スネ夫は『気遣いのプロ』だった!――『ドラえもん』には生きるヒントがいっぱい
「自慢ばかりする」「お世辞が多いお調子者」など、ちょっと嫌みなキャラというイメージが強いスネ夫。しかし実は、相手をほめる気配り力や空気を読むセンスが抜群の世渡り上手だったのです!人生に役立つ、スネ夫流・生きかた術をご紹介します。
人間関係
スネ夫は、ただゴマをすっているわけではありません。相手を観察し、喜ぶポイントを見つけ、気持ちよく動いてもらう方法を知っていた。人をホメることは相手のためだけでなく、自分の人生の得にもなる。
本書では、長年『ドラえもん』の全作品を研究してきた著者が、そんなスネ夫の言葉や行動を徹底分析。「ホメ力」「人の心を読む力」「信頼される話し方」「世渡り力」「夢を実現する考え方」など人生を少しラクに、そしてうまく進めるためのコツを読み解きます。
横山 泰行著書の『ポケット版「スネ夫」という生きかた』から一部転載・編集してお届けいたします。
あなたも『ドラえもん』の登場キャラに意外と似ている!?
2011年、自動車企業のテレビCMで『ドラえもん』の登場人物たちの20年後が実写化されて、話題となりました。ドラえもん役にフランス人俳優のジャン・レノさん、のび太役に俳優の妻夫木聡さん、しずちゃん役に俳優の水川あさみさん、ジャイアン役に元格闘家の小川直也さん、スネ夫役に俳優の山下智久さん。そしてジャイ子役には、元AKB48の前田敦子さん!?!?!
奇抜ともいえるキャスティングをめぐって、熱く議論してしまった・・・・・・という方も多いのではないでしょうか。リアルタイムのファンも、その親や祖父母世代も巻き込んで、お茶の間の全員で盛り上がれるのが、『ドラえもん』というマンガのすごいところです。
今のことばで言うと、『ドラえもん』の登場人物たちは、みんな「キャラが立って」います。「ジャイアンタイプ」「スネ夫タイプ」などと性格を分類したり、「自分は誰に似ているだろう」と考えたことがある方も多いでしょう。
これは、登場人物のキャラクター設定に時代を超えた普遍性があり、作者の優れた人間洞察が凝縮されているからにほかなりません。
『ドラえもん』には生きるヒントがいっぱい
たとえば、のび太を見てみましょう。勉強も運動も苦手で、いつも「イタい」行動ばかりとってしまうのび太は、典型的な「ダメ人間」として描かれているように思えます。
決してうらやましくはない立ち位置のキャラなのに、「まるで自分自身のようだ」と、のび太に感情移入してしまう方は多いのではないでしょうか。
実は、かく言う私こそ、「われこそ、のび太」と彼に共感を覚えてやまない一人です。
それどころか、今までの人生で、彼に何度慰められたかわかりません。
ブルーな気分になったときに「どんなに今の状況がつらくても、のび太よりはマシだろう」と思えば、気分を持ち直すことができる。
彼にとっては失礼な話かもしれませんが(笑)、のび太は私の心のパートナー、かけがえのない存在です。
また、のび太が何気なく発することばに助けられたり、勇気づけられたりもしました。
そこで「のび太は生きる天才だ!」と確信した私は、『「のび太」という生きかた』『「のび太」が教えてくれたこと』という本を出し、おかげさまで大きな反響をいただくことができました。
このように、『ドラえもん』の豊かな世界には、人生をラクに自分らしく生きるヒントが、まだまだたくさん眠っています。
しかし、私のように「ことあるごとに登場人物やセリフを思い出し、処世術として活用している」という人はまだまだ少数派ではないでしょうか。
日本人なら知らない人はいなくて、世界中でも知られた『ドラえもん』ですが、その人生論的な価値についても、もっと注目されてよいのではないでしょうか。
富山大学で、ドラえもんを研究対象とする「ドラえもん学」を提唱していた私としては、少々歯がゆく感じています。
「なぜか好かれる人になれる」コツをスネ夫は教えてくれる
『ドラえもん』の生きかたの指南書としての魅力を、もっと多くの方に知ってもらいたい!そんなモヤモヤした気持ちを抱いていた私が「のび太の次にクローズアップしてみたい」と思ったのは、意外に思われるかもしれませんが、スネ夫でした。
天才的な口のうまさと要領のよさで、学校の先生や大人たちを味方につけ、膨大なウンチクで仲間たちを煙に巻く。
ジャイアンの腰ぎんちゃく、かつ物語の狂言回し的存在のスネ夫は「口八丁手八丁の、キザで嫌みなやつ」と片付けられてしまいがちですが、ところがどっこい。
視点を180度転換させてみると、スネ夫の身の処し方こそ、有益な人生の指南書になるのではないかとひらめいたのです。
お調子者、二枚舌、太鼓もち・・・・・・。ともすれば「マイナス」のイメージが先行してしまうこれらのスネ夫の能力こそ、実は人生をたくましく生き抜くのに欠かせない素養ではないでしょうか。私はそれを「スネ夫力」と名付けたいと思います。
