3000人以上の発達障害児を診てきた医師が伝える!――親子関係を壊さないために、 気をつけたいこと
本書の著者は、20年以上にわたり、のべ3000人の発達障害児の診療に携わってきた医師・星野歩さん。 著者自身もかつては、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)と診断された長男の子育てに悩み、葛藤した一人の母親でした。子育てに「正解」はありませんが、親が笑顔でいられるための「コツ」はあります。 わが子の「ありのまま」を認め、今日からの子育てを少しだけ軽やかな気持ちでスタートするための1冊です。
発達/発育
「育てにくさは私のせい?」「将来が不安でたまらない」と一人で抱え込んでいませんか?子どもの困りごとには必ず理由があります。親がもっと肩の力を抜き、笑顔で子どもと向き合うための実践的な知恵が満載。
星野 歩さん著書『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD(自閉スペクトラム症)・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』から一部転載・編集してお届けいたします。
親子関係を壊さないために、 気をつけたいこと
学校でのトラブルや不登校、引きこもりなどを心配するあまり、親御さんが無理やり病院に連れてくることで、親子関係がこじれてしまう――仕事柄、そんなケースにたびたび出合います。
本人に何も説明しないまま連れてきたり、説明しても嫌がる子どもを強引に連れてきたりすると、当然ながら親や医師への信頼は地に堕ちてしまい、対話やヒアリングが難しくなります。
その後の診察・療育が進まずに事態が悪化してしまうため、最初が肝心です。
未就学児のような幼いうちは、まだ本人もよくわかっていないので問題ないのですが、不登校や引きこもりなど深刻なトラブルが発生しがちな小学校高学年以降のお子さんには、きちんと説明し、本人の了解を得たうえで相談に行くことが不可欠です。
やはり、早期発見・早期療育がカギ
心配した親御さんが病院に行こうと言っても、すでに学校でいじめられたり人間関係のトラブルで深く傷ついたりしているお子さんとしては、必死の抵抗を試みます。
部屋のドアを固く閉めて一歩も動かない子、病院の前まで来ても車から絶対に降りない子……。
「医者に相談しても、どうせ学校に行けっていうんだろ?」
「学校に行こうとしない私が悪いって責められるんでしょ」
そんな子どもの心の声が聞こえてくるようです。
小学校高学年以降、不登校や引きこもりになった一因に発達障害がかかわっているケースは非常に多いのですが、いきなり「病院に行こう」と言われると、子どもとしては反発・反抗したくなる心情も理解できます。
ですから、序章でもお話ししたように、やはり早期発見・早期療育がカギとなります。
というのも、3歳児健診や幼稚園・保育園に通っている時点(4、5、6歳)で発達相談を受け、ASDの診断が下り、早期に療育をはじめた場合、療育の効果が早く出はじめるからです。
親も対応の仕方に慣れてきて、成功体験が積めます。
その結果、小学校低学年・中学年で環境に適応できるようになって、いったん療育をストップするケースも多くあります。
とはいえ、人間関係や授業内容が複雑化してくる小学校高学年以降でまたトラブルが発生し、再び受診するお子さんもいるのですが、幼い頃に医師やスタッフ(心理士や言語療法士など)との信頼関係ができていると、そのおかげですんなりと戻ってくることができるのです。
つまり、成長してからも生きづらさや悩みごとを相談でき、適切な対応策を専門家と一緒に考えていくことができます。
一方、大きくなるまで一度も診断を受けず、すでに深く傷つき、親や大人への不信感を募らせた状態では、専門家といえどもその閉ざされた心をほぐすことにはかなりの時間がかかります。何ごとも、信頼関係を築くには時間が必要なのです。
やはり、3歳児健診・5歳児健診や、通っている園や病院の先生のアドバイスなどを聞いて、少しでも「サイン」があるようなら、なるべく早く発達相談外来を受診すること。それが、お子さんも親御さんも心おだやかに幸せな毎日を送るカギとなります。
