「のび太こそ人生をうまく生きる天才」――私もあなたも、実はのび太!?!?
勉強も運動も苦手なのび太。でもしずちゃんと結婚でき、映画版では大活躍。その成功劇の裏にあったのは、のび太が発してきた数々の言葉。その言葉こそ、人生を上手に歩むヒントが満載だったのです!
教育
「勉強も運動も苦手、うちの子大丈夫?」と不安な親御さんへ。失敗だらけののび太が、なぜ周りから愛され幸せをつかめたのか。ドラえもん学の視点から、子どものありのままの良さを肯定し、生きる力を伸ばすヒントを解き明かします。
横山 泰行著書の『ポケット版「のび太」が教えてくれたこと』から一部転載・編集してお届けいたします。
私もあなたも、実はのび太!?!?
ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫、しずか・・・・・・、『ドラえもん』マンガには、多くの個性ある魅力的なキャラクターが登場します。
『ドラえもん』は、日本という国が高度経済成長期を迎えて活気に満ちていた1970年に誕生したマンガであり、当時の日本の盛り上がりが作品からも感じ取れます。
そのテイストを残しながら四半世紀にわたって続いており、多くの人たちに愛されてきました。
登場人物たちは、こうした時代背景にどっぷり浸りながらも、活き活きと描かれています。
ただ私がとくに印象的だと思ったのは、ドラえもんに登場するキャラクターたちが、時代も場所も問わず、どこにでもいそうな感じがすることです。
あなたは、登場人物の中で、自分が誰に一番近いと感じていますか?
おそらく「のび太」ではないでしょうか。
性別も年代も関係なく、多くの日本人の中に色濃くのび太が存在しているのではないかと、私は思うのです。
ドラえもんの全作品を集めて研究
私は、かつて富山大学で教授という職に就いていました。
本来の専門は生涯スポーツ論という分野でしたが、ドラえもんを研究する「ドラえもん学」なる学問を提唱して、ドラえもん作品の研究もしていました。
教授職を引退した今も、「ドラえもん学」の研究はしっかりと続けています。
私がなぜ『ドラえもん』を研究しようと思ったのかといいますと、子どもだけでなく、大人にも夢や冒険心を与え続けてきたこの作品の魅力にとりつかれたからです。
小学校の社会科の教科書や大学受験の入試問題に『ドラえもん』が使われたこともあるので、私以外にも学問の世界で『ドラえもん』を題材にしたり、愛している方はいらっしゃるようです。
私の場合は、2004年に『ドラえもん』の全1345話を集めた「ドラえもん文庫」を、故・藤子・F・不二雄先生の出身地・富山県高岡市にある高岡市立中央図書館などに開設しました。
作品を集めるのにインターネットやテレビ番組を活用し、おかげさまでようやく全冊がそろいました。
また、当時『ドラえもん学コロキアム』なるホームページも開設し(現在は閉鎖)、私なりの『ドラえもん』作品の分析なども発表しておりました。
集まった全作品に対して、登場人物や表紙の分析だけでなく、全作品に登場するのび太の5万7531にもなるコマや、全部で4万1839もあるのび太のセリフに目を通して、傾向や特徴なども探りました。
のび太こそ、人生をうまく生きる天才
『ドラえもん』の全作品は100回以上熟読し、登場人物それぞれの言動を詳細に分析しデータベース化してきました。
ただ、研究を進めれば進めるほど、のび太という人物の奥深さのとりこになったのです。
のび太は、日常生活において誰もが体験する喜び・楽しさ・幸せといったプラスの感情に加え、怒り・悲しみ・妬み・はがゆさ・悔しさといったマイナスの感情を、飾り気もなくストレートな言葉で表現しています。
つまり、のび太こそ最も人間らしく生きているとも思えるのです。
『ドラえもん』の読者は、若い頃も大人になってからものび太のこうした言動に自分を投影し、思わず手を叩いたり愛おしくなったり、意気地のなさにがっかりしたり、あまりのもどかしさにイライラしたりもしているのではないでしょうか。
のび太は、最高の相棒であるドラえもんの力を借りながら、作品を通して確実に成長を続けていきます。
作品ごとのオチの部分では、いつもの冴えない怠け者ののび太に戻っていることが多くなっています。
でも、作品テーマ中には、キラリとした成長の様子をいくつも見つけることができるのです。
『のび太の結婚前夜』という作品では、不安がるしずちゃん(※)に対して、『ドラえもん』に登場するキャラクターの中でもとくに聡明なしずちゃんのパパから、「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それがいちばん人間にとって大事なことだからね。彼なら、まちがいなくきみをしあわせにしてくれるとぼくは信じているよ」と評価されるまでになっています。
のび太は、ダメ人間のようでいて、実は人生を上手く生きる天才だと思うのです。
のび太のことばからは学べる教えがいっぱい!
