不安専門カウンセラーが伝える!――子どもの困った行動の「意味」を読み解く
あなたは、何も悪くない。不安は、いのちが安心して生きたいと訴えているサイン。上手に付き合って本来のやさしさを取り戻せる「救いの書」です。1万2000もの“悩み”に向き合ってきた公認心理師が贈る心の守り方。
しつけ/育児
「怒鳴りたくないのに、また怒ってしまった……」と落ち込む親御さんへ。怒りは心が発するSOSであり、反省よりも「修復」が大切です。感情の波に飲まれず心を整え、心にゆとりを取り戻して子どもと向き合うためのヒントが満載。
柳川 由美子さん著書『子育ての不安と孤独をほぐす心理学』から一部転載・編集してお届けいたします。
子どもの困った行動の「意味」を読み解く
子どもがウソをつく時、守りたいものは?
子どもの行動を“問題”として捉えるのをやめて、その裏側にある気持ちを想像してみる。
その視点が一番試されるのが、子どもがウソをついた瞬間です。
親としては、つい「なんでそんなことを言うの!」と怒ってしまいがちですが、そのウソの多くは「怒られたくない」「恥ずかしい思いをしたくない」といった、自分を守りたい気持ちから生まれています。
カナダの発達心理学者タルワーらは、「ウソをつく力は、相手の心を想像し、自分の行動をコントロールする力が育ってきた証拠である」と報告しています。
つまり、ウソがつけるようになるということは、脳が順調に発達してきたということ。
だから、「うちの子、こんなに高度なことができるようになったんだ!」と、まずはその成長を喜んであげましょう。
親の怒りの正体は「期待とのギャップ」と「無力感」
では、なぜ親は子どものウソに強く反応してしまうのでしょうか。
その背景には、「子どもにこうあってほしい」という期待と、現実が違った時に生まれる“ギャップ”があります。
「ちゃんとやっているはず」と信じていたのに、実際はそうでなかった――その瞬間にわき上がるのは、「裏切られた」という怒りと、「どうしたらいいのかわからない」という無力感です。
ある親御さんは、息子が「宿題のプリント、終わった」と言ったのに、机の中から白紙のプリントが出てきた時、頭に血が上りました。
裏切られたような気持ちと、育て方が間違っていたのかもしれないという不安が一気に押し寄せたんです」と話してくれました。
怒りとは、相手を責める感情であると同時に、「どうしていいかわからない」という心の悲鳴でもあります。
カッとなるのは、それだけ真剣に子どもと向き合おうとしているからこそです。
ウソに反応しているようで、「自分の不安」と向き合わされているのですね。
ウソを”しつけの失敗”と自分を責めない
ここで大切なのは、子どものウソを「しつけが失敗したからだ」と短絡的に考えないことです。
子どものウソの多さと親の育て方には、直接的な関係はないとされています。
それよりも、親がウソをどう受け止めるかが、子どもの自信や親子の信頼関係に大きく影響するのです。
あるママさんは、娘が「ピアノを練習した」と言いながら、実際には遊んでいた時、怒鳴る代わりに、「本当は練習したくなかったんだね」と声をかけました。
すると娘はホっとしたように、「今日は疲れてたの」と正直に打ち明けてくれたそうです。
“ウソ”よりも、“ウソの裏にある気持ち”を見抜くこと。
その姿勢こそが、子どもの心を開き、親子の信頼を育てるカギとなります。
まとめ
●ウソをつく力は、他者の心を推測できるようになった脳の発達の証拠。
●親の怒りの正体は、期待とのギャップや「どうしていいかわからない」という無力感。
●怒りは真剣に向き合っているから生じるもの。嘘を「しつけの失敗」と自分を責めなくていい。
●ウソよりも、その裏にある自分を守りたい気持ちを見抜く。
感情に飲まれないための“6秒+90秒マントラ”
