「働き方改革」よりも「休み方改革」――子どもですら休めなくなっている日本

気鋭の実業家で注目のインフルエンサーである著者が、世界100ヶ国を訪れて見えた「休みの本質」について、自身の体験やヨーロッパの事例などをもとに解説します。

生活/暮らし

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「休むことに罪悪感がある」「何もしない時間が怖い」……そう感じる人にこそ読んでほしい言葉が詰まっています。仕事や役割に追われる日々から一歩立ち止まり、人生の満足度を高める「思い出づくり」の大切さを教えてくれる一冊です。
谷口 たかひさ著書の『休む勇気 人生で一番大事な仕事は「思い出づくり」』から一部転載・編集してお届けいたします。

子どもの「放課後の自由」がなくなっている

特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」が2023年に「小学生」を対象に実施した調査では、次の結果が出ています。

・10人中7人の子どもは「放課後に友達と遊ぶのは週1回以下」(70・9パーセント)

・4人中3人の子どもは「放課後にもっと友達と遊びたい」と回答(76・2パーセント)

毎日のように友だちと遊ぶ小学生時代を過ごしていた僕には衝撃の結果でした。

ではなぜ、友だちと遊びたいにもかかわらず、思うように遊べない子が過半なのでしょうか?

その理由の1、2位は次のものでした。

1位 「友達と予定が合わないから」(48・7パーセント)

2位 「自分が塾や習い事で忙しいから」(35・2パーセント)

繰り返しになりますが、高校生でも中学生でもなく、「小学生」を対象に行なわれた調査です。

「友達と予定が合わないから」思うように遊べないなんて、まるで自分は土日休みだけど友だちは平日休みの勤め人や、友だちが結婚して子どもができ、子育てに追われているような人が言いそうなことですが、小学生の時からもうそうなってしまっているのです。

「心」を「亡くす」と書いて「忙しい」と読みます。子どもの頃に、忙しいなんていう言葉を、少なくとも僕は使った覚えがありません。

子どもがそれを望んでいるならまだしも、調査結果を見るとそうではありません。学校などでせっかくできた友だちと、放課後は自由に遊ぶことに憧れながら、それが叶わない子どもたちが大半なのだと考えると、悲しい気持ちになってしまいます。

ヨーロッパでは、「余暇・自由時間」について定期的・体系的に計測する統計制度があります。そして満足度も(国ごとの統計方法によってバラつきはあるものの)比較的高めの数値が出ています。

世界的に低い日本の子どもの自己肯定感・幸福度

2025年にUNICEFが発表した、先進国を中心とする世界30ヶ国の子どもを対象に行なわれた幸福度調査では、日本の子どもは精神的幸福において30位という結果でした。

それだけが理由ではないでしょうが、「友だちと遊びたいのに遊べない」という人生において、精神的な幸福を感じることは難しいのではないでしょうか。

また、内閣府が実施した日本の子どもの自己肯定感調査では、日本の子どもは調査対象国の中で最も低いという結果が出ています。

子どもの幸福度や自己肯定感を犠牲にしてまで、今の日本社会は子どもに何を手に入れてもらおうとしているのでしょうか?

子どもの幸せを願わない親なんて、めったにいないと思います。

ほとんどの場合、子どものことを愛し、子どものことを想い、子どもにとって良かれと思っていることをしているのだと思います。

それに実際、学歴社会、競争社会という言葉があるように、学校の勉強をしなくてよいなどと簡単には割り切れないこともたくさんあるとは思います。

だけど同時に、今挙げたような結果が出ているということもふまえ、思考停止ではなく、子どもにとって今本当に必要なものは何か?を考える時に来ていると思います。

「世界一貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が2025年、88歳でこの世を去りました。

その2年前にあたる2023年に、ウルグアイで対談させてもらう幸運に恵みました。

彼が遺した、「日本の子どもたちへ」と題した言葉を紹介させてください。

「日本にいる子どもたちよ。君たちは今、人生で最も幸せな時間にいる。経済的に価値のある人材となるための勉強ばかりして、早く大人になろうと急がないで。遊んで、遊んで、子どもでいる幸せを味わっておくれ」

それは大人になった僕たちが今、いくら望んでももう一生手に入らないものだからこそ、子どもには後悔してほしくないのです。

宿題を廃止する国が増えている

フィンランドという北欧の国は、「宿題を廃止した国」として有名です。

実際にはゼロとまではいかないようですが、現地でお話を聞いても、「ほぼない(極めて少ない)」ということは事実なようです。

その理由は、放課後に友だちと遊んだり、家族と過ごしたり、自分の趣味に没頭する時間を持つということを重視しているからだといいます。

「学校は幸せになる方法を見つけるところ」という、フィンランドの先生の言葉がとても印象的で心に残っています。

意外ですが、中国も子どもの負担を減らす制度をとっていることで知られています。

ヨーロッパのポーランドでも、小学校の宿題が廃止されました。

学年によっては宿題が出ますが、やるかやらないかは子どもの自由で、評価の対象にしてはいけないことになっています。

また、少し話は変わりますが、デンマークでは「テスト」と「通知表」を8年生(日本でいう中学2年生)になるまでは禁止しているそうです。これは「比較」が人の心に与える悪影響を考慮したものだそうです。

