「のび太こそ人生をうまく生きる天才」――のび太の教え
勉強も運動も苦手なのび太。でもしずちゃんと結婚でき、映画版では大活躍。その成功劇の裏にあったのは、のび太が発してきた数々の言葉。その言葉こそ、人生を上手に歩むヒントが満載だったのです!
教育
「勉強も運動も苦手、うちの子大丈夫?」と不安な親御さんへ。失敗だらけののび太が、なぜ周りから愛され幸せをつかめたのか。ドラえもん学の視点から、子どものありのままの良さを肯定し、生きる力を伸ばすヒントを解き明かします。
横山 泰行著書の『ポケット版「のび太」が教えてくれたこと』から一部転載・編集してお届けいたします。
のび太の教え 無理して変わる必要はない
「まったく、お前は相変わらずだなあ」
子どもが小さな失敗をしたときなど、私たちはついこんなセリフを口にしてしまいます。 でも、「相変わらず」とは、そんなにいけないことなのでしょうか? こう言っている親だって、子どもがいきなり立派で正しいことばかりするようになったら、寂しい気持ちになってしまうかも・・・・・・。
相変わらずだけど、その相変わらずゆえにかわいいということが、世の中にはたくさんあると思いませんか?
「いつもいっしょに宿題をやろうといって、あたしの答えをうつすだけでしょ。たまには自分でやらなくちゃだめ!」
のび太は、しずちゃんからキッパリと断られてしまいました。
将来しずちゃんと結婚することは知っているけれど、これで大丈夫なのか心配になったのび太は、ドラえもんに相談を持ちかけます。
「どうもいまのところ、そんなムードじゃないんだ」
すると、ドラえもんまでが言い出します。
「あんないい子がなんだってよりによってのび太くんなんかと。もう少しましな男がいっぱいいるのに・・・・・・」
いったい結婚間際にはどんな関係になっているのか。そのへんの事情を確かめるために、のび太はドラえもんと「タイムテレビ」を見てみることにしました。14年後の10月25日に婚約するので、その少し前をチェックしたのです。
すると、のび太青年は鼻水をズーと垂らしながら、しずちゃんに問い詰められています。
「行くの?行かないの?」
どうやら、冬山登山に行くかどうかでもめている様子。
「行きたいんだけどね・・・・・・。坂道によわくてねえ。平らな山ならいいんだけど・・・・・・」 のび太青年は、相変わらずのんびりとしている姿をタイムテレビにさらしていました。
『てんとう虫コミックス ドラえもん 第20巻』小学館 第16話目「雪山のロマンス」
あなたがしずちゃんなら、のび太に対してちょっとイラッとすることもあるかもしれません。でも、そのとぼけた言い分を、結局、許してしまうのでは? というのは、だらしないホンネを、こんな面白い言葉で表現できる人間はなかなかいませんから。
自分が弱いせいか、ほかの人の弱さも否定しないのび太。これこそ、のび太の持ち味である優しさです。勉強や仕事に急に熱心になるのもいいのかもしれませんが、その結果、負けん気が強くなりすぎて優しさがなくなり、周りに強くあたってしまう性格に変わってしまうかもしれません。
これは、果たしてよいと言えるのでしょうか? せっかく今持ち合わせている長所を台無しにしないためにも、無理して自分を変える必要はないと思うのです。
また、競争社会にこそ、のび太のような周囲を和ます人が必要なのでは? 会社でも学校でも、人間関係に悩む人はとても多くなっています。嫌な人がいるだけで登校拒否をしたり、退職してしまうというケースもあるでしょう。なので、今の状態で人間関係が悪くなっていないのであれば、あなたはそのままでいいということにもなります。
のび太の教え 子どもにだってプライバシーはある!
のび太が学校から帰ると、玄関の中から「ハッ」とするような殺気を感じました。 カギ穴からのぞいてみると、ママがおっかない顔をして、腕を組んでのび太の帰りを待っています。
玄関をパスしてこっそり窓から部屋に入ると、ドラえもんが待っていました。
「ママがおこってるの、よくわかったな」
そして、ママが怒っている理由を教えてくれました。
のび太が学校に行っている間に、ママがのび太の部屋を片付けに来て、引き出しに隠してあった0点の答案を発見したというのです。
それを聞いたのび太は猛烈に腹を立てて、
「かってに、人のへやをかきまわして!!!! いつもこうなんだ!!!いくら親でも、ゆるせない!!!」
怒るだけ怒ったのび太は、ドラえもんに相談します。
「このへやを、ママの魔の手からまもる道具は、ないものかしら」
最初は、「ないこともないが、それより・・・・・・」と正論をぶつけようとしていたドラえもんですが、のび太がにらみつけるので、ついに、自室を侵入者から守る「ルームガードセット」を取り出しました。
『てんとう虫コミックスドラえもんプラス 第1巻』小学館 第2話目「ルームガードセット」
のび太が甘いことを言うといつもちゃんと諭すドラえもんが、今回はその剣幕に負けて、わりとすんなりのび太の望みをかなえようとしています。
ドラえもんから見ても、ママのやり方に抗議したくなるのび太の気持ちは、理解できるものだったのかもしれません。
親なら子どもに対して何をやってもいいというものでもありません。自分の内側に土足で踏み込まれれば、子どもだって傷つきます。
のび太は、0点の答案用紙を見られたことが悔しいのではなく、自分の引き出しを勝手に開けられたことが我慢ならなかったのでしょう。
大家族で暮らすのが当たり前だった昔と違って、今は子ども一人ひとりに個室が与えられるのはめずらしくありません。
そこで、子ども部屋にカギをつけるべきかどうかが、議論されることもあるといいます。
親は子どものことが心配だから、なんでも知っておきたいと考えます。だからカギなどとんでもないという気持ちになるでしょう。
子どもにしてみれば、親だからという理由で自分のプライバシーを侵害されるのはいやだから、カギがほしいと思うのでしょう。
つまり、カギの議論がなされるとき、そこには「親がずかずか入り込む」ということが前提になっているように思います。
「カギなんかかけなくたって、うちの親なら、何かあったらまずぼくに一言声をかけてくれるはず」
もし子どもがそう信じていられたら、ちょっと事態は変わってきますよね。 もちろん、相手は子どもです。何かにつけフォローが必要だし、大人の目で生活ぶりをチェックしていなくては、間違った方向に行くこともあるでしょう。
富山大学人間発達科学部名誉教授。 教育学者(教育学博士)。
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