期修了。保有資格は、数学検定1級、思考力検定(旧:iML国際算数・数学能力検定)1級、G検定(JDLA Deep Learning For GENERAL 2020#2)、統計士、データ解析士。大学在学時から早稲田アカデミーで指導経験を積む。その後、代々木ゼミナール数学科講師を経て海上自衛隊では、数学教官としてパイロット候補生に対する入口教育の充実、発展に大きく尽力した功績が認められ、事務官等(事務官、技官、教官)では異例の3級賞詞を2度受賞する
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博士(教育学)。元防衛省海上自衛隊数学教官、元代々木ゼミナール数学科講師。

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