子どものウソや行動の理由が頭ではわかっていても、「怒鳴りたくないのに、また怒ってしまった」と感情の波に飲み込まれてしまうことはありますよね。
その背後には、脳と心の自然な反応があります。
人は強い怒りを感じた時、脳の不安センサー(扁桃体)が瞬時に反応し、自動的に「戦うか逃げるか」という防衛モードに切り替わります。
この反応は一瞬で起こるため、冷静に話したくても間に合わないのです。
でも、知っておいてほしいのは、怒りは悪いものではなく、「心がSOSを出している大切なサイン」だということ。
大切なのは、怒りを否定することではなく、そこから修復に向かう視点です。
もし感情的に叱ってしまっても、「ごめんね、ママも疲れていたみたい」と素直に言葉をかければ、子どもも「ぼくもごめん」と返してくれたりして、張りつめた空気もゆるむはずです。
怒った後に必要なのは、自分を責める「反省」よりも、関係の「修復」です。
たった一言で、親子の絆は保つことができるのです。
怒りをやり過ごす「6秒+90秒マントラ」
怒りのピークと言われる“最初の6秒”をやり過ごすだけで、子どもへの対応が大きく変わります。
これは、アンガーマネジメントの基本原則としても広く知られています。
そして、その後の気持ちを鎮めるために有効なのが「90秒マントラ」です。
「マントラ」とは、心を落ち着かせるために繰り返す短い言葉のこと。
怒りがこみ上げた瞬間、まずは深呼吸しながら、心の中で「私は落ち着ける」と唱え、最初の6秒をやり過ごします。
そして、続く90秒間は、感情を鎮めるための“やさしい言葉”を自分に繰り返してあげてください。
「私はベストを尽くしている」「怒りも私の一部だけど、それがすべてじゃない」「この状況だったら怒りたくもなるよね。わかるよ」など、自分がホッとする言葉で構いません。
この“6秒+90秒マントラ”を使うと、感情を無理に抑えつけるのではなく、怒っている自分を認めながら落ち着くことができます。
ほんの1分半、自分の呼吸とやさしい言葉を意識するだけで、心は穏やかさを取り戻していきます。
怒りの奥にある「本当の気持ち」に気づく
心理学では、怒りは自分の本音を守るための“カバーの役割(2次感情)”だと言われています。
多くの場合、怒りの下には「このままで大丈夫?」という不安や、「わかってもらえない」という悲しみ、「信じてもらえない」という寂しさが隠れています。
あるいは、「子どもが将来困るかも」という恐れや、「どうしたらいいかわからない」という無力感かもしれません。
「この怒りの下にある、私の本当の気持ちは何だろう?」と自分に問いかけるだけで、怒りの形は少しずつ変わっていきます。
あるパパさんは、子どもが塾をさぼったと知った時、激しい怒りを覚えました。
しかし、6秒呼吸してマントラを唱えた後にポロリと出てきたのは、「信じていたのに、裏切られたようで寂しかった」という本音でした。
それをそのまま伝えると、子どもも泣きながら「怒られるのが怖くて言えなかった」と打ち明けてくれたそうです。
脳科学の研究では、強い感情反応はおよそ90秒で自然に弱まることが示されています。
怒りを押し殺すのではなく、波を見送りながら、やがて落ち着くのを待つ。
そのプロセスを踏むことで、親子双方の心に安心のリズムが戻ってきます。
まとめ
●強い怒りを感じた時、脳は瞬時に「防衛モード」になるため、最初の6秒をやり過ごす。
●6秒待った後の90秒間でマントラ(やさしい言葉)を唱え、感情の波が鎮まるのを待つ。
●怒りは悪いものではなく、心がSOSを出しているサイン。反省よりも修復を大切にする。
●怒りは2次感情。その奥には、不安や寂しさなど本当の気持ちが隠れている。
公認心理師、臨床心理士の資格を持つ不安専門カウンセラー。
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