教育現場のプロが伝える!――「誰かと比較」はしないこと
今日の学校どうだった?って聞くのは、実はプレッシャー!本書では、親の言葉が子どもの心にどのような影響を与えるのかをわかりやすく解説するとともに、 子どもの気持ちを支える具体的な声かけや会話の工夫を豊富に紹介していきます。子がどんどん話したくなる声がけ法。サクッと学ぶ!大人の語彙力&伝え方シリーズ。
しつけ/育児
我慢や根性ではなく、安心感と自己肯定感の積み重ねが子どもの心を育みます。その土台となるのは家庭での温かい“ひと言”です。本書は、親の言葉が心に与える影響を解説し、気持ちを支える具体的な声かけを豊富に紹介します。
キャリー・A・フロー幸島 守著書『子どものストレスと不安が軽くなる言語化 「べつに」を「あのね」に変える親のひと言』から一部転載・編集してお届けいたします。
子どものマイナス意識をゼロにリセットできる超簡単な親のひと言
子どもに向けるまなざしで「誰かと比較」はしないこと
この章の最初にお伝えしたいのは、子どもの発達は、人それぞれであるということです。
体の大きさも違えば、心の育ち方に「平均」はありません。ですから、「その子の今」を、ママやパパが心に余白・余裕を持って見守ってください。
しっかり見つめ、時間をかけて見つめ続けた上で、「少し、発達がゆっくりなのかな」「できないが多いのかな」と感じたり、不安になったりするようであれば、躊躇せずに学校の先生に相談してください。
最近では「発達障害」という言葉をよく耳にするようになりました。
けれども、正しく理解されていない部分も多く、不確かな情報や個別の事例だけをインターネットで見てしまうと、過度に不安に思ってしまうこともあります。
学校の先生は、日々、情報や知識も更新していますし、実際の支援に携わった経験を持つ人もいます。スクールカウンセラーとの連携、適切な相談窓口への案内も心得ています。
頼りにしてください。大丈夫ですよ。
大切なのは、親の余裕と冷静なまなざしです。
僕は、生徒指導などの立場上、よく相談される先生でしたから、たくさんの親御さんから「先生、どうしましょう?」「先生、この子は大丈夫でしょうか?」「先生、どうにかしてあげてください」という声を聴いてきました。
みなさんに共通しているのは「不安」です。
でも、その不安は「他の子と比べた不安」です。
ある日、「あれ?この子、あの子のできることがまだできないな」と思った時から、子どもの日々の成長を楽しむ余裕が消えてしまい、何かを目安に、誰かを基準に、子どもの“今”を採点してしまうのです。
すると、「できる」はさらに嬉しく感じる一方で、「できない」は些細なことでも不安になってしまいます。そうなると、子どもに向けるまなざしも輝きを失ってしまうでしょう。
子どものマイナス意識をリセットできる言葉
そうした「不安」を抱えたママやパパに、僕はとっておきの言葉を贈ります。
「できている、できていないと誰かと比べないで、この子にとっての“得意、不得意”だと思って見てあげてください」
すると、多くの親たちが、ハッと気づいたようにこう言います。
「そうですよね!親の私だって、片付けが苦手だったり、道順を間違えたりはしょっちゅうです。それを『できてないよ』って言われたら、『え!』って思います」
そうなんです。誰だって、やっていることを「できていない」とは言われたくはありません。
子どもたちだって同じです。そして、この“得意、不得意”は、子どもでもちゃんとイメージでき、理解しやすい言葉なのです。
“得意”と“不得意”の意味は反対ではありません。
“不得意”は「まだ得意じゃない」だけです。
「努力をすれば、得意になるかもしれない」という可能性が含まれています。
ですから、子どもでも「私はまだ、縄跳びの二重跳びは得意じゃないから、得意になれるよう、練習します」と未来に向けた宣言が可能です。
今、現在、「二重跳びの経験がゼロ」でも「できない」ではなく「まだ得意じゃない」と言えるのです。
でも、「できない」は、その未来に向けた一歩目を難しくさせます。
「苦手」も同じです。こうした言葉は、「やらない」につながりやすい。
なぜなら、スタートラインにも立てていない、もっとマイナスからのイメージになるからです。
すでに刷り込まれてしまった「できない」や「苦手」を、まずは「不得意」へと転じさせるコツが「ほめる」です。
今、「キャリー先生、ほめることができたら苦労していません。
いくら探しても、見つかりません」と、思いましたよね?
ここです。ここに大切な気づきがあります。
「ほめる」ために、何か「できていること」や「良いこと」を探そうとしていたのです。
「ええ!?!?!でも、ないものをあるとは言えません」
ごもっともです。何もない壁に向かって何かをほめろと言われたら、それは、困ります。思わず、壁に手をついてため息です。グチも出るでしょう。
「なに、もう。かったい、壁だなあ」
そこです!それを聞いたら、壁も喜びますよ。
「そうなんです!かったい、壁なんです。気落ちしたママさんを、肩を落としたパパさんを、支えることができるぐらい、かったい壁です。壁のこと、よくご存じですね!壁冥利につきます!」
それくらい、ありのままを見てくれていることは嬉しいし、「見たまま」を「言葉」にすれば、それは最高のほめ言葉になるのです。
もう一度、子どもを見つめてください。
もう、必死に「ないもの」を探さなくていいんです。
見たまま、そのままをほめてあげましょう。
何が見えますか?そう、あなたの子どもがそこにはいます。
名前を「しげるくん」としましょう。
「しげるくん!宇宙一だね!宇宙一のしげるくんだね!」
もう、今日一日ずっと「宇宙一のしげるくん」で呼び続けてください。何かが変わり始めます。
「しげるくん、なにやってるの?急いで!」――ウンともスンとも反応なしだったのが、こう変わります。
「宇宙一のしげるくん!宇宙一のしげるくんはいますか?宇宙一のしげるくんは準備できましたかー!」――バタバタバタといつになく機敏な動きで現れ、「なに?なに?」って顔をしていることでしょう。
ほめることに理由はいらないし、ほめられることにも理由はいりません。
言ったほうも、言われたほうも、嬉しいに決まっているのですから、どんどん、ほめちゃいましょう!
「ほめぐせ」のついた親は、「ほめの天才」です。
朝、「おはよう」が言えたら「おはようの挨拶が素敵なしげるくん」、妹がちらかしたオモチャを片付けてくれたら「片付けの天才のしげるくん」「妹思いのしげるくん」と、ほめ言葉があふれてきます。
「宇宙一のしげるくん」の「○○のしげるくん」の「○○」に「言ったら嬉しい言葉」「言われたら嬉しい言葉」を入れればいいのです。
子どもの名前は、毎日、数え切れないくらい口にします。
「ほめるところがない」と言っている親ほど、名前を呼んでいます。
でもそのほとんどが、注意、命令、否定になっていませんか?
親に名前を呼ばれる。
子どもにとって、こんな嬉しいことはありません。
自分の存在を気にかけ、見続け、言葉にしてくれているのですから。
本当は、注意や小言でも、愛情からのことだと、子どもはわかっています。
だからこそ、そのチャンスを、子どもがマイナスゼロのスタートラインに立てるエールにしてあげてください。
「宇宙一のしげるくん」がスタートラインにつきました。
不得意なことはたくさんあります。
でも、ママやパパがエールを贈ってくれています。
何だってできそうな気がしてくるはずです。それを信じてあげましょう。
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