受診するかどうかは、本人にゆだねる
早期診断・早期療育を受けていないからといって、絶望することはありません。
気づいたときに動くことが重要です。
ただし、お子さんに受診をすすめる際、前述のとおり「有無を言わさず連れていくこと」だけは避けましょう。
大切なのは、お子さんに情報を与え、判断をゆだねること。
たとえば、「最近、学校に行こうとすると、おなかが痛くなってお休みが続いているでしょう?相談に乗ってくれて解決策を一緒に考えてくれる先生がいるんだけど、一緒に行ってみるのはどうかな?先生は○○な人で、□□なことを解決するのが上手なんだって」など。
どんなところで、どんな先生・スタッフがいて、どんなことをしてくれるのか。
正直に、できる限り具体的な情報をわが子に提供しましょう。
行く・行かないを本人に決めてもらうことが肝心です。
もちろん、率直に情報を伝えたところで、けんもほろろに「嫌だ」「絶対に行かない!」と断られることも、想定の範囲内です。
拒否されたら、無理に説得する必要はありません。
「わかった。あなたは行かなくていいよ。ただ、お母さん(お父さん)は、先生にいろいろ教えてもらいたいから、相談に行ってみるね」と言えばOKです。
実際に病院で相談することで、御さんはわが子の抱える問題に対する新たな知識や適切な対応を専門家から学ぶことができます。
すると、子どもへの接し方が変わってきますその変化を子どもが敏感に感じ取り、病院へ行ってもいいかな、と態度が軟化することも多くあるのです。
最初から急かしすぎず、その子のペースを待ってあげる。
その間、親ができることを進めておく――そんなスタンスでいるといいでしょう。
最近では、オンライン診療もあり、家にいながら話ができるクリニックもあるので、オンラインで顔を出さなくても、声だけ聞いているのもいいかもしれません。
本人がある程度納得したうえで病院に来ることができたり、オンラインででも話ができれば、私たち専門家はお子さんの話をじっくり聞いて、何がしんどいか、何がつらくて学校に行きたくないのかを探り出します。
「学校に行けない」といっても、子ども一人ひとりによってその理由は異なります。
時間をかけてヒアリングすることで、しんどさの原因を探り出し、解決に近づけることができます。
受診を拒否するのは「思考のクセ」が強すぎるせい
学校への行きづらさから、テレビゲームにはまり1日中ゲームをやって一歩も外に出られない子や、引きこもることで生活リズムが崩れて昼夜逆転している子も多くいます。
この場合、頭ごなしに「ゲームをやめなさい」「早寝早起きしなさい」と言っても反発を招くだけです。
まずは、「視力悪化を防ぐために、1時間に1回5分ずつ休憩を入れよう」とか、「背が高くなりたい?午後10時以降は成長ホルモンが分泌される大切な時間だから、なるべく夜に寝よう」「朝早起きすれば、逆にゲームできる時間が増えるんじゃない?」といった小さな提案からはじめて、ゲーム依存をやわらげたり、夜型から朝型生活への転換をゆるやかに進めていきましょう。
ひたすら話を聞いて、本人のしんどさが少しずつ解消されていくと、医師やスタッフをより信頼してくれるようになるので、治療も進めやすくなります。
とはいえ、残念ながら専門家といえどもすべてのお子さんに対応できるわけではありません。
どんなやり方をしても、「絶対に行かない!」というお子さんもいるのが現実です。
その多くが、特有のこだわりや思い込み(思考のクセ)が強すぎるあまり、受診を極端なほど拒否してしまうのです。
この「思考のクセ」というのは、いったん思い込むとなかなか変えられない、新しい環境に入るのが苦手、というものです。
このような場合も、無理やり連れていくのは避け、スモールステップで徐々に慣らしていくというのが基本的なスタンスとなります。
たとえば、
①母だけ行く
②(車などで)病院の前まで行く
③先生に入口のところまで顔を見せに来てもらう
④オンライン診療で声だけでも聞く
⑤オンラインで顔なじみになる
というステップを踏んでいきます。
POINT
医師
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