のび太こそ生きる天才だと思った私は、22年前に著書『「のび太」という生きかた』を出しました。
のび太の行動を通じて、楽しく生きる方法を、私なりに提案するという内容です。
「頑張らなくても、無理をしなくても、ダメだと思っていても大丈夫!どんな人でも夢はかないますよ」ということをお伝えしたのですが、おかげさまで好評を博しまして、全国から多くの感想文をいただきました。
この場を借りて、お礼を申し上げます。せっかくなので、感想文をいくつかご紹介したいと思います。
のび太の人生がまるで自分と同じだと感じた。全部ではないが勉強は苦手な点、特定な事に関しては人より優れている点が似ていると思った。のび太が自分の夢をあきらめないという気持ちは大変すばらしい。この本を読んでいる最中、そして読み終えた後、夢を持ち続けるという事を忘れないのび太の生き方に感動しました。自分ももう一度夢を持ち続けたいと思います。(25歳男性)
現在、小学生と中学生の子どもを育てています。人として何が一番大切なのかを考えながら、育児にはげんでおります。確かに勉強ができるに越したことはないのですが、のび太くんの優しさが、周りの人たちのよい部分をひき出しているのだと、この本でよくわかりました。あと、のび太くんの説得力!!その二つが人にとって一番必要では?と思います。(44歳女性)
「誰にでもドラえもんがついている」という文を読んだ時、とてもぐっときました。ずっとドラえもんがほしいと思っていましたが、心の中にはずっとドラえもんがいたんだなー!!なんか心がとてもほんわりしてきました。温かい気持ちに、この本はしてくれました。人間の努力は絶対にうらぎられないものなんだと思ったのです。(19歳男性)
みなさん、私がお伝えしたかったことを感じ取っていただき、うれしい気持ちでいっぱいです!
そう思った私は、『「のび太」という生きかた』の続編を作ろうと思いました。
その続編にあたるのが、本書『「のび太」が教えてくれたこと』です。
なお、『「のび太」という生きかた』は2014年に『ポケット版「のび太」という生きかた』というタイトルで、新たな形で出版しています。
本書も、2011年に発売した『「のび太」が教えてくれたこと』を今回『ポケット版「のび太」が教えてくれたこと』というタイトルに変更し、読みやすい新書サイズに生まれ変わりました。
前作『「のび太」という生きかた』では、作品ごとにストーリーの一部を追いながら、のび太流の生きかたを解説しました。
そして続編となる本書では、のび太のことば(セリフ)を入り口に、現代を生きる私たちが、のび太からどんな教えを得ることができるのかについて考察します。
のび太のことばに注目することで、前作ではお伝えできなかった、のび太のさらなる魅力が浮き彫りになることでしょう。
また、前作では生きかたの解説が中心でしたが、今回はのび太のことばから何が学べるのかまでお伝えしたかったのです。
私なりの解釈ですから、藤子先生が伝えたかったこととは違っているかもしれません。
しかし、少なくとも私は、人生をラクに自分らしく生きるヒントを、のび太からたくさん学んできました。
ただ、のび太のことばからは、私たちが生きていくための直接的な解決策は教えていないかもしれません。
しかし、生きる上で、どんな問題に気づくべきかは教えてくれます。
これは、とても大事なこと。
というのは、問題に気づくことで、仕事、学校生活、家族との暮らしのすべてがよくなりはじめるからです。
そうした教えを、読者のみなさんと楽しみながら共有していきたいと思っています。
※登場人物「源静香」の作中での呼び方について、アニメなどでは「しずかちゃん」とすることが多いですが、本書ではマンガでの表記である「しずちゃん」を使用します。
富山大学人間発達科学部名誉教授。 教育学者(教育学博士)。
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