北欧の校長が日本の学校を視察に来た時のエピソードがとても印象的でした。北欧の校長は、日本の体育の授業で子どもに競争させているのを見て、激怒したといいます。

体育というものは本来、子どもに運動を好きになってもらうためにあるものだといいます。健康で幸福な人生を送るためには、運動は必要不可欠なものです。

だから子どものうちに運動を好きになってもらい、大人になっても自主的に運動する習慣を身につけることが大事なのに、競争なんてさせてしまったら、トップレベルの層以外は運動を嫌いになってしまう、と。

日本では、塾に通っている子どもが多いことを先に挙げました。それプラス宿題もあるとなると、自由に使える人生の時間が本当に少ない日本の子ども像、家族像が浮かび上がってきます。

また、運動のみならず、学業においても、もっと過酷な競争や比較にさらされていることでしょう。その中でも、自己肯定感や幸福度はキズついているのかもしれません。

「競争させないと競争に強くならない」という反論もよくいただきます。

それは真っ当な意見のように聞こえるかも知れませんが、本当にそうでしょうか?

国際経営開発研究所(IMD)が発表している「世界競争力ランキング」というものがあります。日本は世界64ヶ国中35位という結果でした(2023年度)。

では1位はどこの国だったかというと、あのテストや通知表を禁止にした国、デンマークです。

もちろんそれがランキングの差を生んだ唯一の要素ではないでしょうが、日本にも「好きこそものの上手なれ」という諺もあります。

どちらが正しいという結論ありきの話をしたいのではありません。

ただ一歩立ち止まって、あらためて考えてみてほしいのです。

あなたの子どもとあなた自身が今、心の底から笑い合い、胸を張って幸せだと言えるかどうかを。

もしそうでないなら、何かを変える時に来ているのかも知れません。

替えがきくあなた、替えがきかないあなた

責任感の強いあなたは、仕事などにおいて、「自分がいないと――」と、ついつい自己犠牲を払いがちだと思います。

そうして、自分の人生のかけがえのない時間を、もっと他のことに使えたかもしれない時間を、仕事につぎ込んでしまいます。

気をつけたいのは、そうやって自己犠牲を払い、自分の大切なものをつぎ込めばつぎ込むほど、「自分がいないと――」という気持ちは強くなっていくということです。

人は、それまでに自分が費やした時間や労力を惜しみ、続けることでさらに失うものがあるとわかっていても、それをやめることができません。

この心理現象を、「コンコルド効果」といいます。

僕も昔そうだったので、気持ちは痛いほどわかりますが、残念ながら、職業上の私たちは、基本的に替えがききます。

替えがきくからこそ、名前ではなく、職業や役職など、いわゆる肩書で呼ばれたりするのです。

伝説とまでいわれる創業者、スティーブ・ジョブズがいなくても、Appleは過去最高益を更新し続けています。あの島田紳助やダウンタウンの松ちゃんがいなくなっても、テレビでのお笑いはまわっています。

その仕事からいったん離れると、驚くほどその職場を冷たく感じたり、親友だと思っていた人が、ただの同僚だったと気がつくことも少なくないといいます。

悲観的な話をしたいわけではありません。

「替えがきかない役割を大事にしてほしい」ということを伝えたいのです。

替えがきくあなたもいれば、替えがきかないあなたもいるのです。

自分の親にとっての、子どもであるあなた。だから親は、あなたが社会的に成功するかどうかよりも、四六時中あなたの身体の心配をしています。

あなたの成功をかわりに引き受けてくれる人はいくらでもいるけれど、あなたの病をかわりに引き受けてくれる人はいません。親はそれをわかっています。

また、かけがえのないパートナーにとってのあなたも、替えがきかないと思います。血が繋がっているわけではなくとも、替えがきかない人がいることは、人を本気で愛したことがある人ならわかってくれると思います。

そして何より、子どもにとっての親であるあなた。この章では、子どもの時間についてや、子どもが幸せであるかについてお話ししてきました。

どうか、優先順位を間違えないでください。

PROFILE
1988年大阪生まれ。10代の時に起業し、イギリスへ留学。卒業後、アフリカのギニアで学校設立に携わり、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験した後、社会課題解決を志してドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに、気候危機に関する講演を開始。その中で、最大の脅威は「他の誰かが何とかするだろう」という思い込みであることを感じ、自己肯定感も講演内容に加える。現在も講演を続けており、累計で22ヶ国、2400回余に。趣味は旅と勉強で、訪れた国は100ケ国。保有資格は国際資格や国家資格を含め30種以上
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