「スネ夫力」は、特別な才能ではありません。誰でもちょっと気をきかせて行動すれば、発揮できるパワーです。身近な例を挙げてみましょう。
★相手の新しい髪型や洋服、持ち物に気付いたら、さりげなくホメて世間話のきっかけにする。
★旅行や帰省をするときには、たとえ金欠状態でも職場への手土産は買って帰る(旅先の失敗談やドジ話も織り交ぜて………)。
★職場の上司のネクタイが新しくなっていたら、「素敵なネクタイですね」と声をかける。
もちろん「おべっかを言ったり、機嫌をとるような行動はイヤ」という方も多いでしょう。
ですが、それは人間関係における潤滑油のようなもので、大切な「地ならし」です。
人間関係においては、”とりあえず誰とでも良好”な広く浅い関係を築き、全方面によい印象を与えておくことは得策といえます。
反対に「スネ夫力」が弱いとどうなるのか?想定されるケースを考えてみました。
★遠慮とコミュニケーション不足から、美容師さんに希望の髪型をうまく伝えきれず、全然気に入らない仕上がりになってしまった。
★営業トークに押されて断りきれず、興味もない新聞を何か月も購読するハメになってしまった。
★体調を崩して急に仕事を休むことになったが、代わりを頼める人が思い浮かばずにまわりに大きな迷惑をかけてしまった。
どうでしょう、想像するだけでもゾッとするシチュエーションばかりです。
また、理由がわからないまま相手に気に入られなかったり、嫌われたりで不遇になるケースも世の中にはあります。
★なぜか担任の先生に嫌われ、学科以外の内申点が非常に低い。
★なぜか大学の教授に嫌われ、ゼミの中で一人だけ就職先を斡旋してもらえない。
★就職試験の役員面接で、なぜか毎回落とされる。
★なぜか上司とソリが合わず、不本意ながら関連会社への出向を命じられてしまった
★なぜか給料の査定が同僚よりも低く、ついにはリストラされてしまった。
こうなるとまったく「笑えない話」です・・・・・・。
ポイントは「なぜか」ということばが並んでいるように、明確な理由がないのに、何となく相手に嫌われてしまうというところです。
悲しいかな、「好き嫌い」は誰の心にもあります。
「平等」が建て前の世の中ですが、「えこひいき」や「特別扱い」という心の動きは、完全に禁止できるものではありません。
無理に相手に取り入ったり、フィーリングを合わせようと努力することはありませんが、どうせなら「なぜか嫌われる」より「なぜか好かれる」人になりたいではありませんか!
そして、なぜか成績がよかったり、なぜか出世したり、なぜかよい仕事や顧客に恵まれて、ラクに快適に生きてゆきたいものです。そのために必要なのが「スネ夫力」なのです。
世界を舞台にした駆け引きでも必須の「スネ夫力」
身近な例を見てきましたが、次は国際的な視点で「スネ夫力」について考えてみましょう。
そもそも外交こそ「駆け引き」の最たるものです。
複雑にからんだ利害を考慮して、強気に出たり、ときには譲ったり、はたまま妥協したり。
それだけではありません。テレビを意識した派手なパフォーマンスが必要だったりもします。
もしかしたら、「交渉力」「外交力」ということばよりも、私の提唱する「スネ夫力」ということばこそ、しっくりくるかもしれませんよ!
北方領土のような困難な問題から、複雑な背景のある中東問題まで、「ドラえも~ん!」と泣きつきたくなるような難題は山積しています。
ですが、ドラえもんのように便利な道具をたくさん持っているネコ型ロボットは、どんなに科学技術が進んでも、いつ誕生するのかは想像がつきません。
もしかしたら遠い未来で開発されている・・・・・・かもしれませんが、そんな夢のようなおとぎ話を夢想するより、政治家に「スネ夫力」を高めて頑張ってもらうほうが、よっぽど現実的な話でしょう。
「スネ夫力」に長けた政治家とは?
「スネ夫力」のある人物として真っ先に思い浮かぶのは、坂本龍馬の「船中八策」を真似て、「維新八策」を掲げていた頃の橋下徹元大阪市長です。
橋下さんは、テレビに出演する際には綿密に下準備し、限られた時間で的確に印象に残るコメントが発信できるよう、原稿を作っては何度もシミュレーションしていたといいます。
これは「スネ夫力」が努力によって養われるというよい証拠です。
選挙活動の時はパフォーマンスの派手さが大きく報じられましたが、橋下さんは人の心をつかむ術を熟知しているように思われます。
あとで分析しますが、人に好かれるというのは「スネ夫力」の大きな要素の1つです。
他にも、故・石原慎太郎元東京都知事など、いろいろと思い浮かびますが、詳しいお話はここでは割愛します。
私のような凡人には想像もつきませんが、彼らの頭と心の中をのぞいてみたい気持ちでいっぱいです。
「好き嫌い」という感情にとらわれず、「スネ夫力」が高そうな政治家がテレビに出てきたら、観察・分析してみると面白いかもしれませんね。
富山大学人間発達科学部名誉教授。 教育学者(教育学博士)。
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