3000人以上の発達障害児を診てきた医師が伝える!――親子関係に深い亀裂が入るとき

本書の著者は、20年以上にわたり、のべ3000人の発達障害児の診療に携わってきた医師・星野歩さん。 著者自身もかつては、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)と診断された長男の子育てに悩み、葛藤した一人の母親でした。子育てに「正解」はありませんが、親が笑顔でいられるための「コツ」はあります。 わが子の「ありのまま」を認め、今日からの子育てを少しだけ軽やかな気持ちでスタートするための1冊です。

発達/発育

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「育てにくさは私のせい?」「将来が不安でたまらない」と一人で抱え込んでいませんか?子どもの困りごとには必ず理由があります。親がもっと肩の力を抜き、笑顔で子どもと向き合うための実践的な知恵が満載。
星野 歩さん著書『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD(自閉スペクトラム症)・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』から一部転載・編集してお届けいたします。

親子関係に深い亀裂が入るとき

痛ましいことですが、精神的に追いつめられて感情をコントロールできなくなり、わが子に手を上げてしまう親御さんもいます。

何度言い聞かせても言うことを聞かない場合や、わが子に対して持っている理想像と現実とのギャップに向き合えない場合など、状況はさまざまです。

実は、私自身も長男に手を上げたことがあるので、手を上げたくなる親御さんのお気持ちはよくわかります。

そして、経験者だからこそ痛感しているのですが、手を上げたところで何も解決しません。

親子も心身ともに傷つくだけで、親は自己嫌悪と無力感にさいなまれ続けるのです。

当時(約20年前)の息子はASD傾向があると判明しておらず、とにかく聞き分けの悪い子だと私は認識していました。

そのため、言うことを聞かないときは叩いたり、引きずったりしていました。

今でもはっきりと覚えていることがあります。

帰宅時間になっても公園から帰ろうとしない息子を無理やり引きずって車に乗せ、車内で叩き、それでも暴れて騒ぐ息子を近くの山の麓に置いて、車で走り去ってしまったのです。

いま思えば、わが子置き去りという事件です。

結局、我にかえってすぐに戻り、息子を車に乗せて帰宅しましたが……。

医師という職業柄、自分は安定したメンタルの持ち主で冷静なタイプだと思っていたのですが、そのときは完全に頭に血が上っていました。

ほかにも、お風呂で遊んでいて、いつまでたっても浴槽から出ない息子を叩いたりすることは日常茶飯事でした。

躾のためというよりも、私自身、自分の感情をコントロールできなかったのです。

同居していた義母から、「それ以上やったら、子どもを殺してしまうよ」と指摘されたほどでした。

あの頃は本当に苦しかった……。

夜、冷静になると、かわいい顔をして眠る息子に「叩いてごめんね」と何度も謝ったものです。

当時は、どうにかして言うことを聞かせなければいけない、という強迫観念にとらわれていました。

叩いてでも学校に行かせなければ、宿題をやらせなければ、と思い込んでいたため、日々叩いては大げんか。

すると、息子は学校で暴れ、先生から職場に何度電話がかかってきたことか……。

終わりのない悪循環に、私自身疲れきっていたのです。

体罰をやめなければと思いつつも、小学校3年生くらいまではそんな状況が続きました。

そんな私が手を上げなくなったきっかけは2つあります。

1つは、大きくなってきた息子が叩き返してくるようになったから。

当たり前のことですが、「叩いて育てた子は、叩いて解決しようとする」のです。

親に対してだけでなく、ほかの人も叩くようになってはいけない、と目が覚めました。

もう1つのきっかけは、ASDおよびADHDの傾向があるという診断がついたことです。

ただ聞き分けが悪い、わがままな子というわけではない。

これは叩いたところで解決しない、あくまで脳の構造上の問題なのだと理解することができました。

親が手を上げ続けていると、子どもも成長すると暴力で物事を解決しようとするため、事態はさらに悪化します。

そのうえ、手を上げる親をいつまでも覚えているため、親に対する愛情や信頼よりも、憎しみや不信感がいつまでも消えないことが多いのです。

POINT

体罰は逆効果です。子どもだけではなく親も苦しくなる一方ですから、絶対にやめましょう。

当事者の子どもはどのように考えている?

ところで、そんな親の悪戦苦闘とは裏腹に、当事者であるASDの子どもたちは親や周囲の大人に対してどのように考えているのでしょうか?

親はわが子のためにと思って、日々怒ったり急かしたりしていますが、それが積み重なることで、子どもからは「親=自分のやりたいことをいつも邪魔してくる存在」と捉えるようになります。

親からすれば非常にショックなことですが、これは事実です。

だからこそ、子どもは親がちょっと声をかけてくるだけで、激しく反抗するのです。

まずは、そのような認識を解きほぐす必要があります。

子どもがやろうとしていることを止めるという行動を、できる限り減らしましょう。

そのかわり、子どもがやりたいこと(エンドレスな電車遊びでも、どんぐり集めでも)の時間をなるべく多く確保してあげましょう。

そのためには、子どものこだわりポイントや行動パターンを把握して先回りしていくことが大事です。

これには手間と時間がかかりますが、いずれ「お母さん(お父さん)は、自分の味方なんだ!」という認識まで持っていくことはできるのです。

子どもの便利屋さんに一時的になることで、信頼関係ができ、子どもは困ったときに親に助けを求めたり必要としてくれるようになります。「なぜか邪魔してくるうざったい大人」から脱却しましょう。

POINT

子どもが好きなこと、やりたいことをやる時間を、なるべく多く確保してあげましょう。できるように手助けしてあげましょう。
PROFILE

医師

星野 歩

地方病院の小児科にて、主に発達障害児・者の診断、治療、リハビリテーションに携わり、20年間でのべ3000人以上の診療に従事。プライベートでは2児の母親。長男は小学生の時に知的な遅れのない自閉スペクトラム症と診断されるが、周囲との違いに悩みながらも、現在は成人し、某病院で働く勤務医となる。自身の子育てと、医師として多くの発達障害児やその家族と向き合ってきた経験から、親も子も「ラク」になる子育てであってほしいという想いから本書を執筆した。本書が初の著書となる。
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